終わりの始まり⑮
「我が身体に満ちる魔力よ……」
転移魔法を唱え始めながら、俺は辺りを軽く見回しこの場に他の生存者がいないかを確認していく。
あれだけの爆心地であったここには、既に建物の残骸すらほとんど残っておらず小規模なクレーター状になっているほどだ。
だからどこまでも見渡すことができるし、俺たち以外には何も残っていないとはっきりとわかった。
(ル・リダさんの居場所だけが気になるが……もし近くに居たらアリシアが探知魔法を使った際に反応があったはず……恐らくこの近くには居ないはずだ……)
尤もこの付近に居た場合は間違いなく先ほどの三連続の爆発が直撃して、既に命どころか原型すら残ってはいないだろう。
(できればちゃんとした居場所を聞き出してから事に及びたかった……だけどこの機会を逃すわけにはいかないっ!!)
せっかくこの魔法陣の上に皆が揃っていながら、あいつとは距離を取れているベストな状況なのだ。
もしまた向こうが攻めてきて乱戦状態になったら、再び魔法陣の上に全員が集まるタイミングが作れるかどうかわからない。
ましてその中であいつが冷静にこの魔法陣を眺めたりしたら、こちらの企みが看破される可能性が高い。
(ル・リダさんは範囲魔法を駆使すれば探し出せるはずだっ!! だけどその前に世界全てを塗り替えようとしている……滅ぼそうとしているこいつだけはどうにかしておかないとっ!! だからこそ今っ!! ここで決めるっ!!)
「おやおや、今更何の魔法を使おうとしているのかは知りませんが……無駄ですよ、私にはどんな魔法も……っ!?」
「彼の身を包み我が身を望みし天地へと……」
ア・リダが産み落とした化け物は余裕の笑みを浮かべたまま、あえてこちらにプレッシャーを掛けるかのように堂々と歩いて迫ろうとした。
しかし俺の唱えている詠唱を聞いたところで何の魔法を使おうとしているのか悟ったのか、途端に顔をしかめて見せた。
「転移魔法……なるほど、逃げて体勢を立て直すつもりですか……確かに転移魔法陣で逃げるよりリスクは高まりますが、その分どこへ飛んだか分からなくなるため追いかけるのは厄介になりますからね……ですが、それを許すと思いますか?」
「っ!!?」
「ちぃっ!! させるかよっ!!」
俺の企みをそう読んだそいつは、一気に加速して凄まじい速度でこちらへと突っ込んできた。
咄嗟にアリシアとエクスが剣でもって切りかかる形で強引に押しとどめようとするが、それでも殆ど向こうの勢いを止めることはできず、地面を削る様にして後ずさりさせられていく。
恐らく向こうの狙いは俺が唱えきる前に触れて無効呪文で無効化するか……あるいはそのまま息の根を止めようというのだろう。
(どっちにしても……好都合だっ!!)
「くぅっ!? と、止めきれね……っ!?」
「ぅぅ……ぁ……っ!?」
「れ、レイドっ!? 不味……えっ!?」
「残念ですがこれで終わ……なっ!?」
とても正規の詠唱が唱えきらないであろう速度で迫る化け物に、俺はあえて片手を差し向け……触れるか触れないかのところで、無詠唱で練り上げていた魔法を解き放つ。
「転移魔法っ!!」
「な、何……っ!?」
一気に詠唱が省略されて放たれてた俺の転移魔法は、ほぼ零距離な上に予想外のタイミングであったがために、幾ら圧倒的な能力を持つ化け物であっても避けることは敵わなかった。
(無詠唱で魔法を使える奴は詠唱を囮に出来る……マ・リダの奴も引っかかったっけなぁ……やっぱり幾ら神だのなんだのと偉そうに自称しても、所詮お前も魔獣と何にも変わらねぇ……貰い物の力で調子に乗ってるだけの屑だっ!!)
