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36 会えないクリスマス(SIDE:雄樹)

 「富井、期末試験も近いことだし、相談の回数を減らそうと思う」


 「え、なんで!?」


 あれ? 俺、なんでこんなにショック受けてんだ? キョーセンセーと2人で話す時間が減るのが嫌だ。なんでだ?

 2週間に1回ってことは、単純に半分になるってことだよな。

 半分…半分か。なんでだろう、すっげえ()な気分だ。

 要するに、俺だけ特別扱いはできないって言われたんだけど。

 そりゃそうだよな。俺は生徒の1人でしかないんだし。

 でも、なんか()な感じだ。

 キョーセンセーとしゃべってんの、楽しかったのに。

 センセー、カレシいんのかな。

 バスバブルのことも、教えてくれたのキョーセンセーだし、やっぱ経験豊富なんだろうな。

 …って、なんで俺、そんなん気にしてんだ?

 俺には美弥子さんって可愛いカノジョがいんのに、まるでセンセーにヤキモチやいてるみたいじゃんか。

 …修学旅行ン時、センセー、いい匂いだったな。

 胸も美弥子さんよりでっかいし。

 って、何考えてんだよ、俺!?

 胸の大きさが女の価値じゃ…って、そうじゃなくて!

 なんで俺、センセーのこと気になってんだよ。

 俺のカノジョは美弥子さんで、好きなのも美弥子さんで、そりゃエッチできねえけど、メシ作ってくれるしキスだってしてくれる。

 なんでだ? 俺って、もしかして浮気者だったんか?

 センセーが気になるとか、どうなってんだよ…。

 こんな気持ちで、美弥子さんと付き合ってていいのかな…。




 クリスマスの頃は冬休みだし、年末年始はさすがに部活も休みだけど、親父達が帰ってくるかもしれないしなあ。

 単身赴任にお袋がついてった形だから、俺の逆単身赴任みたいになってる。マンション(ここ)じゃ3人で過ごすには狭いし、ふとんもないから、田舎のじいちゃんちでも行くんかな。そうすると、年末年始は美弥子さんに会えなくなるなあ。

 とか思ってたら、親父達が長めに年末休暇取れたとかで、早く帰ってくることになった。


 「なんで俺まで…」


 「だって、部活ないんでしょ? 久しぶりに会えるんだし、あんたも終業式終わったらおじいちゃん家いらっしゃい」


 「あ、センセーが、お袋達帰ってくるなら、三者面談やりたいって…」


 「無理よ、そんな暇ないわよ。

  大学は、行きたいとこ行っていいから。

  浪人しないで4年で卒業してくれれば、どこでもいいから。

  

  そんなことより、お母さん達、長い休みなんて次いつ取れるかわかんないんだから、さっさとおじいちゃんとこいらっしゃい。

  部屋に女の子連れ込んでるとかじゃないんでしょ?」


 「当たり前だろ! 何考えてんだよ!」


 美弥子さんとこに毎週行ってんのバレると面倒だなとか思ってる間に押し切られて、予定は決まっちまった。




 「ごめん、美弥子さん、親が帰ってくることになっちまって、クリスマスとかじいちゃんとこ行かなきゃなくなった」


 美弥子さんは、一瞬、え?って顔をした後、笑って


 「そっかぁ。久しぶりのご両親だもんね。いっぱいお話してくるといいよ」


って言った。

 強がってるって感じじゃなくて、少しホッとしたような顔になった気がする。

 嫌だって言われても困るけど、こんなにあっさり言われても、なんか嫌な気分だ。クリスマスも会えないのに、美弥子さんは平気なんかな。


 「実はさ、あたしも家から、お正月は帰ってきなさいとか言われちゃってて、どうしようかと思ってたんだぁ。クリスマスからなのは残念だけど、どうせクリスマスは平日だから次の土曜にやるつもりだったし、駄目なら駄目でしょうがないよね」


 ああ、そうか。どうせ当日にできないんならって考え方もあるのか。


 「あたしさ、親に、付き合ってる人がいるって言っちゃっていいよね? どこの誰かまでは言えないけど、カレがいるってことは言っとかないと、お見合いの話とか持ってこられちゃいそうだし」


 お見合い!?


 「ほら、あたしもう26だし、親が焦れてきてるんじゃないかと思うのよ。

  ちゃんと結婚を考えてる相手がいるって言っとかないと、本気でお見合いさせられるんじゃないかって。雄樹くん、あたしと結婚前提で付き合ってるって言っちゃっていいよね? ごめん、高校生で結婚とか言われてもピンとこないと思うけど、要するにちゃんと好きなんだよってくらいに考えて?」


 まあ、付き合ってれば、そりゃいつかは結婚するよな。


 「うん、いい。俺は…カノジョできたとか、照れくさくて言えねえかな。ゼッテーお袋うるさく聞いてくるし」


 「それでいいよ。ていうか、言うんなら、クラスメートとかって言っといた方がいいと思う。26の女と付き合ってるとか言ったら、多分心配されちゃうから」


 「そんなもん?」


 「親御さんとしてはね、9歳も上の女となんて、遊ばれてるんじゃないかって心配しちゃうよ。

  せめて雄樹くんが大学生なら、心配もされないと思うんだけどね」


 美弥子さんが寂しそうに笑う。年の話になると、いつもこうだ。


 「クラスメートならいいのかよ」


 「だって、それは自然だし。思春期なんだし、疑問にも思わないよ」




 そんな話があって、結局正月もニューイヤーメールだけで終わった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] あ、雄樹くん、二股かと悩んだのね。真面目!! ほんとは君の彼女なのだよと教えてあげたい! ご両親、軽い(@_@;) でも一緒にいなくても、浪人せずに大学に行けるという信頼はあるんだね。 …
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