解体の秘訣
ちょっと待ってくれ。今何か思い付きそうだった。
ここまで出掛かっているだが。
〔最初にモンスターからドロップするアイテムは、良い物だった筈。それもその人が必要な物や望んだ物が〕と考えていた時だ。
この時の望んだ物という所に引っかかりを覚えた。
望んだ物、望む意思、意思、思い。
「そうだッ」
ダンジョンでは、意思や思いが反映される事があったな。
「先輩、真面目な顔したと思ったら急に声を上げて、どうしたんですか?」
あっ、凛の事を忘れていた。
凛は早くダンジョンに入りたいのに、俺が考え込んだ所為で、お預けを食らった状態だった。
「俺はちょっと考えたい事があるから、先にダンジョンに入ってて良いぞ」
「分かりました。お先に行ってきます」
「19時に集合だからな」
「だから、何度も言われなくても分かっていますよ」
凛は不服そうにそう言って、ダンジョンに入っていった。
と、思ったら直ぐに引き返してきた。
「どうした?」
「先輩、ライト持っていませんか?」
「あっ」
そうだった。最近使ってなかったから忘れていた。
ダンジョンの中は真っ暗で、普通の人には何も見えないんだったな。
「持ってないんですか?」
おっと、このままでは俺の所持スキルに気付かれてしまう。
そうだよな。真っ暗だと分かっているダンジョンにライト無しで来ていたら、それは=暗視系のスキルを持っていると思われてもおかしくない。
実際にそうだからな。
「色々あるけど、どれが良い?」
「何があるんですか?」
例え使わなくても俺は持っている。さっきミスリルの指輪を取り出した様にな。
マジックポーチからライト系の物を取り出していく。
「LEDランタンにヘッドライトとハンドライトだな。どれを選んでも良いぞ」
「先輩はどれを使っていますか?」
「俺はヘッドライトだな。両手が塞がらないから」
「う~ん、どれが良いんでしょうね」
「そうだな。凛は一応ダンジョン初心者なんだから両手は空けときたいからハンドライトは無しだな。LEDランタンとヘッドライトをどちらも付けておけば良いだろう」
「でも、先輩は?」
「俺はハンドライト一つで十分だ。1階層で後れを取る事は無い」
まあ、ライト自体使わないけどな。
「私に勝った先輩ですからね」
「まあ、そう言う事だ」
「では、改めて行ってきます。あと19時までには戻るのでもう言わなくて大丈夫です」
それだけ言うと、凛はヘッドライトとLEDランタンを装備してダンジョンへと入っていった。
そんなにしつこかったか? なんかごめんな。
ーーー
さて、これで考えに集中出来るな。
えーと、ダンジョンでは、意思や思いが反映される事があるという所だったな。
最初のドロップもそうだけど、他にもスキルなんかは思い浮かべれば何と無くで使えたりするからな。
思いや意思というものが、ダンジョンで反映されるなら、ウルフの肉が手に入った状況にも納得がいく。
それなら、モンスターは唯バラバラにするだけでは消えてしまったが、解体をすると言う意思を持ってバラバラにすれば、ちゃんと解体が出来て、素材も残るのではないか?
実際に解体してみて検証してみよう。
俺もダンジョンに入った。
凛と鉢合わせしない様に、まだ地図を描いていないダンジョンの奥に進んで行く。
解体している時にばったり凛に会ったら可哀想だからな。
俺は凛にグロ耐性があるかもまだ知らないからな。
道中のウルフは一撃で潰して、さっさとドロップアイテムに変え、先へ進む。
勿論、靴と靴下は脱いでいる。
どうせ解体したらまた血塗れになるんだから、最初から脱いでないと。
凛には伝え忘れたが、きっと凛なら気づいて靴を脱いでくれるだろう。
ーーー
「ここまで来ればいいか」
ダンジョンの入り口からもかなり離れて、まだ地図にも描いてない場所まで来た。
この辺で、ウルフを見つけて試してみよう。
ーーー
「見つけた」
1分もしないでウルフを見つけ、そのままHPがゼロになるまで殴り続けた。
この方法だと死体が綺麗に残って良いよな。このユニークスキルもこの時だけは便利に感じる。
と思ったが、やっぱりデメリット多過ぎるッ。
誰かスキルを消すスキルとか知らないだろうか?
はあ、今はそれよりも早く解体を始めないと、折角綺麗に倒したウルフがドロップアイテムに変わってしまう。
マジックポーチから適当にダンジョンでドロップしたナイフを取り出して解体を始める。
朝の時と同じように、毛皮とか他の部分は気にしないで肉を解体していると言う意思を込めて解体していく。
すると、予想通り肉をゲットする事が出来た。
きちんと消えずに残った肉をマジックポーチに仕舞う。
その他の残ったまま消えていない皮や骨、内臓を汚いので放置しておく。
あとはダンジョンが片付けてくれるだろう。
それにしても、これなら誰でも毛皮を手に入れる事が出来るという事だよな。
なら、真面目にネットで解体の仕方や皮のなめし方を覚えようかな?
さて、肉は幾らあっても困らないので、俺は時間が許す限り肉集めに専念しよう。