尤も初めて使う魔法を無詠唱で行うのははっきり言って自殺行為に近く、正直なところ上手く行くかは一か八かであった。
それでも俺は絶対に成功すると信じていた……アリシアやアイダ、それにみんなが信じてくれている自分が失敗するわけないと自信を持てていた。
そうでなければこの成功を前提とした作戦など思いつきもしなかっただろう。
(まあできればこれで終わってほしいところだけれど……念には念を入れておかないと……っ)
「れ、レイドっ!? あいつはっ!?」
「今のは転移魔法かぁっ!? どこへ飛ばしたぁっ!?」
「貴方が何故使えるのかはこの際不問にいたしますが、込められた魔力量からして大した距離へは飛ばせていないとは思います……あの者をどこへ?」
デウスの言う通り俺ごときの魔力で、しかも無詠唱で放った転移魔法では大した距離を移動させることなどできない。
それこそこの場から見回して視界に移る範囲ぐらいだろう……しかしそれで十分すぎた。
全員が振り返り俺を見つめる中で、事情の分かっているマナだけが神妙な面持ちで魔法陣に手を付いたまま地面の下を見つめていた。
「あいつなら……地面の中ですよ……」
「えっ!? そ、それってっ!?」
「そう、土の中……あいつは大地と融合させられた……生き物の死体ならともかく、無機物と融合させられたらどうなるかはわからない……少なくともパワーアップはしないはず……」
「「っ!?」」
マナの言葉にアリシアとアイダが今更ながらにそれに気づいたとばかりに目を見開いた。
(そうさ、本来の転移魔法はこう言った別の物と合成されて命を落とす事故があったからこそ、それを防ぐためにわざわざ転移魔法陣で相互の場所にある物を交換し合う形で移動してるんだ……なら逆に言えばそれを意図的に起こしてやればどんな強敵でも……)
「え、えげつねぇなぁおいっ!? つぅかパワーアップって何だよっ!?」
「マナ……貴方が居ながらこのような使い方を許容するとはそれほどの事態なのですか? それにエクスのおっしゃった通り、転移魔法で形あるものを混ざり合った以上はどんな生き物であれ命を落とすはずです……それは貴方も知っているはずでしょう?」
事情を知らないエクスとデウスがまるで糾弾するような目つきでこちらへ問いかけてくる。
しかしこれも当然だろう……何せ確か彼らはこの魔法の発明者であり、この手の事故を無くそうと隠匿してまでして手を尽くしていたはずなのだから。
なのにそれを利用して事を運ぼうとするなど、幾ら緊急事態であっても納得しがたいはずだ。
(だけどこれはただの緊急事態じゃないんだ……はっきり言って、これですら仕込みに過ぎないんだからな……)
尤もこれで終わってくれればそれに越したことはない。
そう思いつつ事情を説明しようと口を開こうとした……ところでまるで地震のような振動が俺達に襲い掛かってくる。
「くっ!? や、やっぱり駄目だったかっ!?」
「はぁっ!? だ、駄目ってどういう……ま、まさかこの振動っ!?」
「あ、あり得ませんよっ!! 形あるもの同士が融合した果てに命を落とさず行動を続けるなどそんな事例は聞いたことがっ!?」
「後で説明するっ!! それよりレイドっ!! 準備は出来てるっ!! 今から転移魔法陣で逃げるっ!! みんな密着してっ!!」
「えっ!? に、逃げちゃうのっ!?」
「ふ、ふざけるでないっ!! あのような醜悪なる者を放置して逃げるなど……っ!?」
マナの叫びにアイダが驚きの声を上げてパパドラもまた騒ごうとする。
しかし俺が敢えて無言でじっと見つめると、アイダもアリシアも分かってくれたのかパパドラを抑え込みこちらへと密着してきた。
「デウス様っ!! エクス様もこちらへっ!! 皆がくっつくぐらい密着してっ!!」
「ああっ!! わかったぜっ!! だが後でちゃんと説明しろよっ!?」
