トラップボックス
慶は隠し部屋をまだ見つけていない。
少し羨ましいな。俺も宝箱開けたい。
あ!忘れていた。
「慶。隠し部屋を見つけたら気を付けろよ」
「何かあるのか?」
「ああ、俺の所は宝箱が置いてあった」
「おお、宝箱か! アイテムはモンスターからドロップするけど、やはりダンジョンと言えば宝箱だよな!」
「最後まで話を聞け」
「ごめんごめん」
「まず地図のココ。比較的入り口から近いこの隠し部屋には、木製の宝箱があって中にはスクロールが入っていた」
「凄く良いな宝箱。中にスクロールが入っているのか」
「まあ、中身のスクロールはどうでもいい」
今なら俺も嬉しいよ。
あの時はダンジョンを人工物だと思っていたので、宝箱の中身がスクロールでも、特に何とも思わなかった。
高価そうな紙だなと思ったくらいだ。
今なら宝箱の中身がスクロールだったなら、ガッツポーズをして喜んでいるだろうな。
「慶に言っておきたいのは、次のこの隠し部屋の事だ。この隠し部屋にも宝箱があった」
「うん」
「その宝箱はさっきと違って、鉄製の宝箱で開けると毒針が飛んでくる罠が仕掛けてあった」
「え⁉︎ 宝箱に罠があるのか?」
「それがあるんだよ。俺も鉄製の宝箱を開ける前に、木製の宝箱から透視が使えるスキルスクロールを手に入れてなかったら危なかった」
まあ、他にも能力満載のスキルだけどな。透視も使えるから嘘は言ってない。
「光希は透視が使えるのか。俺もスクロールは二回使ったが、特に何かが使えるようになったとか無かったんだぞ」
「それなら何でスクロールが出てきたら、凄く良いんだ?」
「いや、ネットにスクロールで魔法を身に付けたとか言っていたからな。俺が使ったのはハズレだったんじゃないのか?」
「使ったのに効果が出ないか。多分ハズレじゃないと思う。慶が手に入れたスキルが既に身に付けている力だから使えない様に感じるんじゃないのか?」
「既に身に付けているってなんだよ。俺は自前で透視なんて出来ないぞ」
【名前:佐久間 慶
性別:男
年齢:16
職業:学生
lv:23
スキル:身体強化Ⅳ P 3/20(400EP)
剣技 Ⅱ P 8/100(2000EP)
HP:6625/6625
EP:1775/4175 】
「そうだ、例えば剣術とかなら」
「なるほど、確かに剣術とかのスキルなら俺の技量にスキルが追い付くまでは役に立たないスキルか」
「後はそうだな。パッシブ系の身体強化とかじゃないか? lvが簡単に上がっていく低lv帯の頃なら、lvアップのお陰かスキルのお陰か分からないだろうからな。他には耐性系のスキルで何かが起こらないと効果を発揮出来ないスキルの可能性もある」
「考えてみれば、普通に思い付くことばかりだな。何で思いつかなかったんだ?」
「いや、知らんがな。使い方が分からないって事は多分アクティブスキルじゃないな。俺は直ぐに使い方を覚えられた」
「なら、パッシブスキルって事になるか。光希、パッシブスキルってどうやったら分かるんだ」
「パッシブスキルの効果は切りたいと思えば簡単にオンオフを切り替えられるから、その方法なら身体強化みたいなスキルだったら直ぐに違いが分かると思う」
「パッシブなのに切り替えられるのか。試してみよう」
まあ、パッシブスキルは発動を切っても、消費しているEPは帰ってこないけどな。
慶は俺の話を聞いて、目を閉じたり体を動かしたりを繰り返している。
「どうやらスキルの1つは身体強化みたいだ」
「1つしか分からなかったのか?」
「ああ、効果を切り替えてみても分からない」
「なら、さっき言ったように残り1つは耐性系のスキルか、剣術や体術みたいに慶が元々身に付けているスキルの可能性が高い」
「これ以上は調べようが無いみたいだな」
「鑑定や解析系のスキルを持っていたら簡単そうなんだけどな」
慶には悪いが俺が鑑定を使える事は秘密だ。
鑑定が使える事がバレるのは、管理しているダンジョンの事がバレるよりも不味い。
鑑定は相手のステータスを見れたり、ダンジョンアイテムを鑑定出来たりと有用過ぎて、バレると国の監視下に入れられるのは避けられないだろう。
例え慶だとしても教えるのはリスクが冒したくなかった。
「鑑定系スキル。ファンタジーだと定番だよな」
「それよりも慶。宝箱の事に話を戻すぞ」
「OK。確か宝箱に罠が仕掛けてあるって話だったよな」
「そうだ。1つ目の木製の宝箱は罠が無く、2つ目の鉄製の宝箱には開けると毒針が飛んでくる罠が仕掛けられていた。
宝箱はランクによって罠の有無や難易度があるのかもしれない」
「木製と鉄製の違いで宝箱のランクが違うって事か。偶々って可能性もあるが、確かに俺もそう思うな」
「まあ、俺は透視が使えるから、あんまり関係ないけど。慶はそういうスキル持っていないから、宝箱見つけても浮かれずに気をつけた方が良い」
「分かった。まあ、ある程度の罠なら対応出来ると思うけど、宝箱のランクによっては気をつける。
そうだ、光希」
「ん」
「下の階層の地図は無いのか?」
「見て分かる通り、階段はもう見つけているが、まだ下に降りてない。俺はこういう時には地図を完成させてから、次に行くタイプだからな」
「ああ、確かに光希ってそんな感じだよな。それなら、この3つ目の広い隠し部屋には宝箱があったのか?」
やはり、それを聞いてくるよな。




