90話 ブレード人
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『え―――――っ、刀がしゃべった!!』×2
と俺とオトアは声をそろえ驚いていると、俺のヘルメット内の
左モニターに映るエードラム様が、
『あれ~あれはたしかブレイド人じゃない』
とおっしゃる。
『ブレイド人!!』
聞きなれない言葉に俺とオトアは驚き、エードラム様に聞き返すと。
エードラム様は自慢げに俺やオトアに説明しだした。
『ブレイド人ってのはね、今から数千年前にここの三日月島が、まだ大陸と
つながっていたころにあったとされる、チョーラ帝国よりさらに前にここに
居た種族でね……』
エードラム様の話によると、今から数千年前にこの地にブレイド人が居た
そうだ。
彼らは、俺が知る日本刀のような姿かたちで、強力な念動力を操り、自身の
体を操っていたが、ある時、念動力を自身が使うより、人を使役して、狩り
をする方が効率がいいことに気づき、以後、人を使役していたそうだ。
使役と言っても、従属する関係ではなく、そのブレイド人の強靭な体は、
鉄の武器のまだない人類にとっては強力な武器となることと、ブレイド人
は、獲物の魔力や魂を栄養としていて、獲物を狩った時に、ブレイド人は、
その得物の魔力と魂をそして使役される人間達はその肉をお互い分ける
ので、ブレイド人と人間の共存が成り立っていたらしい。
そんな生活が何百年か続いたある日、突然ブレイド人達は姿を消したそうだ。
そして、その後チョーラ帝国が反映した時には、人々からブレイド人の
記憶もなくなり、忘れられた存在となっていたが、今から8千年前に
チョーラ帝国が栄えたこの一帯の地殻変動により、ここの三日月島と
大陸を繋ぐ部分が水没、チョーラ帝国が消えた数千年後、住み着いた魔人や、
人鬼の2百年前の戦いにおいて、人鬼達が使用した
武器の中に妖刀と呼ばれる刀があり、その妖刀
言うのが、太古の昔突然消えたブレイド人の自我をなくした姿だと
言うことだった。
(へー、あの妖刀がねぇ……)
◇
俺とオトアに説明を終えたエードラム様は、徐に空中に浮かぶ
ブレード人に尋ねる。
『相手を斬りつければ、魔力や魂をも狩れるブレード人のあなた
がなぜここに居るのかな?』
その言葉にブレード人の人は答えた。
「我が名はカムイ、今から数千年前にヤマタノオロチの襲撃を受け、
ここにおると言う訳だ」
しかし、ブレード人の答えにエードラム様が聞き返す。
『それは、みればわかります、なぜヤマタノオロチに呑み込まれた
のですか』
と再度聞き返すと、
「いや~それが……」
と話し出した。
ブレード人のカムイさんの話によると、今から9千年前に、200人の
人々とブレイド人がお互い共生しあい狩りをして平和に暮らしていたの
だが、そこへ、ヤマタノオロチが現れ人々とブレード人の村を襲った。
元々ブレード人は斬ることにより相手の魔力や魂を吸収できると言う
特徴を持ち、無敵にも思われた戦闘力も、八つの頭から繰り出される
水、風、音、冷気、炎、電撃、毒、石化の攻撃にヤマタノオロチの
体を斬りつけることが出来ず、使役する人間と共に次々に倒されて
いった。
目の前のカムイさんも相棒のガイさん(人間)と共にヤマタノオロチ
を迎撃すべく向かったのだが、相棒のガイさんが、鞘からカムイさん
を抜く前にヤマタノオロチに食べられてしまいここに居るとのことだ
った。
『でも、今はむき出しですけど……どうしてですか?』
とオトアが聞くと、
「いや、ここに居る間にガイ共々鞘が溶けてしまったんでな」
とカムイさんが答える。
『溶けるって!?』×2
俺とオトアが思わず声をあげるが、
「ほれ、周りを見てみ」
とカムイ(ブレード人)が言うので、俺は周りを見ると、壁や天井
床に当たるところから、ジュワーっと液体が沸き上がって来る。
「あっ!」
(そーだった、ここは奴の胃の中だった)
俺が思わず声をあげると、エードラム様が言う。
『5分や10分で溶けるものではないわよ』
その言葉に俺は、
(溶けないって訳ではないんですね)
と心で突っ込みを入れるが、エードラム様はそんな俺を無視
して、カムイ(ブレード人)さんに