「マナっ!? ほ、本気でこの魔法陣……いえ、今更ですね……貴方を信じましょう……」
デウスとエクスもまたこちらに近づき、全員がくっついたところで恐る恐る魔法陣に手を付いて魔力を練り始めるマナ。
果たして中空にいつもの転移先候補の光景が浮かび上がった……と同時に俺たちのはるか先の地面にひび割れが生じてそこから奴が飛び出してきた。
「がぁあああああああっ!! 貴様貴様貴様ぁああああああっ!!」
「ま、マジかよ……何であれで生きて……」
「し、信じがたい光景ですが……まさかこれほどの相手だとは……」
驚愕に目を見開くエクスとデウスの前で飛び出してきた奴は……先ほどまでの余裕はどこへやら怒り狂い血走った眼差しで俺だけを睨みつけてくる。
その身体は無残にも土塊と一体化してしまったかのように頭のてっぺんからつま先まで黄土色に変わっていて、四肢や翼があった場所も出っ張りがあるだけだった。
どうやら完全に大地の一部と融合してしまったようだが、そんな武骨で荒削りな土人形のようになり果てながらも化け物は死に絶えることなくはっきりとした意識を保っていた。
(やっぱりか……マキナ殿の言っていた生命力の高まりのせいなのか、あるいはゴーレムの魔法を応用したのかはわからないけど……この程度で死んではくれないか……)
しかしゴーレムと言う前例を見ていた俺は、大地と融合してもこいつが死なない可能性は思いついていた。
だからこそ第二の策をマナに頼んで仕込んでおいてもらったのだ。
(これも成功するかどうかは賭けだけれど……あいつは頭に血が上っていて冷静さを失ってるっ!! ならきっと……っ!!)
そう思いながら俺はマナへと振り返り頷きかけると、向こうもはっきりと頷き返して……魔力を解き放った。
「ここは一時退散っ!! 転移魔法陣で逃げるっ!! さよならっ!!」
「ちぃっ!! 逃すものかぁあああっ!!」
マナの叫びを聞いて全力でこちらに飛び掛かろうとする化け物だが、生き物でも何でもない無機物である土が混ざった影響か、その動きは今までよりは遥かに劣る速度であった。
尤も仮に前と同じ速度であったとしても、予め下ごしらえを済ませていたマナの転移魔法を防ぐことはできなかっただろう。
そしてマナが解き放った転移魔法は奴の目の前で、密着している俺たち全員の身体を一気に別の場所へと移動させた。
いつも通り視界が反転して僅かな眩暈を感じながら、気が付いたら俺たちは全く見覚えのない原野……の中空から落下していて転移魔法陣の敷かれている地面に身体を打ち付けてしまう。
「あうぅっ!? い、いたぁいいっ!? な、なんでぇっ!?」
「ごめん……万が一の事故を思って地面から高めの場所に飛んだ……怪我人には回復魔法掛けるから許して……」
「ぬぅ……本当にあやつを置いて逃げ出すとは……あれだけ足が遅くなっておればまだ戦いようはあったであろうに……」
「ぐぐ……そ、そんなことより逃げるんなら早く移動しねぇとっ!! このまま転移魔法陣の上に乗っていたら向こうに起動されてまた戻らされて……っ!!」
「なるほどっ!! それがあなたの狙いなのですねマナっ!!」
痛みを堪えながら叫んだエクスの言葉にようやくデウスは納得が言ったような声を洩らした。
「違う……レイドの作戦……私は従っただけ……全部レイドが考えてやった……上手く言ったとしても凄いのはレイド……」
「えっ!? えぇっ!? ど、どういうことぉっ!?」
「……?」
驚きの声を上げるアイダの傍で、アリシアも身体を起こしつつ疑問を込めた眼差しを俺へと向けてくる。
「はは……なぁに簡単だよ……実はさっきの転移魔法はマナさんが直接唱えたものであの魔法陣を使ったものじゃないんだよ……」
だからこそマナは俺達が地面と融合しないよう、あえて少し高い場所へと転移させて、おかげでこうして地面に落下する羽目になったのだ。
