協力者(仮)
う~ん。他に佐久間家内で俺が知っている人なんていないんだが?
「なあ、慶」
「なんだ?」
「いや、これからどうしようかと思ってな」
「何が?」
「何がって、この状態のまま家に帰る気なのか?」
そう聞かれた慶は自分達の格好を見て、何が言いたいのかに気づく。
「ああ、成程な。大丈夫だ。さっきユリに連絡しといたから問題ない」
俺に相談もなしに連絡とっていたのか。
いや、それよりもユリさんに連絡を取ったという事はこの状態を見られるという事だよな。
「ユリさんにバレても大丈夫なのか?」
「大丈夫大丈夫。ユリならある程度の事は見逃しくれる。
ユリには今日もダンジョン外に出たモンスターを狩りに行くって伝えるから、最悪父さん達にバラされても問題無いんだよ」
なる程、慶もちゃんと考えていたのか。
ある程度とは、危険がそんなに無い事ならという事かな?
不良を相手にする事は別段咎められたりはしていない様だったから、普通のダンジョン外モンスター程度なら大丈夫という判断なのかもしれない。
慶が山で小鬼を倒したのは佐久間家にも伝わっている。
だから、ダンジョン外のモンスターを倒しに行くくらいは伝えていたとしても大丈夫そうだが、そういう事は事前に言っておいてほしかった。
まあ、ダンジョンが出現してから、俺とばかり行動していたからな。
既に感付かれつつあったと思うので、何かそれらしい言い訳を考えておかないとは、と考えていた。
慶がダンジョンについて疑いを持たれる前に、そう言ってくれたのは助かったか。
「そういう事は先に言っておいてほしいんだけど」
「悪い、まさか今日こんな事になるとは思っていなかったからな。ダンジョンからの帰りにでも話そうとは思っていたんだけど、早速この言い訳をユリに使う事になるとはね」
「全くだ」
まあ、ユリさんには既に俺がレベルアップしている事が、慶曰く前回会った時点でバレてしまっているらしいので、ダンジョンの事さえ秘密にしておけば特に問題はないだろう。
あの時はまだ天眼で、以前の俺の再現が不完全で動きに違和感があったからな。
今は神眼になった事で再現度が上がり、慶から見ても違和感なく動けるようになった。ユリさん以外の佐久間超人に出会ったとしてもバレはしないだろう。
「ユリさん以外には言っていないんだよな?」
「ああ、勿論。ユリには協力者になってもらって、俺達が勝手にモンスターを狩っている事を爺さん達に誤魔化してもらうつもりだ」
「ダンジョンの事は言わないんだな?」
まあ、言ってもらっても困るけどな。
俺のスライムダンジョンは、誰にも教えていないので、万が一の時にもダンジョンの場所がバレないが、それでもダンジョン探索をしている事が皐月さんから母さんにでも伝わったら、絶対に外出制限をされるだろう。
もしそうなったら、家族が寝ている夜の間くらいにしか、ダンジョンに行く時間がなくなってしまう。
今後2階層以降に挑戦しようと思っている俺には夜の間だけでは短過ぎる。
やはりバレるのは勘弁願いたかった。
「ダンジョンに入っているなんて、ユリに言ったら終わりだ。ダンジョン外のモンスターなら、普通に暮らしていても出会ってしまうかもしれない危険だけど、ダンジョンの様に、危険度が不確かな場所に行くなんて言ったら、多分速攻で祖父さんにバラされる」
「マジか。絶対バレないようにしよ」
出来るだけユリさんとの接触は最低限にしよう。
ユリさんの笑えない冗談も受けたくはないしな。




