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「で、反省はしているのか?」


 凛の話を聞き終わった俺がそう聞くと、凛は深々と頭を下げた。


「はい。すいませんでした」


 反省はしているようだな。


 まあ、下手すれば美月や咲良が死んでいたかもしれないんだから当たり前か。


 逆にここで反省の色が無かったら、多分俺はこのダンジョンを放棄して、その後凛とは一切関わる事は無かったと思う。


 普通に山田弟並の足手纏いになるわ。縁切り上等だ。


 さて、ミスリルの指輪回収は、後でいいか。

 ここには慶や春も居るからな。


 凛が本当に反省しているなら素直に渡すだろう。


「なら、この話はここで終わりだ」


 春が納得できないという目で見てくるが、流石にいつまでも気絶した美月と咲良をこんな場所で寝かせておく訳にはいかないだろう。

 

 まあ、本当はこの件をさっさと片づけて、明日のスライムダンジョン2階層についてだけ考えていたいだけだった。


 やっと一人でゆっくりと自分だけのダンジョンを探索する事ができる。


「美月達の事もあるから、今日はもう帰ろうか」


「お姉ちゃん、私レベル上げしたいんだけど」


 出来れば空気読んでほしい。


 これは自分の欲求を優先して、あえて空気を読んでいないんだろうな。


 いつもなら、それでも別にいいと思って送り出していたかもしれない。


 しかし、今の春をダンジョンに一人で向かわせたら、多分だがトラップボックスのある隠し部屋に行きそうな気がする。 


 どうにかして、中身を取り出そうとしそうだ。


 そうなると、十中八九失敗して下の階層に落とされ遭難するだろう。


 もしそうなった場合でも時間を掛ければ上の階層に辿り着いてダンジョンを出る事も出来るとは思うが、数日はダンジョンの中を彷徨うことになる。 

 今の春の身体能力ではな。


 やはり「駄目だ。暫くは俺と慶以外が1人でダンジョンに入るのは、禁止にする」


「え~~」


「もし破れば、このウルフダンジョンは国に引き渡して終わりにする」


「ちょっと、お姉ちゃん! それは!」


 横暴じゃないか。と春が言う前に話を続ける。


「元々、このダンジョンは俺が見つけて、ダンジョン外に出たモンスターも俺が全て狩った」


 全て狩ったと言った時に、凛がこちらを見てきたが余計なことは喋るなと視線で伝える。

 

 それに元々は俺一人で全て狩る予定だった。実際に問題なく1人でも達成できた事だ。


 あの時、凛を参加させたのは、凛が万が一にも死なない為であり、手伝ってもらう必要性は無かった。


 手伝ってもらっておいて何様だって話だがな。


 今の凛には今回の負い目もあり、視線で訴えてきてはいても口を出す事は出来ない。


 もし、あとで何か言ってきても今考えていた事をそのまま言えば、凛も納得せざるを得ないだろう。


「だからって訳じゃないが、俺が見つけて隠蔽した、このダンジョンで死人は出したくない。罪悪感なんて感じたくないからな」


 鬱展開は好きじゃないんだ。


「誰もお姉ちゃんの所為だなんて思わないと思うけど」


 いや、でも大抵の物語では最初はそんな事を言っておいて、事が起こったら「お前が見つけてきたから」「あの時、警察に言うべきだった」と責任を全て見つけてきた相手に押しつけているよな?


 その後、なんだかんだあって仲直りする展開が結構あるが、普通そんな奴と仲直りとか無理だ。


 そんな風に春や慶達の事を思いたくはないので、そんな事を言われても信じない。


「これは決定事項だ。簡単な約束、別に守る事が難しい話ではないだろ」


「まあ、うん」


 納得とは違うが、春はしぶしぶとだが頷いた。

 

 まあ、春からして見れば、完全なとばっちりの連帯責任という感じだからな。

 原因を作った3人と春が仲違いしなければいいがな。


 幸いにも美月と咲良は春とは仲良しだから、ギクシャクしたりはしないと思う。

 しかし、春は凛とほぼほぼ初対面だからな。面倒なことにならないといいが。


 俺が目を光らせないといけないのか。


 元々俺は自分だけが自由にダンジョン探索を出来れば良いと思っていた。


 色々考えたり面倒を見たりと、何で俺がしないといけないんだ?

 

 まあ、世話を焼かずに後々に後悔するのは俺になるからなんだけどな。




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― 新着の感想 ―
[一言] 「さて、ミスリルの指輪回収は、後でいいか。ここには慶や春も居るからな」 他に人がいろうが、適当な理由をつけて、貸しておいた指輪、。返してもらうと言えば良いだけです。
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