ダンジョン発見!(入れない)
「で、何処に行こうか?光希」
「何処って、この辺俺の家から結構離れていて地理とか分からないんだけど?」
慶の方がこの近所には詳しいから、行き場所を決めるなら慶の方だろ、普通。
「だよな。俺の近所で見つかったダンジョンと言えば、近くの交番裏で見つかったやつくらいかな」
「交番裏か。絶対に未発見ダンジョンじゃないよな。俺の近所に出来たダンジョンも駅前にあって直ぐに警察官に固められていたからな」
「そっか。街中で見つけるのは不可能に近いよな。手っ取り早く山にでも登ってみるか?」
まあ、そう言う結論に至るか。
街中や住宅街なんて既に警察が探して見つけているものが殆どだろう。
しかし警察でも捜索が難しい山や森なら見つける事が出来るかもしれない。
「山ってあそこに見えるあの山か?」
俺が指を指して慶に聞くと。
「そう、あの山だ。この辺で一番大きな山だから、まだ見つかってないダンジョンもあると思う」
「良いけど、あの山ってあんまり行った事ないから地図が殆ど完成してないんだよな」
以前にあの山に挑戦した事があったが、広過ぎる上に家からも遠かったので、地図製作は4割ぐらい進めて、途中でやめた。
あの山は一本しか無いけど一応山道もあるから、地図が無くても別に困らないかと思って簡単に諦めた記憶がある。
「地図? ああ、光希が森とかに入る時、描いているって言っていたあれか」
「そう言えば、慶にはまだ見せた事がなかったな。コレがあの山の地図だ」
慶に昔描いた地図を渡す。
地図は俺の家から中心に、山の4割程を探索したので、まだ頂上にも辿り着いていない。
「へえ~結構な正確な地図を作っているんだな。今日はコレを見ながら探索してみるか」
「まあ、最初はその方が良いかもな」
細かい所はもう殆ど覚えていないが、それでも行ったことのある場所の方が探し易い筈だ。
ダンジョンが出現していれば、多少地形も変わるのも駅前のダンジョンを見ていれば分かるからね。
「そうと決まれば、早速山までサイクリングするぞ」
「早く行かないと日がくれるしな」
一応ライトも持って来ているが、日が暮れた山を動き回るのは危険だからな。
俺は慶と一緒に山へ向かって自転車を漕ぎ始める。
俺は慶の後ろをついて行きながら、慶の事について考える。
慶の現在のlvは23だ。
たった10日でlv23になるには、日帰りで行ける場所に慶が通っている未発見ダンジョンがあるって事だ。
でも、慶の屋敷は別に人里離れた場所の森の中にある訳ではない。
普通に住宅街の端にあるので、近くにダンジョンが出現していれば警察が見つけているだろう。
例え慶が先に見つけたとしても、隠し通すのは難しい。
でも、実際に23までlvが上がっている上、スキルまで所持していた。
10日未満でlv23になるには、ダンジョン前に泊まり込みをするか、家からかなり近い場所にダンジョンがないと不可能だと思う。
しかし、慶の家はちゃんとした理由が無い限り、外泊なんて許されない筈、もし仮に慶が嘘をついてダンジョン前に泊まろうとしても直ぐにバレる事になるだろう。
基本、慶や美月、咲良が何処かに泊まる時にはユリさんもセットで付いてくるからな。
中学校の修学旅行にもついてきたと聞いた時には流石に少し引いてしまった。
俺の家に3人で遊びに来た時も、3人が家に泊まる事になったら、いつの間にかユリさんも一緒に泊まる事になっていたからな。
まあ、別にユリさんも泊まっていっても良いんだけどさ。
その事から、あと考えられる場所と言えば、あの馬鹿デカい佐久間家の屋敷の中くらいしか思いつかない。
そう考えて屋敷の敷地内にダンジョンがあると思っていた俺は、今日屋敷内に招かれた時に神眼の空間把握を使っていたが、発見する事は出来なかった。
空間把握は半径15mと範囲が狭いので見付けられないのもしょうがないけどな。
それにダンジョンが密閉された場所にあったら、そもそも空間把握では見つける事が出来ないからな。
本当は千里眼を使って調べたかったけど、佐久間家の屋敷には慶も含めてリアル超人が沢山居るからな。
いきなり「視線を感じた!」みたいな事を言われるかもしれない。
リアルで視線や気配、殺気が分かるって何なんだよ。
俺も視線や気配は何となく分かるけど、殺気って何だ。もう漫画の世界の領域じゃんと思っていた。
今の世界ならスキルで殺気感知とかも習得出来るかもしれないけど。
自前でそう言うスキルじみた事が出来るなんて、本来のシステムならEPを消費して習得する能力の筈なのにな。
そんな事言ったら俺もスキル無しで神槍レベルになろうと日々努力しているけどな。
確認は取れていないけど、俺は十中八九佐久間家の敷地内にダンジョンへの入り口があると思っている。
そのダンジョンを慶だけが知っているのか、それとも佐久間家全体で知っているのかは分からない。
今日慶がダンジョンを探しに行こうと言った事を踏まえると、佐久間家全体が知っているダンジョンの可能性が高いな。
だから慶は、俺と同じような誰も知らない外部のダンジョンを探しに行こうとしているんだろう。
俺も予備として他のダンジョンの場所を知っておきたいから、慶の誘いは渡りに舟だった。
そうした事を考えながら、自転車を走らせていると山の麓に到着した。