『あなたが斬りつければこのオロチの魂を狩れるのではなくて?』
聞くと、
「この胃液に触れたとたん私の体は溶けてしまう、同じように
飲み込まれた仲間が次々溶けて行くのを見てきたからな」
と答える。
それを聞いて、エードラム様が言う。
『なら、胃液に触れなきゃいいのね』
その言葉に、不意を突かれたように、
「まぁ、そーだが……」
とカムイ(ブレード人)さんが言うと、今度は俺に向かって
エードラム様が言う。
『テンタ君、ここの胃壁をビームガンで撃ち抜いて!』
「あっ、はい」
俺はエードラム様に言われるまま、ビームガンを構え撃とうと
すると、カムイ(ブレード人)さんが、慌てて俺に言う。
「いや、まて、例えここに穴を開けたとしても、私にはもう
ここを飛び出すだけの力は残ってないんだよ、何千年と念力で
ここに浮いていたのでな……それとも、魂をとは言わないが、
私に魔力を分けてくれるなら、出来るかもしれないが……」
カムイ(ブレード人)さんの言葉に、
『魔力ねぇ~』
と俺の顔をちらっと見るエードラム様、そしてカムイ(ブレ
ード人)さんに向かって、
『魔力ではないけど……これでどうかしら』
と言うと、今度は俺に向かって言う。
『テンタ君、彼の刀身を握ってみて』
(えっ、そんなことしたら……)
と俺は思い躊躇していると、エードラム様が、
『早くしないと、溶けるわよ』
と脅してきた。
「あっ、はい」
俺はエードラム様に言われるまま、カムイ(ブレード人)さんの
刀身を右手で”ギュ”っと握ると……。
\ピカッ/
と手が光、カムイ(ブレード人)さんの刀身にその光が吸われていく。
「んっ、!なんだこの感覚!」
驚くカムイ(ブレード人)さん。
俺がそっとカムイ(ブレード人)さんの刀身から手を離すと
カムイ(ブレード人)さんにニッコリ笑って、エードラム様が言う。
『どう?行けそう』
「んっ……ああ」
それに何とか返事を返すカムイ(ブレード人)さん。
で、エードラム様は、改めて俺に言う。
『テンタ君、撃って』
「はい」
俺はそう返事を返し、
「レッドバスター」
”ビシュー”
とオロチの胃壁に穴を開けると、勢いよく飛び出すカムイ(ブレード人)
さん。
”ピユー彡”
そしてオロチの胃の外に出ると、何かの臓器に自身を突き刺す。
\ブシュ/
すると、急にグラグラとヤマタノオロチが揺れ、そして\ドスン/
と倒れる。
オロチが倒れた衝撃で、
「うわぁ~!」
と俺もオロチの胃の中で転げまわっるのだった。
◇
------(第三者視点)------☆
「どこに消えた!」
プサイ(顔がバラの花で体は茨で出来た女)は、急に
目の前から消えたテンタを探そうとしたその時だった。
視界が斜めにずれて行く。
「んっ、なっ……」
驚きながらプサイ(顔がバラの花で体は茨で出来た女)は、
絶命した。
プサイ(顔がバラの花で体は茨で出来た女)が絶命した時、同じように
テンタを探していたデーモンヤマタノオロチ。
突然、体を斬られ絶命したプサイ(顔がバラの花で体は茨で出来た女)
を見て、驚くデーモンヤマタノオロチ。
あたりを必死に見回すが、テンタの姿はどこにもなかった。
しばらくあたりを警戒するデーモンヤマタノオロチだったが、やがて
テンタを捜索するのをあきらめ、目の前に横たわる石化した禍龍に
止めを刺そうとした時だった。
「グッ!」
と突き上げる痛みと共に、その場に倒れて動かなくなってしまった。
憑依したヤマタノオロチが急に動かなくなったことに驚いて、
パニックを起した8体のレッサーデーモン達は、うかつにも
ヤマタノオロチから憑依を解き外に出てしまう。
\\グアッ~//
外に出た8体のレッサーデーモン達は日の光に体を焼かれ消滅し
て行くのだった。
◇
------(テンタ視点)------☆
「痛てててて」
元々エードラム様が光の球になる技を連発し、体の節々が痛
かったのに咥え、ヤマタノオロチが倒れる際、オロチの胃の
中で転がったのがこたえたのか、立つのがやっとの俺。
どうにか、立つには立ったがこれ以上動けないって思ってい
たら、それを察したのか、はたまた俺の気持ちを無視して、
エードラム様が、俺から体のコントロールを再び奪うと、
俺は瞬く間に赤い光に包まれ左腕のガントレットから
