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日本生まれの日本狼



 試練の扉についてもクリアした事は、まだ知られたくは無い情報だ。


 慶に教えて挑戦されても困るからな。ネットに情報が上がるまでは適当に誤魔化して伏せておく。


「この部屋に宝箱は無かった」


「宝箱は、か。で、何があったんだ?」


「期待しているところ悪いが、何があったかは俺にもちょっとよく分からない」


「ん? どういう事だ?」


「まあ、簡単に説明するとだな。その隠し部屋には入ると、正面の壁に何かのレリーフが刻まれていた。そのレリーフの側に人が入れそうな程大きな杯が置いてあるだけで、その他には何も無かった」


「ギミックか何かなのか。光希はどう考えているんだ?」


「俺も何らかのギミックがあると思う。でも幾ら考えても思い付かなかったから諦めたよ」


「えっ? 諦めたのか?」


「いや、諦めたと言うか。あの部屋の2つだけでギミックが成立するのかも分からなかったからな。鑑定系のスキルが手に入るまでは放っておこうと思っただけだ」


「そうか。複数階層で連動したギミックなら、1つの部屋だけじゃ意味を成さないって事か。それだと鑑定系のスキルは今後の為に手に入れたいな」


「実際にそう言うスキルがあればだけどな」


「未知のドロップアイテムが存在しているんだから、鑑定スキルも存在してくれないと困るよ」


 ダンジョン側が人をダンジョン探索に誘導している事が分かっている人は、鑑定や解析系のスキルが存在している事を確信しているだろうけどな。


「存在しない場合、新しいドロップアイテムが出てくる度に自分で人体実験する羽目になるな」


「そう言う事態は避けたいな。あの謎の瓶を何か分からない状態で飲む勇気は無いよ」


 謎の瓶ってポーションの事だな。


 俺は鑑定で回復ポーションだと分かっていて、切羽詰まっていたから躊躇なく飲めた。


「確かに俺もあの液体を鑑定無しでは飲みたくない」


「全部毒瓶かもしれないしな」


「休み時間が終わるな」


「分かった。話はここまでにして教室に戻るか」


 後片付けして、俺と慶は教室に戻り、放課後まで授業を受けた。


ーーー


 俺はクラブ活動をしていないので、放課後になるとさっさと家に帰る。


 教室を出て、いつもの様に駐輪場に行くと自転車が無かった。


「今日は裏山を抜けて学校に来たんだったな」


 道を歩いて帰ると時間が掛かる。朝来た時と同じルートで帰る事にしよう。


 駐輪場から校庭に向かい裏山に入る。


 裏山に入って少し歩く。


 校庭の方からは見えなくなったのを確認してから走り始めた。


「さっさと帰ろ」


 試しに木の枝に飛び乗ってから、他の木に飛び移ろうとしたが、上手くいかず枝が折れて木から落ちる。


 まあ、着地には失敗しないがな。


 再現能力があるからと言って、そう簡単に上手くいかないか。


 再現能力はあくまでも、お手本があればそれを再現して動く事が出来る能力であって、お手本が無ければ唯空間把握能力が少し強化された程度の能力でしかない。


 神槍とは言わないが、お手本があれば力加減やバランスの取り方を直ぐに習得出来る。


 昨日と今日でその収穫があった。昨日と今日の間に慶の動きを神眼で覚える事が出来たからだ。


 小鬼との戦闘の動き、普段からの隙のない状態など、とても勉強になる良いものが見れた。


 これをそのまま再現しても、それは慶に合った動きで俺が真似ても上手くはいかないが、再現能力で俺の体に合った動きとして良いとこ取りをすれば、稽古時間が短縮される。


 そんな事を考え森の中を駆けていると、神眼の気配感知に生き物の反応があった。


「これは犬か? いや犬というよりも狼?」


 日本狼って絶滅したんじゃなかったか?


 まあ、冗談だけど。


 普通この流れから言って十中八九モンスターだろう。


 もしかしたら、外国の狼をペットとして飼っていたのが逃げた。或いは日本狼が実は絶滅していなかったみたいな事が、あり得ないだろうな。


 あれ? 日本のダンジョンで生まれた狼は日本狼とも言えるかもしれない。


 それなら俺は今から日本狼(モンスター)を捕まえに行く。


 神眼の気配感知の効果範囲から出さないように相手に近づく。


 残り20mの距離に入った途端に気配の主がこちらに急速に接近してきた。


 俺はその場で立ち止まり近づくのはやめた。迎え討つ体勢になり相手が来るのを待つ。


 そして、気配の主が俺に飛び掛かってきた。


 気配の主を見ると、やはりモンスターだったので、lvの身体能力に物を言わせ、相手の背後に回り込む。


 キャイーン!!


 そのまま日本狼(モンスター)の首根っこを掴んで地面に押さえつける。


 まずは鑑定。


【種族:逸れレッドウルフ

 性別:メス

 lv: 31

 スキル:噛み付くⅤ 引っ掻くⅢ 嗅覚Ⅱ 

     威嚇Ⅲ(MP300) 火息Ⅰ(MP100/20秒)

 HP:22978/28485

 MP:365/665 】


「捕獲成功。で、この後どうしようか?」


 考えていなかった。


 逸れでlv31と結構やばい奴だから、このまま逃すわけにもいかない。殺してしまうのも折角捕まえたのに勿体ない気がするな。


 しかし、この狼、全然日本狼に似ていない。

 赤い毛並みの狼なんて聞いた事が無かった。


 それを言ったらスライムも小鬼も見た事が無い生き物だったけどな。


 MPを使うモンスターは、終末の使徒レプリカを除けば初めてだな。


 レッドウルフのスキルは基本スキル以外の威嚇と火息の2つがMPを使うスキルだな。


 スキルを使っている所が見たいが、レッドウルフはさっきから怯えるだけで威嚇を使おうともしない。


 おかしいな? 昨日出会った小鬼は、恐れを知らないのか馬鹿の一つ覚えのように繰り返し襲い掛かって来ていたのに、このレッドウルフは唸りもせずに唯怯えているだけだ。


 どうせユニークスキルの所為でダメージはまともに与えられないと思って、少し強めに地面に叩きつけてしまったかもしれない。

 レッドウルフのHPが5000も減ってしまい、実力差が分かってしまい怯えているのかもな。


 小鬼の時は、慶の最後の突き以外は殆どダメージを与えてなかったからな。


 それにもう1つの方の火息のスキルも首根っこを押さえられていては、使ったとしても意味がない事が分かっているから使わないのかもしれなかった。


「lvが倍も離れていたら大丈夫か」


 レッドウルフの首根っこを掴んでいる手を離してやる。





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