お家に帰ろう
帰る準備を終えた。
念の為、本とスクロール、瓶はリュックの方ではなく、サブザックに入れておこう。
森を出る為、歩き始める。
「もう地図が無くてもダンジョンまで行けそうだな」
何回も往復したので、ある程度道を覚えてしまった。
森を抜けて、自転車の停めてある場所に行く。
自転車の荷台にテントを縛り付け、カゴにゴミ袋とサブザックを入れる。
自転車に乗り自宅に向けて自転車を漕いでいく。
結局lv上げで天眼さんの分のEPは稼げなかったな。
天眼さんが使える様になるまでは、ダンジョンの下の階層に行く様な危険は冒したくない。と思っているから、経験値効率が悪いのかな?
まあ、それもしょうがない。
今は兎に角簡単で安全に倒す事のできるスライムで質よりも数で賄っていく方がいい。
2階層がどうなっているのかも分からない状況で天眼さんも無しに行くのは無謀だ。
同じ理由で1階層の残りの隠し部屋にも行かない。
どの道今出来る事は、天眼さんを復活させる為の1階層でのlv上げぐらいだ。
そうだ。家に帰るならもうネットでいろいろと調べてもみてもいいか。
今までは、もしもの時の為の言い訳でネットを一度も開いていなかったが、家に帰った状態ではもうダンジョンを知らなかったでは言い訳にならないだろうからな。
家に帰ったら、完全に開き直って他人には絶対にこの森のダンジョンの事は隠し通していこう。
そんな事を考えているうちに家に到着した。
自転車を停めてから、玄関の鍵を開けて家に入る。
ガチャ「ただいま~」
帰って来て挨拶をすると、2階からドタドタと走る音がして、人が降りて来た。
「お帰りー! お姉ーちゃん!」
2階から降りて来たのは、俺の妹である佐々木春だった。
現在14歳の二つ下の中学生だ。そして今年は受験生。
それと、もちろん俺の性別はステータス通り男で間違いない。
昔から近所の人に姉妹と間違えられてしまうくらい女顔をしていて、その事で春がふざけて俺をお姉ちゃんと呼ぶ様になってしまい、そのままそれが定着してしまったという訳だ。
「俺は兄なんだが」
「そんな事よりも聞いてお姉ちゃん!」
ここ3年、春から兄と呼ばれた事が無かったりする。
もう通例みたいなもので口で言う程、俺も気にしていないが他人に誤解される事もあるので、一応そう言っているだけだ。
「はあ、それで聞いてって何だよ?」
まあ、ダンジョンの事だろうけど。
「へぇ~お姉ちゃん知らないんだ、ネットとかは見なかったの?」
「森にキャンプしに行っていたんだぞ。なんで家でも出来るネットをしなくちゃいけないんだよ」
春は俺が何も知らないと知ると、途端に顔をニヤニヤとしだした。
「じゃあ、何も知らないんだ~!」
いや、多分知ってる。
「だから、何がだよ」
仮眠しか取っていないから眠いし、顔がムカつくので無視をして階段を上がろうとすると。
「ちょっと待って」
話を終わらせようとした事をすぐさま察知した春は俺のリュックを掴まみ階段を上がらせてくれない。
「ひっ引っ張るなって、落ちる! わかったわかったよ、話聞いてやるからまずはその手を離せ」
俺は春の手がリュックから離れたので、春の方を向き直って階段に座る。
「今、本当に眠いから手短に頼む」
「も~まあいいか、実はお姉ちゃんがキャンプに行っているうちに、ななななんと! 世界中でダンジョンが出現しました!!!」
「あーそう」
「お姉ちゃん反応薄くない? いつものお姉ちゃんならワクワク止まらない!みたい感じに家を飛び出して行くのに」
そうだった。いつもの俺ならテンション上がる話なのに無反応はおかしい。何か言い訳しないと。
「眠いって言っているだろ。そんな冗談に付き合ってやれる程、この睡魔は弱くないんだ」
今度こそ、階段を上がり自分の部屋に入る。
その間も春は嘘じゃないとか文句を言ってきていたが無視を決め込んだ。
悪いな春、たとえお前でも俺の見つけたダンジョンの事がバレる訳にはいかないんだ。
荷物を床に降ろし、ゴミ袋をゴミ箱に捨ててから、着替えを用意して脱衣所に行く。
脱衣所に着くまでに、春には出会わなかった。
テレビの音が聴こえていたから、多分リビングに居るんだろう。拗ねていないといいけどな。
後で何かお詫びした方が良いかもな。
まる二日間もシャワーを浴びていなかったので、体が少しベタつくな。
一応毎日体を濡らしたタオルで拭いていたんだけどな。
シャワーを浴びて体を拭いている時、脱衣所の鏡を見て改めて自分の顔が女顔なんだなと思い凹みながら、着替えを済ませて部屋に戻る。
ネットでダンジョンの事やその事に対する国や一般人の考えを知っておきたかったが、流石に睡眠が必要みたいだ。
起きてからいろいろ調べてみる事にしよう。