「はぁっ!? け、けどこうして俺達は転移魔法陣の上にいるじゃねぇかっ!? それにだったらあっちでわざわざ俺たちを乗せるために集めた転移魔法陣は何だったんだよっ!?」
「ですからそれが罠なのですよ……あのわざと間違えて描かれた転移魔法陣モドキを起動させて……暴走させるための……そういうことなのでしょうマナ……いえ、レイド殿?」
「デウス殿のおっしゃる通りです……ああして転移魔法陣を使って飛んだと思わせれば、あいつのことだから即座に呼び戻そうとあの莫大な魔力を見せびらかす意味でもそうすると思いましてね……尤も自ら転移魔法を唱えて飛んでくる可能性も零ではありませんでしたから……」
「あっ!? だ、だからああして事故のリスクを身体に思い知らせて躊躇させるように仕向けたのレイドっ!?」
そこでようやく納得した様子で頷いたアイダが目を輝かせながら俺を見つめてくる
「半分は正解だけど……正直なところ、あれで止めを刺せたらって期待半分でもあった……まさか本当に動いてくるなんてなぁ……」
「本当にギリギリの綱渡りだった……ううん、今も実はちょっと危ない……私も無詠唱で放ったからあまり距離を稼げなかった……だからここはドーガ帝国の未開拓地帯に魔獣が敷いた転移魔法陣の上……もしもあいつが本気で追いかけてきたら大変……」
「いや、あれだけ移動速度が落ちてるようじゃ……転移魔法を素で打つのは嫌がるだろうからそうそう追いつかれることはないと思う……」
そう言いながら俺たちが自然と先ほどまでいた魔獣の本拠地の方を見上げた……ところで凄まじい閃光が瞬き世界を照らしあげた。
「なぁっ!?」
「こ、これはっ!?」
「ま、まぶしぃいいっ!?」
目も開けていられないほどの光源が生まれたかと思うと、少し遅れて爆音と爆風が俺達の元まで轟いてくる。
(な、な、なんだこれぇっ!? まるで太陽が落ちて来たみたいだっ!?)
身体が持ち上がりそうなほどの爆風を必死にしゃがんで堪えている中で、ようやく眩しさが収まり始めて……見上げてみれば遥か彼方に巨大なキノコにも似た爆炎が高らかに舞い上がっていた。
「う、うわぁ……な、なにこの威力ぅ……」
「あそこからここまで届くなんざ……滅茶苦茶すぎるぞおい……」
アイダとエクスが呆然とした声を上げるが、俺もまたここまでだとは思わなかったから驚きを隠せなかった。
(えぇ……い、幾ら転移魔法が大掛かりな魔法だからって……それにあいつが恐ろしいまでの魔力を秘めてるからって……ここまでの威力になるのかぁ?)
「レイド、よく見ておいて……レイドの攻撃魔法が暴発したら規模は違えどあんな感じになる……どれだけ危険なことしたか覚えておいて……」
「えっ!? えぇっ!? ど、どういうことですかマナさんっ!?」
「どうせ失敗させる魔法陣なら威力が高い魔法を暴発させた方がいいと思ってレイドの編み出した攻撃魔法を適当に組み込んでおいた……そしてあいつの魔力で発動したあの魔法が暴走した結果があれ……」
「う、嘘ぉ……」
そう言ってニヤリとほくそ笑むマナ。
(な、なんてことを……いやだけどこの場合は威力が高い方がいいからファインプレーだよなぁ……)
既にトルテやミーア、それにドラコに似た子から三つ首の奴までヲ・リダが責任をもって後方へ避難させていることは事前に転移候補先を覗くことで確認出来ている。
そしてあの近辺にル・リダが居なかったであろうことを思えば、むしろ高威力で確実にあいつを焼き尽くせるよう工夫したマナの判断は正しかっただろう。
「あ、新しい攻撃魔法を開発した……れ、レイド殿……貴方は一体何者なのですか?」
「し、信じらんねぇ……マキナの奴だって暴発を恐れて滅多に新しい魔法を開発したりしねぇのに、その中で一番ヤベェ攻撃魔法を……しかもおめぇ確かレイドってのは短期間で冒険者ランクを駆け上がってった奴だよなぁ……」
「ふふふ、レイドはすっごいんだからぁっ!!」
