第26話:王都の再襲撃
王都の門が見えてきたとき、リディアは足を止めた。
かつて「呪われた契約者」として追放された場所。
その記憶は、今も胸の奥に残っている。
「戻るのは、これが初めてね……」
リディアの声は静かだった。
ヴァルグは隣で炎を揺らしながら言う。
「過去は過去だ。今は、お前が世界を救っている」
カスミは転移術式を解除しながら頷く。
「王都があなたを必要としている。それだけで十分です」
門をくぐると、街は混乱の只中だった。
結界は破られ、魔物が市街地に侵入している。
人々は避難所へ逃げ込み、兵士たちは必死に応戦していた。
「……間に合った」
リディアは〈太陽〉のカードを取り出し、空へ掲げる。
「《浄光術式・ソレリス》!」
光が街を包み、魔物の影が裂ける。
ヴァルグが炎の爪で突撃し、カスミが結界を再展開する。
三人の連携は、かつてとは比べものにならないほど強固だった。
枢機院の高官が駆け寄り、地に膝をつく。
「契約者殿……どうか、王都をお救いください」
リディアは一瞬だけ目を伏せたが、すぐに前を向いた。
「私はもう、誰にも縛られない。でも――民を見捨てることはしない」
その言葉に、兵士たちが剣を構え直す。
「契約者が戻ったぞ! 光の令嬢が、王都を守る!」
魔物の群れが再び押し寄せる。
その中心には、異様な気配を放つ存在がいた。
「……四天王の気配。来るわよ」
リディアは〈正義〉のカードに手を添え、仲間たちを見渡す。
「ここで、王都を守り切る。そして、リュカを取り戻すための道を開く」
戦いは、再び始まった。




