第23話:四天王の襲来
〈死〉のカードを手に入れた翌朝。
リディア、ヴァルグ、カスミの三人は〈ヒノカ〉王宮に招かれ、国王から感謝の言葉を受けていた。
「あなた方の勇気が、我が国を救いました。契約者の力は、伝説ではなく現実なのですね」
リディアは静かに頷き、カードケースを握りしめる。
「でも、まだ終わっていません。魔王の影は、確実に近づいている」
その言葉が終わる前に――空が震えた。
王宮の天井が裂け、黒い翼が広がる。
空間が歪み、闇の渦から一人の魔族が降り立つ。
「……来たか」
ヴァルグが低く唸る。
現れたのは、魔王〈ヴェル=アザル〉の四天王の一人――〈黒翼のゼルヴァ〉。
漆黒のローブに身を包み、瞳は虚無のように冷たい。
「カードを集める者よ。ここで終わりだ」
ゼルヴァの声は、空間全体に響いた。
リディアが〈太陽〉のカードを掲げる。
「《浄光術式・ソレリス》!」
光がゼルヴァを包むが、彼は指先ひとつで霧散させる。
「光など、闇の深さには届かぬ」
ヴァルグが炎を纏い、突撃する。
「《焔牙・カルドレア》!」
だがゼルヴァは空間を裂き、炎を飲み込む。
「空間断裂――《虚界の門》」
リュカが剣を抜き、羅鬼流の構えを取る。
「羅鬼流・終式――《無明一閃》!」
刃がゼルヴァの肩をかすめるが、次の瞬間、彼の手がリュカの胸元を掴む。
「お前は、記録者であり剣士。魔王の器にふさわしい」
「なっ……!」
空間が渦を巻き、リュカの体が闇に飲まれていく。
「リュカ――!!」
リディアが叫び、手を伸ばすが届かない。
ゼルヴァは最後に一言だけ残す。
「次に会う時、お前の記憶は――魔王のものだ」
そして、闇とともに消えた。
静寂が戻った王宮。
リディアは膝をつき、震える手でカードを握りしめる。
「……リュカを……連れていかれた……」
カスミがそっと肩に手を置く。
「必ず、取り戻しましょう。彼は、あなたの旅の記録そのものです」
ヴァルグは炎を揺らしながら言った。
「奴を追うには、さらなる力が要る。次のカードを探すぞ」
そして、三人の旅はリュカ奪還と魔王討伐のため、次なる地へと進む。
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