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13話 日常、そして

それでは続きをどうぞ。

「あ、お兄さん。お疲れ様です」

「今日もやっぱりいるわね」


陳列棚に並べられた品物のチェックをしていると横から声をかけられる。

俺は声のした方を見ると、止水と貴崎の二人が立っていた。


あの日から毎日とは言わないが数日に一回、多い時は隔日でこのコンビニにやってくる。

はじめは二人とも、いつも働いているという俺の言葉をまったく信じていなかったようで、念のために俺を探すといった様子だったが、何度か来て以降、いつも俺がいるということが分かったのか、今日のように俺を見つけては話をしにやって来る。


今思うと、いない日はどうするつもりだったのだろうか……。

ちなみに、いつ来ても店にいることが分かったときは二人とも驚いたような呆れたような顔をしていたのが印象的だった。

横にいた美坂は、そんな二人を見た後、俺を見て社畜ですねと大笑いしていた。あいつは仕事の量を増やしておくことにしよう、店長権限で。すぐに思い返す。

いや、止めておこう、訴えられそうだ……。笑顔で。


そんな二人はというと、初めのうちは


「空いている時間はいつなの?」「いつですか?」


と聞いてきてくるので、俺は常套句のように、


「時間はないな」


と返していたのだが、いつの間にか、やってきて他愛のない話をした後、買い物をして出て行くだけになっていた。

周りの客は、有名人らしい二人が来ると、初めは驚いていたが、だんだん慣れてきたようで(とくに常連客ほど早く)、今では気にもされていない。


中には、「捕まらないようにな、店長」と笑いながら言ってくる奴もいた。おい!


常連客、とくにイートインスペースで飲み食いしている奴ら、とは普通に挨拶をするようになっていた。この二人も普通に返しているし。

何か、これで嬢ちゃんらも常連客の一員だなと言われ、二人は喜んでいた。もしかして、常連客って固定メンバーがいるのか?


二人に最近は聞かれないが、そもそも改まって時間を取らずに話しているときに聞けば? と思う。

まあ、十中八九、弓の腕のことなのだから、聞かれても素直に答える訳ではないのだけれど。



昼下がり、店内に客はおらず、パートの主婦のお姉さん(俺の母親ぐらいの年齢だが……)である奈月さんに陳列棚のチェックを任せて、俺はレジに立ってぼーっとしていた(いつもは俺が棚のチェックをやっている。今日はたまたまだ)。


入口の自動ドアが開く。俺はそちらに顔を向けた後、いらっしゃいませ、と挨拶をする。

入ってきたのは、最近よく見る女の子が一人。貴崎だけで、止水はいないようだった。


俺の前までやって来た貴崎に声をかける。


「おう、いらっしゃい。今日は貴崎だけなのか?」

「ええ、そうよ。もしかしてサナもいっしょが良かった? ねえ、残念? ねえ?」


何を勘違いしたのか、ニヤニヤと笑う貴崎。

俺は冷静に返す。まあ、焦ると更にからかわれるだけだろうしな。


「いや、単純にお前らはセットものだと思っていたからな」


貴崎はムッとした顔をする。


「ちょっと何よそれ。そんな二つ一セットみたいな商品じゃないわよ。……まあ、大概一緒にいるけどね。サナとは幼馴染だし」

「へえ、そうなのか」

「ええ、そうよ。羨ましいでしょ」


そう言って、こちらを横目で見てくる。

良いかと言われても良く分からんので、適当に返す。


「そうだなー」

「なによその返事。もう、面白くないわね」


俺の返事はかなりお気には召さなかったみたいだ。

客も来ないし、もう少し相手をしてやるか。

向こうで、微笑ましそうにこっちを見ているおばさん、いやお姉さんがすごく気になるけれど。


「で、その止水はどうしたんだ」

「ん?まあ、最近、たまに一人で鍛錬をしに出ているみたい」

「あー、大丈夫なのか? その一人で」


またこっちをニヤニヤした顔で見ながら。


「お、心配してくれてるの? まあ大丈夫よ。あの子、ああ見えても上級探索者よ。そこらの探索者には負けないわ。それなりに経験もあるからそんなに危ないところには近づかないでしょうしね」

「良く知っている貴崎が言うんならそんなんだろうな」


そうは言っても油断は禁物だろう。今度会ったら、気をつけろぐらいは言っておいてやるか。


「おっと、あまり邪魔するのも悪いわね。そろそろ私も必要なもの買って行くことにするわ」


そう言って、棚の方に向かって目的のものをとって帰ってくる。彼女は会計をした後、


「それじゃあね。お兄さん」


そう言って手を振ると店から出て行った。

そこへ奈月さんがすすーっと寄ってくる。


「もう、ユウくん、どこであんな子を捕まえたの? あっ、このことは美坂ちゃんは知ってるの? ねえ、二股はダメよ、二股は」


そう言って肩をバシバシ叩かれる俺。

さて、おもしろそうなネタを見つけたから逃がさんと言わんばかりの奈月さんからどうやって逃げ出そうか。俺は考えを巡らせていた。


この時、俺はコンビニの外から中を見ていた三人から睨みつけられていたことに気が付いていなかった。

今週は水曜日と金曜日に(間に合えば土曜日も)投稿予定です。時間が取れれば、もう少し投稿したいと思います。よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] はじめまして 三羽カラスに絡まれそうですね( ̄□ ̄;)!! キャラクターで暴言含まれたら不快かもしれないので最近は変えて感想を書いてます!
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