ウルフ
昨日と同じ道のショートカットルートを通って、裏山に着いた。
此処からは地道に地図を描きながら、進んで行く事にする。
まあ、神眼があるので地形認識は一瞬で済むから、後は地図を描くスピードの問題だ。
この裏山は家からも近い。学校には慶みたいにモンスターに対抗出来る人物は少ないので、この裏山からモンスターが出てしまう前にダンジョンを見つけてしまいたい
「地道に頑張りますか」
ーーー
地図を描きながらダンジョンを探していると、神眼の気配察知にモンスターの気配が引っ掛かった。
「また逸れか?」
多分ダンジョンから出て来たモンスターだろうから、始末しておこう。
レッドウルフと違う種類のモンスターやレアスキルを所持していたら、捕まえて飼う事も視野に入れておこう。
レッドウルフだけでも結構食事代が掛かりそうだからな。その場合レッドウルフには居なくなってもらう。
野生動物を狩り過ぎると、生態系が壊れそうだから。
モンスターがダンジョンから出てくれば、どの道人間だけでなく自然の生態系まで荒らされる事になるだろうけどな。
前も言ったが、この問題は俺1人ではどうしようもない。俺は自分の周りだけを守る事にする。
別に協力をしない訳ではない。国がダンジョンでモンスターを狩ってほしいと言うなら、協力させてもらう。
唯の民間人の1人としてな。
俺は気配に近づいて、木の影からモンスターを視認した。
【種族:ウルフ
性別:オス
lv: 4
スキル:噛み付くⅠ 引っ掻くⅡ 嗅覚Ⅰ
HP:207/207
MP:0/0 】
ウルフ?
レッドウルフの通常種という事なのかな。
例えば俺の管理しているダンジョン1階層のスライムと同じ普通のモンスター。
1階層に出てくるスライムは、このウルフと同じでMPが0だった。
別の種のモンスターに進化しないと、MPは使えないのかもしれない。
これは人間側の都合だが、lv0で何の対抗策もない状態でいきなりMPを使ってくるモンスター相手に勝てる人間は少ない。
なら、外でレッドウルフみたいなMPを使うモンスターが出て来るのが確認された時点で、人間側はモンスターへの対抗手段を手にする為に、結局はダンジョンに入らなくてはいけない。
そう考えると、ダンジョン側はどうしても人間、又は人間に類似する知的生命体にダンジョン内を探索させたい様に思えるな。
考え過ぎという事は無いだろうが、今は目の前の事に集中した方がいいか。
「あれ?居ない」
考え事をしている内にウルフは居なくなっていた。
おかしいな?
レッドウルフの時はこのぐらいの距離に近づいたら勝手に襲い掛かって来ていたから、てっきり今回も襲ってくると思っていたのにな。
俺の存在に気づかなかったのか?
普通の野生動物でも、あの距離まで気配を消してない人間が近づけば気づく筈だ。
なのに俺に気づかずのんびり歩いているという事は、モンスターモンスターとは言うが、lvの低いモンスターはその辺の野生動物よりも劣っているのか。
まあ、当たり前か。唯の一般人が武器を持っていたとしても、通常スペックの狼に1対1を挑んで勝てるとは思えない。
ダンジョンに人を招き入れたいなら、最初は難易度が低くくないと。
そんな事よりさっさと捕まえてしまうおう。
野生動物よりも弱いとは言っても、普通の人間を殺すくらい簡単に出来る。逃すわけにはいかない。
ーーー
【種族:ウルフ
性別:オス
lv: 4
スキル:噛み付くⅠ 引っ掻くⅡ 嗅覚Ⅰ
HP: 2/207
MP:0/0 】
「これで良い」
歩いて離れていたウルフを追いかけると、そのまま空中コンボを決めて残りHPを2にした。
ウルフは俺の空中コンボを受けた後、何故か瀕死の状態かの様に動かなくなった。
息はしている。生きてはいるみたいだ。
外傷が全く無くてもHPが極端に減ると動けなくなるのか。
ユニークスキルの所為で、ウルフの体は何処も傷ついてない筈なのに、動けなくなり追い詰められている。
これは良い情報だな。
俺はこのユニークスキル固定ダメージ1を手に入れた時点で、手加減が出来なくなったと思っていた。
相手をどんなに攻撃しても、最後のHPを0にするまで戦い続けられると、殺すしか対処のしようがないと思っていた。
ダンジョンのモンスター相手にはそれで良いが、チンピラを相手だと殺人になってしまう。
まあ、チンピラは気絶させられる相手だから問題無いか。
慶みたいな相手やある程度俺の動きについてこれる奴だったら、殺るか逃げかしかないと思っていた。
相手のHPを一桁に追い詰めるだけで無力化出来ると分かって本当に良かった。




