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10話 店長ですから

どうぞ

どうやら、モンスターはまだ倒されず、かなりこのコンビニに近づいたみたいで、時々、その全体の姿が見えた。


成人男性の背丈の二倍はあるそれを、止水はキマイラとか言っていたか。神話に出てくるんだったよな、たしか。


「なあ、美坂。キマイラってどんなだ?」


レジ前で立っていた彼女はこちらをチラッと顔を向け、訝しげに見た後。


「あんなでしょ」


と、店の外を見ながらそう言う。


「いやいや、俺が言いたいのは神話に出てくる方だ」


そう言うと彼女は納得した様子で。


「てっきり目が見えなくなったのかと心配しましたよ~。神話のですか? 見たことないですけど、頭が獅子と山羊で、尻尾が蛇でしたっけ? まさしく、あれはキマイラですよね」


そんな軽口を叩く美坂から視線を外し、店の外にやる。

たしかに外に見えるモンスターは今聞いたキマイラそのものだった。


そのモンスターの前、探索者の先頭に立った貴崎が大きな剣を振るうのが見えた。


危なくは無さそうだか、かといって、決定打も決められる状況ではなさそうだった。


周りの支援が上手くいっていないんだろうか。

止水も弓でサポートしているが、パーティーとは勝手が違うんだろう。他の魔法や矢に邪魔されて上手くいっていないようだった。


うーん、あの位置であれば、店の前からでも届くか?


出て行こうとする俺に美坂が声をかける。


「店長、どこ行くんですか?」


「ちょっと見てくる」


「はしゃいで怪我しないでくださいよ」


俺は背中越しに手を振り、店の外に向かった。



コンビニの外に出て、少し先で繰り広げられる戦いにじっと目を向ける。


その時、止水がこちらに目を向けたので、軽く手を振る。


遠目ではあるが、びきっと、彼女の額に怒りの筋が浮かんだような気がした。


すると、さっとその場から抜けて、こちらに走ってきた。それはもうムッとした顔で。


「おにいさん! 何してるんですか!」


怒られる俺。


「ちょっと様子を見にな」


「様子を見に、じゃないですよ。さっさと逃げてください!」


俺はまあまあと手で抑えるようなジェスチャーをしながら。


「なかなか連携が上手くいってないみたいだな」


それを聞いた彼女はすぐには逃げそうにない俺に諦めたのか、ため息をついた後。


「そうですね。ここにいるメンバーだと負けることはないでしょうが、あのクラスが相手だと普通は事前に作戦を決めていたり、気心の知れたパーティーで挑むんで……」


「……そうか」


「あの、だから逃げてください。おにいさん達が生きていれば、またお店はできると思うので」


「そうか」


申し訳なさそうにする彼女に一言返事する。

仕方がない、店を潰されるわけにはいかないので、少し俯き加減の止水に声をかけることにする。


どうやらメンバの実力的には不足はないようだから、奥の手までは出さなくても良いだろう。


「あー、止水」


「え? えと、なんですか?」


「その弓、貸してもらえんか? まあ、支援はそれなりに得意なんでな」


そう言って止水の弓を指差した。


「はあ?」


目を丸く見開いて俺を見る彼女を気にせずに、さっさとよこせと手を前に出す。


まあ、こう見えても魔王討伐の元勇者。自分の店が危ないとなれば手を出すしかない。

しかも、今回は弓での支援、俺の役割だったのだから。


「な、何言ってるんですか! 頭おかしいんですか!」


「止水。俺は冷静だ。いいからそれを貸してくれ」


目をつり上げて睨み付ける止水。

少し睨まれた後に、少し冷静になったのか。


「……分かりました。一回だけです。弓を引けなければすぐに返してください。まあ、普通の人に引けるとは思いませんけどね」


そう言って、弓と矢を貸してくれる。


さて、それじゃやるか、店を守るために。


今はGWの終わりの始まり

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― 新着の感想 ―
[良い点] ゴールデンウィーク終わりの始まりって書くと、なんかすごくいいことが始まったみたい(*´∇`*)
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