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三半規管が弱い


 地図を描きながら進み、ウルフを見つけては頭を潰して解体してウルフ肉回収と繰り返していた。


 スマホのアラームが鳴る。


 今は手が解体の所為で血塗れなので、マジックポーチから出したペットボトルに入った水で洗い流してタオルで拭く。


 まあ、流石に血塗れの手ではスマホを触りたくないよな。


 腕時計があったら良かったんだが、生憎今は凛に貸しているので時間を確認するのにスマホ以外の手段が無かった。


 スマホで現在の時刻を確認すると、18時50分になっていた。


「そろそろ戻るか」


 今の俺なら制限時間10分でも、ここからダンジョンの出口まで行ける筈だ。


 時間も無いので早速走り始め、出口に向かった。


 ダンジョンの通路はダンジョンの力によって守られているから、俺が全力を出したとしても、凛の第五開放の様に周囲に被害がいく事は無い。


 ごめん、違った。全然周りに被害が入っていた。


 今現在、ダンジョンの壁や床などのダンジョンの力で守られている場所は無傷だが、逆にダンジョンに守られていない哀れなウルフ達を俺は絶賛轢き殺し中だ。


 何故か今だけはよくウルフに遭遇してしまい轢き殺しているので、段々と体が赤く染まってきていた。


 その上、今の俺には時間が無いのでドロップアイテムを回収する為に一々立ち止まる訳にもいかない。


 もうすぐ出口だ。

 

 と思っていたら、気配感知にウルフとは違う反応があった。


 まあ、このダンジョンで俺以外の人は凛くらいしか居ない。


 そろそろ急ブレーキをかけないと凛を轢き殺してしまうな。


 足で踏ん張り手で壁に指を立てて止まろうと思ったが、俺は全身が血塗れで当然手足も血塗れな訳だ。


 実際にやってみると、血の所為で摩擦が無く滑ってブレーキが掛からない。


 このままでは凛にぶつかってしまう。


 しょうがない。使った事はないが凛を俺の魔の手から助ける為だ。


 必殺スーパーボールッ。


 必殺スーパーボールとは、偶にアニメや漫画などで見る落下中に近くの壁などを蹴ったりして落下方向を変えるアレである。


 俺は全力で横の壁を殴り付けた。


 ドゴッと音と共に、俺の体は反動で反対側の壁にぶつかり、次はそのぶつかった反動で他の場所にぶつかり、ダンジョンの通路を跳ね回る。

 

 この光景を側から見れば、きっとスーパーボールの様に見えると思うから必殺スーパーボールと名付けてみました。


 まあ、殺さない為にやっているので、全然必殺でも何でもないけどな。


 後はこのまま減速するのを待つ。


 それから10回くらい地面、壁に天井とを跳ね回りやっと止まった。


 この技には欠陥があるな。


「気持ち悪い」


 三半規管が弱いと酔ってしまう。


 まるで洗濯機で洗われた後の洗濯物の気分だった。


 地面がグラグラ揺れいて立つ事が出来ない。このままでは19時までにダンジョンを出る事が出来ないではないか。


 散々、凛に時間通りに帰って来いと言ったのに、俺が遅れては駄目だろ。


「早く行かなくては」


 何とか四つん這いになり、ゆっくりとだが這いながらダンジョンの出口へと向かっていく。


 まさか俺にこんな弱点があったなんてな。


 これでは、神眼が使える俺だからこそ出来ると思っていた、スーパーボール改が出来ないではないか。


 スーパーボール改とは、アニメや漫画などで見る事がある。狭い空間を高速で飛び跳ねて移動するアレである。


 漫画では軽々とやってのけるアレだが、実際には物凄い反射神経と運動神経と身体能力を必要としていて、その状態で攻撃に移るのなんて無理だろと思っていた。


 しかし、神眼の空間把握があれば、やってやれない事は無いかも考えていたが、俺の三半規管ではスーパーボール改の軌道には耐えられない。


 使用後は今の俺と同じ状態になるのであれば、戦闘中に使えるのは相手を確実に倒せる時だけだ。


 これこそ必殺技だろう。


 と色々考えていたが全然酔いが醒めない。


 相変わらず気持ち悪くて、ウルフも血の匂いも相まって段々と吐きそうになってきた。


 それでも四つん這いで少しずつ進んで、出口へと向かう。


ーーー


 どうにか間に合った。


 俺は19時までにダンジョンを普通に歩いて出る事が出来ていた。


 あの時は間に合わないと思っていたが、マジックポーチの中に便利な物があったな。と思い出してからは早かった。


【名前:回復ポーション

 状態:良

 効果:小  】


【名前:体力ポーション

 状態:良

 効果:小  】


 この二つがあったのを思い出した。


 体力ポーションの方には特に期待してなったが、精神的にも疲れたので、ついでにマジックポーチから取り出した。


 早速回復ポーションを飲むと、段々と気分が良くなっていき、体の状態が正常に戻った。


 凄く気分が良い。重力から解放された気分だ。


 無重力なんて体験した事もないけどな。そんな事言ったら洗濯機で洗濯された事も無かったわ。


 この回復ポーションが状態異常にも効くかは分からなかったが効いて良かった。


 これでスーパーボール改が全く使えない必殺技では無くなったな。


 それはそうと三半規管を鍛えよう、切実に。


 体力ポーションも飲んでみるが、精神の回復はしなかった。


 期待はしていなかったが、精神的な疲れは取れないか。


 体力ポーションがあれば寝る事も無くダンジョン探索が出来るのでは?と考えていたが、精神を回復出来ないのなら1週間が限界だな。


 そうして無事19時までにダンジョンを出る事が出来た。


 まあ、それでも結局凛よりも遅かったけどな。






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