凍った空気
ダンジョンモンスターについて話そうとはなったものの、俺は何処まで話す事にしようか?
あまり突っ込んだ話をすれば、俺の事がバレてしまうが、俺の性格を知っている美月達の前でダンジョンの話に食い付かないのもおかしい。
バレないようにするには、俺が話の流れを作るしかないな。
「じゃあ、早速話していこうか。まずはどんなダンジョンモンスターが居るかだな」
「光希、そんな感じで話を進めていくのか?」
「いや、グループでの話し方とか分からないから、一先ずこのままで頼む」
「わかった」
大丈夫。ボッチでもクラスの班活動くらいはした事がある。不器用でもなんとかなる筈だ。
俺はボッチじゃないけど、でも頑張る。
「そうですね。私が知っているモンスターは、鼠、牛、虎、兎なんかがネットに上げられていましたね」
トップバッターは美月。なぜ苦手そうにしているのに、自分で仕切ろうとしているのかと突っ込まずに話をしてくれた。
美月が言い終わると、続けて咲良が話す。
「ん、蛇、羊、猿、鳥、猪」
何故、十二支順なんだ?
「挙げられていない辰、馬、犬はまだ確認されていないのか?」
「はい。その3体が見つかったと言う情報はありません」
「分かった。次は慶」
「OKって言いたいけど、こう言う事はあんまり興味が無いから調べてないので、さっきの十二支以外なら鬼だけかな」
まあ、自分の知っているダンジョンモンスターについては調べても、他の遭遇しないだろうモンスターにはそんなに興味がなくてもしょうがないか。
ダンジョン外モンスターが居るから、遭遇しない事もないんだけどな。
「小池さん」
「おい、何かコメントしろよ」
「いや、鬼の事は俺も知っていたから、十二支の様にボケでも挟んでくれないと正直難しい。改めて小池さん」
「はい。私も詳しくないんですが、スライムとゴブリン、豚が居るって聞きました」
「ファンタジーの定番だな。因みにその豚は2足歩行なのか?」
「? いえ、そこまでは知りません。豚としか言ってなかったですね」
豚人間のオークかは分からないのか。ゴブリンなんてファンタジー生物が居るならオークも居そうだけどな。
「そうか。最後が俺だが、出てないので知っているのは狼と蟻くらいだな」
「昆虫までいるのかよ」
「蟻はファンタジーでは定番だからな」
「そんな事言ったら、スライムやゴブリンなんてファンタジーにしか出てこない生物だろ」
「兄さん、鬼もです」
「ん」「そうですね」
みんなも気になっていたか。
今の所、ファンタジーで定番のモンスターか実際に居る生き物しか出てこないのは何でだろうな?と思うよな。
もう少しマニアックなモンスターがいても不思議では無いと思う。
例えば誰も知らない未知のモンスターのダンジョンがあってもいいと思うが、未だにそんなモンスターが見つかったという話は聞かない。
実際にはあるのかもしれないが、未だに見つかってないダンジョンもかなり数が限られる。
それに比べ、現在見つかっているモンスターは複数のダンジョンで確認されているモンスターが殆どだった。
「そうだな。俺達でも全く思いも寄らないモンスターは確認されていない」
俺がそう言うと、慶が最初に答えた。
「それはアレじゃないか。ゴブリンやスライムみたいな伝承で出てくるモンスターは実際に昔も居たからとか」
「いや、スライムは唯の物語上だけの化け物だった筈だ。しかも物語に出てくるスライムは強すぎて神話の生物かってくらいだったからな。現代に居て良い生物じゃないだろ」
「そうなの? あまり神話とか詳しくないから知らないけど、最近の物語では雑魚モンスター扱いされているよな。実際にダンジョンに出てくるスライムも結構強いらしいよ。スライムに効く攻撃は魔法か火だけだって話だから」
魔法は予想通りだ。火の方はやはり生物相手には一度は試してみるよな。
まあ、実際は火でも倒せるけど効率が悪いんだよな。
「慶、何でスライムについて知っているのに、さっき聞いた時に鬼だけしか言わなかったんだよ」
「光希の為に残しておこうかな?と」
「あの、良いですか」
手を挙げて、話に入ってきたのは小池さんだった。
「「どうぞ」」
「さっきの慶さんがスライムには魔法しか効かないと言ってましたけど、今日ネットに上げられた話ではスライムにも物理攻撃は効くそうです」
「効くって凛ちゃん。スライムは酸の様なもので相手を溶かしてしまうそうですけど、それは大丈夫なんですか?」
「ん、何でも溶かす」
そう。美月達が言うように、スライムは種族スキルで酸を持っている。そんな相手に物理攻撃なんて効くのか?
前に拳大の石をスライムに落とした時は、あっという間に溶かされてしまった。
「自衛隊の話なんですけど」
自衛隊の話なんだ。
ちょくちょく情報が漏れているよな。わざとなのか?
「ダンジョンに潜っているベテラン?自衛隊の一人の話なんですけど。
1階層で気づかずにスライムを踏んでしまった事があったそうなんですが、その隊員の足は装備が殆ど溶けていたのに対して足は傷一つ無かったそうです。
その隊員が試しにそのままスライムを踏み潰すとドロップアイテムに変わった、と言う話です」
「lv差か」
「俺もそう思うな。lvの恩恵がスライムの特性を上回ったんだろうね」
「私もそう思います」
俺達の返事に凛が頷いた。
「スライムにも物理攻撃は効くんだね」
「そうですね。これで外でスライムに出くわしたとしても対処出来そうです」
美月がそう言うと、空気が凍った。