『その通りですデウス殿、エクス殿 我らのレイドは素晴らしい御方なのです』
「そうそう……レイドは凄い……格好良い……最高……ふふ……」
改めて俺に驚愕とも呆れともつかない視線を送る魔術師協会と冒険者ギルドの二大トップに、アイダやマナそれにアリシアまでが自慢するように呟き始める。
「は、恥ずかしいから止めてください……俺はそんな……」
「ふん……こざかしい人間の知恵というものか……まあ我が娘を保護したことといい、確かに貴様は他種族にしてはやるようだな……」
「ちょっ!? パ、パパドラさんまでなにをっ!?」
そこで黙って聞いていたパパドラも、俺たちの会話からおおよその事情を察したの急に鼻で笑いながらも俺を称賛するような言葉を口にした。
「他種族……その言い方ですと貴方様は我々とも違う生き物のようですが……」
「魔獣……にしちゃぁ雰囲気から立ち振る舞いまで違いすぎるし、例の手もついてねぇ……だがその尻尾と言い翼と言い、パパドラっていう言葉……まさかドラゴンだったりすんのか?」
「だとしたらなんだというのだ? 貴様らには何の関係もあるまい……」
そんなパパドラは話しかけてくるデウスとエクスの言葉を軽く切り捨てつつ身体を起こすと、翼を広げて飛び立とうとする。
見れば既に身体中の傷は治癒されていて、改めてドラゴンの生命力の高さを見せつけられたような気分になる。
「ぱ、パパドラさんっ!? どこへ行くつもりですかっ!?」
「あやつが本当にくたばったのかを確認しに行く……我としてもあれで生きておるとは思わぬが、万が一にも生存していた場合であっても居間ならば弱っているであろう……そのようなところを奇襲するのは我がプライドに反するが、あやつだけは別だ……何としても始末しておかなければ……」
「た、確かにあれでも生きてる可能性……あ、あるのかなぁ?」
パパドラの言葉に頷きかけたアイダだが、未だに彼方で爆炎が上がり続けている光景を見て自信なさげに呟いた。
「確かに転移魔法で大地とくっ付いてなお動いて見せた輩です……万が一と言う可能性は否定しきれませんが……」
「で、ですがもしも生きているとしたらそのような場所にあなた一人で行くのは危険すぎますっ!!」
「ふん……逆だ、だからこそ我が一人で行くのだ……あやつが生きておっては貴様らだけでなく偉大なる我らの種族もまた危機に晒され得る……しかしもしも我が破れようと貴様らが生き残っておればこざかしい知恵で何か企むであろう」
「あっ!? す、捨て石になるつもりですかっ!? だ、駄目ですよっ!! 貴方にはドラコの面倒を見るという仕事がっ!!」
「捨て石になどなるつもりは毛頭ないっ!! 万が一の場合の話だっ!! とにかく貴様らはあの子の居る場所へ下がっておれっ!! もし何ごとも無ければすぐに合流するっ!!」
そう言ってパパドラは今度こそ空へと浮かび上がり、爆炎の上がる彼方を見据えた。
「ま、待ってますよパパドラさんっ!! ドラコと……あの子達と一緒にっ!!」
「うむ……では、後は任せたぞレイド……殿」
「っ!?」
そこで初めて俺の名前を、それも敬称を付けて呼んだパパドラはその顔に微笑みにも似た表情を浮かべて俺を見つめてきた。
そして本当に僅かにだけれど頭を下げるかのように傾けたパパドラは、今度こそ彼方の爆炎を険しい顔で睨みつけながらすさまじい速度で飛び去って行った。
「あぁっ!? ぱ、パパドラさぁんっ!!」
「……いいのレイド?」
「パパドラさんのことですから止めても止まりませんよ……それに転移魔法を除けば一番機動力があるパパドラさんが現場を見てきてくれるのはありがたいともいえるし……とにかく俺たちもパパドラさんの言っていた通りドラコの居る場所に言って……マキナ殿と万が一の場合についてついて相談しましょう」
改めて指示を出した俺の言葉に、デウスとエクスも含めて皆が従うように頷いてくれるのだった。




