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慶をしばきたい



 俺が慶をいきなり攻撃した事で、教室はちょっとした騒ぎになり始めていた。


 慶の奴、俺を馬鹿にしやがったな。


 学校で慶とやり合うのは初めてだが、もう評判なんてどうでもいい。


 どうせバレているのなら関係ないからな。


 それよりも俺を晒し者にした慶に目にもの見せてやる。


「光希、顔が赤いぞ。風邪でも引いているんじゃないのか?」


「慶、謝るなら今だぞ」


「ごめんw」


 俺と慶がやり合う雰囲気になっている事を察したクラスメイト達は教室の机を退かしてリングを作る。


 何、今の動き? クラスみんなの団結力凄いな。


 クラスメイト達の統率された動きに引いて、冷静になった。


 どうしよう? そう言えば、今は朝のホームルーム前でクラスメイトが教室に全員居るんだった。


 ここで戦うのはやめた方が良いと思うが、リングまで作られたら今更やめ難かった。


「「んっ」」


 と考えていたら、神眼の気配感知にこの教室に向かってくる気配を捉えた。


 慶と目を合わせると、どうやら慶も高野先生が来るのに気づいている様だ。


 慶とアイコンタクトを交わし、今やり合うのは止める事にした。


「みんな、先生が来るから机を急いで戻してくれ」


 慶が手を叩きながらそう言うと、クラスメイト達は佐久間家の慶を信用しているのか、少し驚きを顔に浮かべたものの迅速に机を元に戻していく。


 しかし、小鬼の時から思っていたが、慶の素の感知能力は俺の神眼と同じくらいの効果範囲を持っているようだ。


 スキル無しで俺と同等の効果範囲か。やはり佐久間家は超人だと改めて実感する。


 まあ、だからと言って負けてやる気はさらさら無いがな。


 俺は自分の机を戻してから、慶に笑みを浮かべて話し掛ける。


「慶君、昼休み屋上で遊ぶよな?」


「良いけど、今日から昼休みは美月と咲良も一緒に食べるそうだ」


 おいおい、慶達の兄妹仲が良い事は知っているが、学校の昼休みくらい友達と過ごせよ。


 確か一度だけ慶の家に遊びに行った時に見かけた猫みたいなツリ目をした女の子が居た筈だ。


 そんな子が居るんだから、友達が全く居ないなんて事は無いと思うんだけどな。


「まあ、あの二人なら、俺達のじゃれ合いも見慣れているから大丈夫だ」


「そ、ならアイツらも昼休みに屋上に来ると思うから」


「分かった」


 机が元の位置が戻った辺りで、丁度高野先生が教室の扉を開けて入ってきた。


「皆さん、今から全校集会をするので、廊下に並んで体育館まで行きましょう」


 元々予定にはなかった全校集会にクラス内が騒がしくなる。


「はいはい、早く席を立って廊下に並んで下さい」


 いつも素人くさい高野先生が今日は真剣な様子だと気づいて生徒達は静かになり廊下に並び始めた。


 高野先生が先生みたいに見える。


 何かあったのかな?


 俺は小声で慶に声を掛ける。


「慶。何の話か知っているか?」


「ん? 光希は朝のニュースを見てないのか?」


「見てない。慶が言っていた通り、朝から少し遊びに出掛けていて、そのまま学校に登校してきたからな」


「そうだったな。まあ、ニュースって言っても大した内容じゃない。俺も光希も既に知っているダンジョン情報だからな」


 俺も慶も既に知っているダンジョン情報で、ニュースで報道されたら全校集会が行われる様な情報。


 全校集会が行われるという事は、生徒全員が関わるかもしれない事柄で、ダンジョン関係。そして俺と慶がニュースになる前から知っていた共通の情報か。


 ダンジョンの民間への解放ではないだろ。


 こんな事がニュースになっていたら、クラスは朝からその話題で持ちきりだっただろう。


 ニュースを見て知っていたとしても友達との話題で出し難い内容だと良くない情報だろう。

 それは高野先生の雰囲気からもその事が分かる。


 ここまで情報が揃えば分かる。

 ダンジョン外にモンスターが出てきた、とでもニュースで流れたんだろうな。


 それなら急遽全校集会が行われる事にも納得がいく。


「慶が警察に言ったアレがニュースになったのか?」


「いや、俺の通報の他にもダンジョン外での目撃情報はあったらしい。

 まあ、俺が倒すまでは目撃情報だけで、イタズラだと思われていたみたいだけど」


「おいおい、警察も適当だな」


「しょうがないだろ? ダンジョンが出現してまだ日が浅い。元々ダンジョン外にモンスターが出ないって調べがついていたみたいだしな」


「よくそんな状況で、佐久間家の門下がダンジョン外でモンスターを倒したなんて信じてもらえたな」


「そこはうちの家だからって所だな。俺も良く分かんねーけど、警察からのウチの祖父さんへの信頼度が半端ないから」


「元当主のあの祖父さんか。あの人の強さは意味不明だからな。警察もそれを知っているのか」


「元門下生の何人かが警察に居るからな。祖父さんの理不尽は経験済みだぞ」


「まあ、慶の祖父さんを知っていれば、その家の言葉の重みも変わるか」


「そうだな。俺の家は凄いなっ!」


「大丈夫か? その凄い家の次期当主は慶なんだよな、務まるのか?」


「はあ~テンションが下がる事言うなよー。

 俺が当主になる条件は現当主に一本入れる事の筈が、いつの間にか祖父さんからも一本取らないと当主になれない事になっていたんだからな」


 慶はそう言うと、遠くを見つめニヒルな笑みを浮かべて黄昏れる。




 


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