第21話:使者の魔道士カスミ
〈運命〉のカードを手に入れた翌朝。
リディアたちはルミナリアの宿で静かな朝食をとっていた。
だがその空間に、突如として魔力の波が走る。
「転移魔法……!」
リュカが巻物を握りしめる。
空間が裂け、和装の女性が現れる。
黒髪を結い上げ、瞳は鋭く、背には魔導の杖。
彼女の名は――カスミ。〈ヒノカ〉の宮廷魔道士。
「契約者の方々ですね。あなた方の助けが必要です。我が国を救ってください」
リディアは立ち上がり、警戒しながらも応じる。
「何が起きているの?」
「影に潜む魔物が、夜ごと人々を襲っています。結界も破られ、王都の力では防げません」
その瞬間、リディアのカードケースが震えた。
〈太陽〉のカードが微かに光を放つ。
「……この国にも、カードがあるみたい」
ヴァルグが立ち上がる。
「ならば行く理由はある。魔物を狩り、カードを奪う」
リュカは頷き、剣を腰に収める。
「そして、リュカを取り戻す手がかりもあるかもしれない」
カスミは杖を掲げ、転移陣を展開する。
「〈ヒノカ〉へご案内します。どうか、我が国を――」
光が三人を包み、空間が揺れる。
次の瞬間、彼らは異国の地へと降り立った。
霧に包まれた静かな街。
だが空気は重く、遠くから不気味な咆哮が響いていた。
「……始まってるわね」
リディアは〈太陽〉のカードを握りしめ、前を見据えた。




