第22話:影に潜むもの
転移魔法の光が消えると、三人は霧に包まれた街に降り立っていた。
ここは〈ヒノカ〉――静かで美しい国。だが、空気は重く、どこか冷たい。
「……人の気配が薄い。まるで、街全体が怯えているようだ」
リュカが巻物を閉じながら呟く。
カスミが前に出る。
「夜になると、影の魔物が現れます。姿は見えず、音もなく、人々が消えていくのです」
その夜。
三人は王都の外れにある民家に身を潜め、魔物の気配を待った。
そして――現れた。
壁に染みるように広がる黒い影。
人の形をしているが、顔はなく、ただ空間を歪ませている。
「来た……!」
リディアが〈太陽〉のカードを掲げる。
「《浄光術式・ソレリス》!」
光が空間を裂き、影の魔物が悲鳴を上げる。
その姿が露わになり、鋭い爪と歪んだ口が現れる。
「羅鬼流・三式――《月閃の追斬》!」
リュカが抜刀し、影の腕を斬り落とす。
ヴァルグが炎を纏い、突撃する。
「《焔牙・カルドレア》!」
三人の連携により、影の魔物はついに倒れた。
その瞬間、空間が震え、黒い霧の中から一枚のカードが浮かび上がる。
――〈死〉。
静かに、冷たく、しかし確かな力を宿したカード。
リディアが手を伸ばすと、カードは彼女の手に収まり、冷たい魔力が指先を包んだ。
「これが……〈死〉の力。命の終わりを見つめるカード」
カスミは静かに言った。
「この国を救ってくれて、ありがとうございます。ですが、これで終わりではありません」
そのとき、空が震えた。
遠くに、黒い翼が広がる影が見えた。
「……あれは……」
リディアが目を見開く。
「魔王の四天王の一人――〈ゼルヴァ〉。奴が来た」
そして、物語は次なる激突へと進んでいく。




