飛び抜けているものあったー!
さて、後は元々の予定では見るつもりはなかったが、小池のステータスも鑑定して確認する。
佐久間家で何処までダンジョンの事を明かして、利用しているのかをな。
門下生で、しかも佐久間家の娘二人の友達の小池さんに、佐久間家敷地内のダンジョンを使わせているのかを知っておきたい。
もし使わせているなら、地図制作の技術を知ってもらえば、俺も慶経由で頼めば入れてもらえるかもしれない。
小池さんが使わせてもらえてない場合。
秘密を守れるという事を信じてもらう為に俺が個人で未発見ダンジョンを管理している秘密を差し出してから、慶にも見せたダンジョンの地図を見せ、俺の地図制作技術が役立つと思ってもらえて、初めてダンジョンに入れてもらえる可能性が出てくる。
それはとてもリスクとリターンが吊り合っているとは言えないが、状況によっては、そうせざるを得ない時が来るかもしれない。
そうな状況になる前に、佐久間家のダンジョンに出入り出来る様になっておきたい。
だから小池さんが佐久間家のダンジョンを使わせてもらっていると非常に助かる。
俺は慶と結構仲のいい友達だと思っているが、所詮まだ知り合って一年も経ってない仲だ。
その点、小池さんは美月の話だと昔からの友達で、俺とは信頼度が段違いだろう。
そして、家族以外の小池さんにもダンジョンを使わせているのなら、俺にも可能性はある筈だ。
俺は小池さんのステータスを鑑定する。
【名前:小池 凛
性別:女
年齢:15
職業:学生
lv:0
エクストラスキル:王獣化(猫)A
HP:100/100
EP:?/? 】
俺がステータスを鑑定した瞬間、小池さんがこっちを見た。
が、直ぐに美月達との会話に戻った。
今、鑑定したのが気付かれたが、それよりも鑑定結果に驚き過ぎて、上手く考えがまとまらない。
驚きの声を出さなかっただけ褒めてほしいくらいだ。
これまで鑑定に気づかれた事は一度も無かった。
あの慶ですら、俺に鑑定されても気づいた様な反応は無い。
俺相手に慶が気づいた事を隠すとも思えない。違和感を覚えれば、何かしら反応はある筈だ。
慶よりも実力で劣っている筈の小池さんが、鑑定に気づいたなら、それは小池さんが既に所持しているスキルの影響だろう。
小池さんが所持しているスキルはエクストラスキル王獣化(猫)ただ一つ。
このスキルはアクティブスキルと、ステータスには表示されている。
今もスキルを発動している様子ではなかった。
そしてステータスを見ての1番の驚きは、小池さんのlvが0で、EPは無制限状態になっている事だ。
これは鑑定を手に入れて天眼に進化させた後、初めてスライムを倒すまでの状態の俺と同じだった。
もしかしたら、王獣化(猫)というスキルは、天眼と同じ様に複数の能力を兼ね備えたスキルなのかもしれない。
小池さんもEP無制限の状態なら、幾らでもスキルが使い放題で経験値を稼ぐ事が出来た筈だ。
それで俺と同じ様にスキルを進化させて、エクストラスキル王獣化(猫)を手に入れたのかもな。
こう考えれば、エクストラスキルを所持している事にも納得出来る。
鑑定に気付かれた事もスキルの所為ならしょうがない。
そういった状況を想定していなかった俺が悪いだろう。慶に気付かれなかったから、過信していたのかもな。
そう言えば、lv0でスクロールを使ったという事は俺と同じ様な激痛を味わったのか。
スキルが進化している所から見て、スクロールで人が死んだ話を聞く前には、既にスクロールを使ってしまっていたんだろう。
因みに、スクロール死亡事故を母さんから聞いたのに報道した日時を知っているのは、聞いたその日の夜に一応情報の真偽をネットで調べたからだ。
それにしても、小池さんもlv0でスクロールを使ったのに死ななかった様だな。
どういう法則で死なないのかも知りたいが、今はそれよりも小池さんにどう対処するかを考えないといけない。
小池さんが調子に乗って1体でもモンスターを倒してしまえば、その時点でEPは正常に戻り王獣化(猫)は使えなくなってしまう。
もしそれがダンジョン内だった場合、下手をすれば死んでしまうかもしれない。
佐久間家の門下生なんだからスキルが使えなくとも、冷静に対処出来れば自力で生還も出来るとは思う。
しかし、俺は小池さんの性格について全然知らないので、その時になって小池さんが冷静に行動出来るかは分からなかった。
もう知り合ってしまった。それに美月達の友達でもある小池さんが死んでしまうと寝覚めが悪い。
助けない訳にはいかなかった。
まあ、たった1回。lv0から1に上がってしまう時に立ち会えば小池さんが死んでしまう事態にはならないだろう。
後は俺がやった様に、ひたすらlv一桁のモンスターを倒して、総EP量が王獣化(猫)の消費EPを超えるまで倒し続ければいい。
「光希…光希……光希っ」
「えっ? 何?」
集中し過ぎていたのか慶に呼ばれている事に気付かなかった。
「さっきから呼んでいたのに、凛ちゃんを見つめて動かなかったぞ?」
「少し考え事をしてボーッとしてた」
「そうか。まあ良いけど、それより今日の全校集会について話をするぞ」
「全校集会ってダンジョン外にモンスターが出てくる話だろ? 何か話す事でもあるのか?」
俺が慶にそう聞くと、答えてくれたのは美月だった。
「そうですね。話すと言ってもどんなモンスターがダンジョン外に出ているだろう? みたいな、たわいない話ですよ」
まだ放課後まで時間はある。ここは一旦小池さんの件は後にして、今は慶達と楽しく昼休みを過ごすか。
「わかった」
本当は慶と二人で、ダンジョンについて話をしたかったが、それは今じゃなくてもいい。




