第18話:分断と増援
迷宮の通路は崩れ落ち、三人はそれぞれ別の道へと弾き飛ばされていた。
リディアは一人、暗い通路に取り残され、胸の鼓動が耳に響く。
「……ヴァルグ、リュカ……!」
遠くから、魔族の声が響いた。
「では、次の二匹を放ちましょう」
鎖の音が迷宮全体に広がり、重い足音が地を揺らす。
現れたのは二体の異形――
- 巨腕を持ち、壁を砕きながら進む〈バルドレア〉
- 蛇のような体躯で、毒の息を吐く〈ノス=ヴェル〉
「……二体同時に……!」
リディアは〈月〉のカードを掲げ、幻影を展開する。
「《幻影結界・ルナティス》!」
だが、〈ノス=ヴェル〉は毒の息で幻影を溶かし、リディアを追い詰める。
一方、リュカは別の通路で〈バルドレア〉と対峙していた。
「羅鬼流・二式――《月影の舞》!」
抜刀の閃光が巨腕をかすめるが、傷一つつかない。
「……硬すぎる……!」
リュカは必死に回避しながら、通路を駆け抜ける。
ヴァルグは元の通路で〈グラヴァル〉と激突していた。
炎を纏った爪で斬りかかるが、鋼の皮膚はびくともしない。
「チッ……このままでは埒が明かぬ」
三人はそれぞれ孤立し、怪物に追い詰められていく。
迷宮全体が揺れ、石壁が崩れ落ちる。
そのとき、遠くからリディアの声が響いた。
「二人とも……どこにいるの!」
リュカも叫ぶ。
「リディア!ヴァルグ!生きてるか!」
ヴァルグは炎を爆発させ、怪物を一瞬だけ押し返す。
「……必ず合流する。生き延びろ!」
だが、魔族の声が再び響いた。
「まだ終わりませんよ。次は――三匹同時に放ちましょう」
鎖の音がさらに増え、迷宮全体に響き渡る。
新たな怪物たちが、闇の奥から姿を現そうとしていた。




