ヤバい子だよ、この子
「まあ、お互いに秘密を握り合っているから、バレる心配は無いよ」
「ん、分かってる」
「しかし小池さんが無関係ならここで話すのはやめようか?」
「いえ、大丈夫です」
何が大丈夫なのか分からないんだけど。君のセリフではないよな。
「いや、小池さんが聞きたいかどうかじゃなくて、咲良に聞いたんだけど」
「そうですか」
小池さんは顔を下に向け返事する。
「ん、凛はこれ以上知らない方がいいと思う」
咲良なら、そう言ってくれると思ってた。
「まあ、少し話したけど、俺と慶はお互いの秘密を握り合っているから安心して情報交換しているだけで、きつい言い方かも知れないけど、今日初めて会った子に色々教えて上げられる程、俺達も危機感が無い訳ではないからな。ごめん小池さん」
さて、どうする小池さん。
自分の秘密を守って話から外れるか。それとも秘密を打ち明けて話に参加するのか。どっちを選ぶ?
因みに今、秘密を打ち明けると豪華景品があります。
「はい。分かりました」
小池さんは顔を下に向けたままそう言うという事は、秘密を打ち明けない事にしたのか。
「ん」
咲良は落ち込んでいる様に見えた小池さんを心配して頭を撫でている。
「俺だけなら兎も角、慶達まで俺の勝手に巻き込む訳にはいかないからな」
「ん!」
そう言って俺が咲良を見ると、咲良は何かに気づいたのか、立ち上がり慶と美月の所に走っていった。
「さて、二人っきりになったな」
折角二人きりにしたんだから、慶達が戻ってくるまでに色々と話さないとな。
「はい」
「簡潔に今の状況を言うと、俺は小池さんの秘密を知っていて、小池さんはその事に気付いているという状況だ」
「バレているんですね」
君がその秘密を隠したい事もな。
「俺も1つ、誰にも知られたくない秘密を教えてあげよう。俺が小池さんの秘密を知ったのは、人物鑑定と言うスキルのお陰だ」
「人物鑑定ですか?」
「効果は自身や相手のステータス。まあlvやスキルを見る事が出来るスキルだ。このスキルで君のステータスを見て秘密を知った。まさか気付かれるとは思わなかったけどな」
「それはお互い様です、先輩」
「他人行儀だな。名前で呼んでくれても良いのに、それに人物鑑定の話は慶にも話してない事だからな」
「因みに私のスキルの名前は何ですか?」
「名前? ああ、自分のステータスでも見れないんだったな。小池さんのスキルはエクストラスキル王獣化(猫)というスキルだな」
「成る程。でもこの会話って話し合いだけで解決する前提の話ですよね、先輩」
何が成る程だ。お互いに秘密にしようという素晴らしい提案じゃないか。
しかし、いきなり物騒な子だな。
随分強気の様子で初対面なのに見下されている気がする。
春にも話した通りlvやスキルを手に入れて調子に乗っているのが此処にも居たな。
まさか身近に春以外にもそんな奴が居るとはな。
「え~と、人物鑑定だけでは安心出来ないと?」
「はい。先輩が喋らないように教育した方が早いと思います」
この子、頭は大丈夫だろうか?
敬語使ったり呼び方が先輩なのに、敬意は微塵も感じないし言っている事はかなりヤバい奴だ。
教育って、俺はレッドウルフみたいな獣ではないんだけどな。
さて、このお調子者をどうしたものか。
「う~ん、今の俺に勝つという事は、慶にも勝てるという事になるよ?」
「そんな事、分かっていますよ」
それ程までに自分のスキルに自信があるのか。格上である慶ですら凌ぐ事が出来ると?
俺の見立てでは、慶がlvアップの恩恵を使えば、負ける事はないと思っていたんだけどな。
これは王獣化(猫)の実態を知らないから言える事なんだろうか?
まあ、それでも俺が負けるとは思えないけど。
別に調子に乗っている訳ではなく。
俺は小池さんよりも身体能力でもスキルでも上をいっていて、技術に関しては空間把握で見て潰せるので、余裕で勝てるというだけの話だ。
「俺、これでも不良とかを相手にしていると、学校でも知られているんだけどな」
「その話なら知っています。今朝までその事実を知らなかった馬鹿がいたって慶さんが笑って話していました」
あの野郎!
「不良ぐらいなら、私でも余裕です」
そうだよな。
「そうか。ならしょうがないな。放課後裏山で少し話そうか」
「分かりました、先輩」
しかし、この見た目で本当に凄い事言う子だったな。
小池さんとの会話が終わったタイミング丁度に慶達は戻ってきた。
「おい、光希。凛ちゃんもダンジョンに関わっているんじゃなかったのか?」
おっと、そんな事も慶には話したな。
小池さんは慶の話を聞いてこっちをガン見してきている。
テメー!何バラしてんだよっ!!って事かな?
まあ、上手い感じに誤魔化すから抑えてと、簡単にアイコンタクトをする。
「ちょっと違うな。関わっているんではなくて、これから関わるんだ。そう咲良にもお願いされたんだろ」
「ああ、咲良が凛ちゃんもダンジョンの話に入っていいか?って聞きにきたよ」
「答えは?」
「俺は別に良いけど、光希の方こそ良いのか? 凛ちゃんの事あまり知らないだろ」
「慶達が信用しているなら、信じる」
俺はな。小池さんの方は全然、俺の事を信用も信頼もしていない様だけど。
「で、肝心の凛ちゃんの意思はどうなんですか?」
「ん、凛も良いって言ってた」
「はい、そうです」
美月の質問にも咲良と小池さんが答えたので、話は纏まった。
「さて、同意も取れた所で、今日のところはこの辺でダンジョンの会をお開きにしようか」




