喉が渇きます
鑑定して自分の状態が今どうなっているのか確認するとしよう。
未だ赤い視界を動かし自分の体を鑑定してみる。
【名前:佐々木光希
性別:男
年齢:16
職業:学生
lv:24
スキル:鑑定偽装Ⅹ P
振動魔法Ⅱ A 7/100(10kHz、1/10EP)
エクストラスキル:天眼 AP (10000EP)
HP: 896/7950
EP: 426/5428+5000 】
HPがかなり減っているみたいだな。単純計算でも普通の人なら70回は死ねる。
それにしても思ったよりも大丈夫そうだった。てっきり即死だと思ったんだがな。
まさか生きているとは思っていなかった。瀕死なんだけど。
でも、普通あのスピードで迫る突きをくらったら、身体を貫かれて致命傷だと思うんけどな。
実際には突きをくらった部分の服は破れているが、素肌は傷一つ付いていなかった。
その代わりと言ってはなんだけど、他の箇所はボロボロだった。
巨大スライムの方を見てみるが、王座の場所から動く気配は無い。
多分スライムとしての特性が消えていないのは本当なんだろう。
カウンター型としての射程範囲が伸びて、巨大スライムの一定範囲に近づいたら攻撃が開始されるって事なんだろうな。
俺の場合、一撃でその範囲外に出れたから追撃を逃れる事が出来たみたいだ。
それにしても、あれがエクストラスキルの神槍か。
スライムのlvが高いので突きのスピードは速かったが、それ以前に同じlvだったとしても、あの神槍を避ける自信は無かった。
天眼で突きの軌道を見ただけで分かる。
練度が違い過ぎる。
身のこなしによっては絶望的なlvの差でも、ひっくり返す事が出来るのか? あの一撃を見てよく分かった。
あの領域の相手には、lv差があろうとも正面から挑むのは愚の骨頂だ。
これは正面からだったらの話で、別の土俵に持っていけたら勝負になるかもしれない。
やはりlv制だとしても、それなりの力量が無いと折角のlvで上がった肉体性能を活かせないって事か。
これからも天眼での稽古は果てしないな。
まあ、そのこれからを作る為にも、もう現実逃避をやめて真面目に今の状況を打開しないとな。
鑑定した時に気付いたが、俺は今、天眼の空間把握能力と気配察知を発動してない。
多分、攻撃を受けた時のショックで発動が切れたんだと思う。
だから、今の自分の状況も曖昧でどういう状態なのか理解出来ていなかった。
気づいた時に直ぐに発動をし直さなかったのは、能力を発動する事が敵対行為だと、巨大スライムに受け取られ攻撃される可能性もあるからだ。
今の状態でもう一度攻撃を食らったら、見ての通り簡単に死んでしまう。
しかし、このままではどの道死んでしまう。
ここは思い切って能力を発動してみて、それで死んでしまったら、それはそれでしょうがないと納得しよう。
ふぅ~、天眼発動!
巨大スライムには動きがない。
スキルを発動するだけで敵対行為になる訳ではないみたいだな。
それよりも、うわ~、なんか見てはいけないものを見てしまった感覚だ。
天眼の空間把握能力なら筋肉の動きまで見れるから凄いと思っていたが、今は逆に見える事でグロ映像を見せられている気分だった。いや自分の体なんですけどね。
筋肉はズタズタ、いや肉がズタズタな方が分かりやすいか。
でも見た感じ動けない程でも無いから、動けないのなら他の所に問題が有るのか。
今の状態の天眼では、身体を詳しく見る事が出来ない。
銀の宝箱の罠を開ける前に見た時と同じ様に、空間把握能力の効果範囲を絞り、代わりに能力の出力を上昇させる。
よし、これで自分の体の細かい所まで見る事が出来る。
かなり体は損傷しているようだけど、筋肉はまだ大丈夫そうだ。
内臓も問題無いな。酷く傷付いている様には見えない。
勿論、頭も大丈夫だ。頭蓋骨が割れて出血しているが見た目程酷くはない。
視界が赤いのは、この血が目に入ってきているからか。
問題は骨と神経だ。
背中を中心にして骨と神経がボロボロになっていた。
傷つき方からしてスライムのエクストラスキル神槍を受けた後に、その神槍に吹き飛ばされた勢いで壁に背中から体を強く打ち付けたのが原因だろう。
その代わり、胸に受けた神槍の攻撃は何故か全くの無傷だった。
骨は砕けているが、神経は辛うじて繋がっているみたいだ。
でも、体に力が入らない。
どうすればいい?
「そう言えば、あれがあったな」
手が無い訳じゃない。可能性の話なら一つ思い付いた。
マジックポーチの中には、まだ使ったことの無い回復ポーションと体力ポーションがドロップした物が結構あった筈だ。
どのくらいの効果があるか分からないが、これを飲む事が出来れば希望が見えてくるな。




