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頬を染めて



 急がないと時間が無い。もう見られてしまったから今更隠しても遅い。


 と言うか、今更隠したら余計に怪しく見える。


 如何にかして、クラスメイトみんなの前で誤解を解かなくては!


 まあ、誤解じゃないんだけどな。


ーーー


 そんな感じで悩んでいると、慶が教室に入ってきた。


「おはよう」


 慶は挨拶の後、自分の席に鞄を置いてから、俺の方に近づいてきた。


「おはよう、慶」


 俺が挨拶をすると、慶はコッチを見てニヤニヤしながら話しかけてきた。


「おっす、光希。なに顔を赤らめてるんだ?」


 コイツは何意味不明な事を言っているんだ?


 こっちは今はそれどころじゃないだよ。


 慶にも一緒に言い訳を考えて欲しいのに。


「何んで俺が男相手に頬を染めなきゃいけないんだ」


「う~ん、俺に惚れたとか?」


「無い」


 俺に同性愛の趣味は無い。見た目は兎も角な。


「そう怒んなって。それより光希、お前学校来る前にダンジョンでも行ってきたのか?」


「ああ、行って来た。慶もやっぱり気づいたか」


「もって何だよ? 他にも誰かに話したのか?」


「は? 話す訳が無い。それでも今日の俺を見れば気付く奴も多い筈だ」


「確かに可能性はゼロじゃないか」


「慶、何言ってんだ? 可能性はかなり高いだろ」


「何で?」


 あれ~? 何故か話が噛み合わない。どう言う事だ?


 慶は結構理解力がある方なんだが、もう少し詳しく説明すれば、誤解も解けるか。


「えっと、簡単に説明するとだ。

 普通に学校に通っている生徒が、ある日血を付けて学校に登校してきた。

 これは結構と言うか、かなりおかしいだろ。

 そして、この間出現したダンジョンと一緒に考えれば、誰でも察する事が出来ると思うが」


 これで慶も分かってくれるだろ。


「あはは!はははははは!!!」


 慶は俺の説明を聞くと、腹を抱えて笑った。


 此奴っ!


「何処に笑う要素があった?」


「あはは、マジか~光希が気づいてなかったとはw」


 慶は笑い過ぎて涙を流している。


 慶の笑い声所為で教室の視線が集まって目立っていた。


「気づいてないって何だよっ」


「いや~光希が自分の事を普通と思われていると勘違いしている所だよ。あー腹が痛かったw」


 俺は頭が痛い。

 それに勘違いって、俺は普通に見える様に振る舞ってきた筈だ。


「ん、学校では普通に過ごしているだろ」


「ん~分からないか? そうだな」


 パシッ


 そう言うと、慶がいきなり目を突いてこようとしたので、普通に手で掴んで止める。


「何がしたいんだ?」


「そうそう、こういう事だよ」


「どういう事だよ?」


 全然、分からない。


「いやいや、光希は気づいてないかもしれないけど、普通の人は今の攻撃を掴むなんて出来ないからね? 学校でも辛うじて避けれる人が何人か居るかな?くらいだぞ」


「え? という事は」


「そう、そういう事だよ」


 慶はそう言って頷いた。


 成る程、確かに笑われる訳だ。どうしよう、恥ずかしい。


 これまで上手く隠せていると思っていた自分が、凄く滑稽見えた。


 今、俺の顔は真っ赤になっているだろうな。


 そうか、全然隠せていなかったのか。


 俺が血を付けて学校に来たとしても、その辺で不良をボコってきたと思われるのが関の山なのか。


「光希。少しトイレ行ってこいよ」


 そうだな。少し一人になりたい気分だった。


「わかった。行ってくる」


 種も仕掛けも分かっている相手の前で、ドヤ顔で全力のマジックを披露した後に、裏でその事実を知ってしまった時の心境だ。


 もう恥ずかしくて不登校になりそうだった。


 不登校になったらダンジョンに行き放題じゃないか!という冗談も言えない。


 俺は席を立って教室を出る。


 トイレの個室に入り便座に座って、天井を見上げながらボーとする。


ーーー


 10分ぐらい経過して、漸く心の整理がついた。


 そうだよな。こんなのは開き直って、これまで通り学校生活を送っていけばいいだけだよな。


 慶の話だと、今回の事は俺のイメージが俺が思っていた以上に悪いから、鞄に血が付いていた件は放っておいても勝手に勘違いしてくれるだろう。


 最悪、職員室に呼び出されても誤魔化しようがあるという事になる。


 うん。逆に良かった。


 もう気にしない。


 ほんと気にしない。全然。


 大丈夫だ。俺なら乗り越えられる。


 そう家に帰ったら鞄を洗って、翌日には何事も無かったように登校すれば、誰も何も聞いたりしてこないだろう。


「落ち着いたな」


 もう直ぐホームルームが始まるから、教室に戻らないとな。


 トイレの個室から出て手を洗おうとしたら、ふと鏡が目に入った。


 そして、鏡に写っている自分の顔を見ると、頬に赤い血が付いていた。


「あれ? あれあれあられ?」


 え! 何? もしかして朝からよく見られたり、慶が顔が赤いと言っていたのは、全部これが原因?


 俺は急いで顔を洗い、ダッシュで教室に戻ると、そのまま無言で慶に飛び蹴りをした。


「おっと、どうしたんだ、光希?」


 相手は慶なので、背後からの奇襲にも難無く気付き余裕で避けられた。


「先に言えっ! 俺が唯の馬鹿みたいじゃないか!」


「だって、あんな顔で教室に居る奴は、唯の馬鹿だろw」


「よし、戦争だ」


 




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