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16話 根は真面目

ごぶさたです。おまたせした方々、申し訳ありません。それでは続きをどうぞ。

コンビニのレジをパートのおばさんの弥生塚さんに任せて、俺はコンビニの2階に上がり、部屋に置いてある業務用のパソコンで今月の売り上げのチェックを行っていた。店内は弥生塚さん一人になるが彼女は俺が働く前からパートをやっている大ベテラン。一人でもたいていのことは安心して任せられるし、何かあれば呼んでくれるだろう。


目の前のパソコンの画面には表といくつもの数字が表示されていた。この世界に戻ってきた当時はパソコンの操作なんて身についてないので動かせず操作にもなかなか馴れなかったが、今では手慣れたものだった。


まあ、働きはじめてから美坂にかなり教えてもらったおかげではある。


今月の売り上げは目標を達成しそうで一安心だ。予想はできていてもホッとする。

この店は恒常的に一定数の探索者がやってくるので、品物の種類と数を大きく間違えなければ赤字になることはないので売上が問題になったことはないのだが。それに国からの補助金もあるし、ライバル店もない。そう言った面では立地条件にも恵まれているのだろう。

まあ、それ以外には問題が山積みではあるのだが。


明日、美坂がやって来た時に今月の売り上げを共有しておくか、そう思い、再び数値をチェックした後でパソコンを閉じる。


長時間、座ったままの体勢だったので肩と腰に疲れを感じる。その場で両腕を上に伸ばして背伸びをした。


うーん、最近あんまり動いていないから体が鈍っていないだろうな。

ちょっとは運動でもした方がいいだろうか。モンスターが出てくることもあるしな。



2階の作業場から1階へと降りて、店の中へと向かう。

中に入りぐるりと見渡すと、客がまばらにいた。イートインコーナーは相変わらず人がそこそこ座っている。まあ、いつもの常連連中だろう。


次にレジの方に目をやると、弥生塚さんが立っていた。俺は彼女の方に向かい声をかける。


「レジ、手伝いましょうか?」

「ああ、店長。今は大丈夫ですよ、お客さんの数も少ないので。店長は棚を商品を見て回ってください。」


俺は了解、と返事を返して、棚の方に向かった。

端から順番に棚の商品を確認し、崩れているものを整えていく。


「お兄さん、こんにちわ。あいかわらず働いてますね。」


しゃがんで棚の下側を見ていると頭の上から声をかけられる。顔を上げると、知った顔。横には止水が立っていた。俺は立ち上がり、止水に軽く返事を返す。


「おう。」


いつものもう一人の声が聞こえないので、周りを見渡して探す。

見当たらないことを確認して、止水に問いかけた。


「今日は一人なのか?」

「はい、ちょっと一人でダンジョンに行こうと思って」

「一人で行くのか?」

「はい! そんなに深く潜らなければ一人でも大丈夫ですよ」


そんなものかと思う。

そもそもこの世界のダンジョンの中に入ったことはないので感覚が分からない。あっちの世界ではイヤというほど入ったが。苦い記憶を思い出しそうになり、頭を振って追い出す。


「どうしました?」

「いや、気にするな」

「そうですか……、まあいいです。それで、ちょっと一人で特訓したいと思いまして」

「特訓?」

「はい。はじめてお兄さんに会った時」


そう言われて、俺は止水と貴崎の二人にレジで絡まれた時を思い出す。


「ああ、あの絡まれた時な」


止水はあはは、と苦笑いした後に再び謝る。


「あの時はごめんなさいでした。最近、パーティーのみんなとの連携が上手くいっていなくて。それで、ちょうどあの時、ダンジョンでモンスターと戦っているときにちょっと大きな失敗しちゃって……。ミナとわ私、ちょっと機嫌が悪くてムシャクシャしていたんです」


俺はうんうんと頷くと、それで、と続けた。


「それで俺に当たったと」

「うっ! ……そ、そうです、ごめんなさい」

「ちょうど目の前にいた弱者の俺にぶつけたと」

「うぅ、まあその通りなんですけど、ちょっと私を虐めすぎでは……。それに弱者というのはお兄さんのような人のことではないと思います」

「ははは、冗談だ。まあ、あの時のことはほんとうに気にしてないさ。クレームや文句を言われるのはよくあることだしな」

「その理由もどうかと思いますが」


ジト目で見てくる止水を笑って流す。

俺は気にせずに話を戻す。


「それで特訓か」

「はい! 始めはミナと訓練していたんですけど、この前のお兄さんの動きを見てもう少しで何か掴めそうなんで、特訓中なんです」


まあ、最初の印象とは違って、いろいろ話してみると根は真面目なんだろうと思う。

探索者でもない俺が言うことではないが、注意だけしておいた。


「まあ、なんにしても気を付けろよ」

「私、上級探索者なんで大丈夫ですよ。でも、ありがとうございます。気を付けますね」


そう言って、ダンジョンに持っていく荷物だろうか、背中に背負って店から出ていく止水を見送った。


「探索者ってみんな可愛いわね」


後ろからかけられた声に振り向くと、弥生塚さんが後ろに立っていて、先ほどまでの俺と同じように止水を見送っていた。


「まあ、たしかにきれいな人が多いですね」

「前から常連さんにもきれいな人が多いなって思っていたのよね。……ダンジョンに入るときれいになれるのかしら」


美容は女性にとっては最重要なんだろう。私も入ろうかしら、なんて言い出しそうな弥生塚さんだったが。


「まあ、でも危なそうだし、誰でもできるわけじゃなさそうね」


やっぱり止めることにしたようだ。……もし本当に効果があるのなら、そのうちダンジョン美容法やダンジョン美容ツアーとか出るんじゃないだろうか。そんな意味のないことを考えつつも。


「確かにそうですね」

「でも、あの子は大丈夫かしら。最近、ダンジョン内での行方不明が多いんですって」

「ああ見えて強いらしいですよ」

「そうなのね」


二人で遠くの方で、ダンジョンに向かって歩いてく止水を見ていたのだった。

先々週末から突発的な本業炎上の休日返上、精神的に疲れてました。皆さん、コロナもあるので体調管理は心がけてくださいね。今週はもう一回投稿できると思います。


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― 新着の感想 ―
[一言] 続きを待ってました。
[一言] 待ってました!
[一言] 日常が主みたい(異常事態が発生して冒険者に戻るのなら別)なので、ダンジョン近くならではの「特殊な何か」を期待したいところ。 魔法やらスキルが存在するなら、それを使った万引きや事件とか。 人…
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