ナイフを引き抜き、剣に変え
そして、
『ソーラーブレイド』
と剣を光で包み込むと、ヤマタノオロチの腹を内側から
『バルバンクラッシュ!』
と切り裂き、外へと出る。
『どう、外に出てたでしょw』
と悪びれもなく言うエードラム様。
(いや……そういう問題ではないんですよ)
と心でぼやく俺。
エードラム様が、俺の体を包む光を解除し、俺に体のコント
ロールを返すと同時に俺はその場に崩れ落ちた。
『テンタ君!』
オトアが叫ぶのを見てエードラム様が、
『あら!』
と一言言ってから、
『回復魔法を……』
と言って俺に慌てて回復魔法を掛けた。
◇
「ふぅ~」
エードラム様に回復魔法を掛けてもらい俺は一息つく。
するとオトアが俺に言う。
『禍龍死んじゃったのかな?』
オトアの言葉に俺も目の前に横たわる石化した禍龍を見つめ
『どうなんですか、エードラム様?』
とエードラム様に聞くと、エードラム様は一瞬、”何のこと?”って
顔をしたが、俺とオトアの目線に”忘れてた”って顔で、再び俺から
体のコントロールを奪うと、俺の右腕をあげ右掌を開き、横たわる
禍龍に向け、
『ソーラーフラッシャー』
とエードラム様が叫ぶ。
\パシュッ/
眩いばかりの光のフラッシュが俺の右掌から放たれると、石化した
禍龍は、見る見る石化が解け元の姿に戻っていった。
≪ふぅ~、死ぬかと思ったぞ!≫
起き上がった禍龍が、俺達に言う。
その言葉を聞いたエードラム様が禍龍に言う。
『そんなんだから、何千年も人間に閉じ込められるのよ』
その言葉に、軽く頭を上下しながら、
≪面目ない≫
と言う禍龍だった。
そこへ、
「おーい、だしてくれ……」
とかすかな声が、死んだヤマタノオロチの体の中から聞こえてきた。
≪うん!?≫
その声を聞いて、身構える禍龍。
(あっ、忘れてた)
身構える禍龍に俺は手で制して、左腕のガントレット
からナイフを引き抜き剣に変え、ヤマタノオロチの胸の部分を切り
裂き、中からカムイ(ブレード人)を引き出した。
それを見た禍龍は目を丸くして聞く。
≪なんだそれは≫
その言葉に俺に変わってエードラム様が紹介する。
『ブレード人のカムイ君です』
それに続いてカムイ(ブレード人)さんも禍龍に
頭を下げ挨拶する。
「どうも初めましてブレード人のカムイです」
カムイさんに自己紹介されて、少し面喰いながらも禍龍も
カムイさんに挨拶する。
≪儂は禍龍だ≫
すると、カムイさんは俺達に聞く、
「あの~あなた方のお名前は……」
その言葉に、俺は慌てて
「あっ、僕はテンタ……日向天太です、そして俺の右のモニターに
移ってるのが、オトア涼風響で、左のモニターが光の精霊のエード
ラム様です」
と言うと、カムイ(ブレード人)さんは少し困ったような顔をして
「いや~、モニターと言われましても見えないですから……でも
気配でわかります、この度はありがとうございました」
とお礼を言われ、
「いえいえ、こちらも助かりましたカムイさん」
とお礼の言葉を交わして、その場を去ろうとしたら、
「ちょ、ちょっとお待ちを」
とカムイ(ブレード人)さんに呼び止められる。
「はい、何でしょうか?」
と尋ねると、
「もう、私には仲間も、相棒もいません、このまま一人で生きて
いく自身もありません、どうかわたしをお仲間に加えていただき
ませんでしょうか?」
と言われた。
(うーん、どうしたものかな)
と俺が悩んでいると、エードラム様が勝手にカムイ(ブレード人)
さんに言う。
「魂を奪わないって約束するならいいいわよw」
その言葉を聞いて、嬉しそうに笑顔になるカムイ(ブレード人)
さん。
(ちょ、ちょ、そんな勝手に……)
と俺は内心思ったが、満面の笑みを浮かべ
「奪いません、絶対にw」
と言うカムイ(ブレード人)さんをみたら……。
「よろしくw」
と思わず言ってしまった。
「ありがとうございますw」
と嬉しそうにお礼を言うカムイ(ブレード人)さん。
(まぁ、いいか)
ただ、刀身むき出しのカムイ(ブレード人)さんを連れて歩くのは
少々周りの目もあるってことで、一旦、カムイ(ブレード人)さんには、
瓢箪の中に入ってもらうことにし、俺は、禍龍と共にほかの
戦場の様子を見に行くことにした。




