表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/52

28 ピンクのお風呂

 マッチポンプもいいところだけど、バスバブルを使ってのお風呂タイムは大成功だった。

 状況的に、触る以上のことはできないし、それなりの接触はできるしで、かなり満足感がある。

 雄樹くんとしても、部活の先輩から色々言われてストレスだったのが、無難に話せる経験にできたし。

 バスバブルなんて、こっそりとは使いにくいアイテムだし、一般的な高校生ならホテルになんて入らないだろうから、先輩くんにも新鮮な話だよね。

 これくらいで、うまくブレーキをかけておけば、あと9か月、なんとかなるかも。




 金曜日の昼休み、いつものように雄樹くんを相談室に迎えると、満面の笑みだった。


 「センセー、さんきゅ。カノジョも楽しそうだったし、先輩もうまいことやれたわ」


 それはなにより。キミが満足してくれて、あたしも嬉しいよ。


 「何より、美…カノジョが可愛くてさ。

  や、元々可愛いんだけどさ、明るいところで裸見んの初めてだったし、恥ずかしがる姿も、もう…」

 ちょっと! そりゃ、褒められるのは嬉しいけど、裸見た感想とか他人に言う!?

 まさか、先輩にもそんなこと言ったんじゃないでしょうね!?


 「んん! あ〜、そういう細かい情報はいらない。キミはもう少しデリカシーを持て」


 けど、雄樹くんはご機嫌で、次の予定を話してくれる。


 「この前はハイレグだったから、今度は普通のビキニにしようかな。

  カノジョの裸、ちゃんと見たことなかったし、なるべく肌が出るようにしようかと」


 そんな理由だったの!? そりゃ、初めての時は、部屋暗くしてたし、じっくり裸見る余裕なんてなかったんだろうけどさ。


 「あ~…触るのはともかく、絶対に舐めないように。アレは石鹸だからな。

  舐めるなら、ちゃんと泡を落としてから。シャワーで落としてもいいし、体を洗ってあげてからというのでもいいし」


 それくらいなら、きっと大丈夫。泡を落としてから抱き合ったりできるし。


 「背中流してもらわなかった…」


 なんか、愕然って感じで雄樹くんが言う。

 そっか、残念だったんだね。じゃあ、明日はあたしが背中流してあげるよ。


 「明日洗ってもらえばいいじゃないか」


 ニヤけてしまわないように注意しながら、さも何でもないことのように言ってみせる。だって、可愛いじゃない。さんざんあたしのこと洗ってくれたのに、自分が洗ってもらうの忘れたとか落ち込むなんて。

 きっと幸せっていうのは、こんな気持ちのことを言うんだと思う。なんてことない小さな一言を嬉しく感じる。ドラマチックである必要なんてないの。あたし、今、幸せだから。


 「そっか! そうだよな! また明日があるもんな!」


 「そうだろう? キミとカノジョは、まだまだ先が長いんだ。焦ることはないよ」


 教師らしくちょっと偉そうな言い方で締めて、話は終わった。


 「さんきゅー、センセー」


 お礼を言うのは、あたしの方だよ。

 ありがとう、あたしを好きになってくれて。こんなメンドクサイ女でごめんね。






 さて、と。

 バスバブルはいろんなのが出てるから、あたしの方でも買ってみようかな。

 土曜日の買い出しで、ちょっと足を伸ばしてデパートに行って、バス用品のコーナーを覗いてみる。

 当然というか、香り付きのものもあるんだよね。定番だと、やっぱりバラ系だよね。

 お湯もピンクになりつつ、泡も出る。まぁ。泡自体は普通に白いんだけどさ。

 雄樹くんもまた持ってくるのかもしれないけど、それを今日使わなきゃいけないってこともないし、今日はあたしが用意しよう。

 次回分とかも併せて、いくつか買っていこうか。そんなしょっちゅう来るのもアレだしね。







 「じゃーん! 今日はあたしが面白いものを用意しました!」


 ご飯の後、プラスチックの箱に入ったピンク色のボールを見せると、雄樹くんが目を丸くした。


 「…なに、これ?」


 「これはですねぇ、バスボールといって、バスバブルの一種なのです♪

  今日はこれ使ってみない?

  色付きなんだよ。あたしも使うの初めてだけどさ」


 「俺、この前のと同じの、持って来たけど」


 「うん、ありがと。それは次回にとっておいて、今日はこっち使わない? 売り場で見付けて、色々買ったんだ♡」


 「あ…うん、いいけど」


 「お風呂溜めるよ? あ、これ、ゼリーみたい」


 バスボールは、表面はゴムかなにかみたいな感じで、中に液体が入っていた。

 なんだろう、ちょっと柔らかいゴムボールみたいな。雄樹くんも触ってみて驚いてた。




 お湯が溜まって、水面の上には、もこもこの泡がいっぱい。


 「なあ、なんか、泡がピンクっぽくない?」


 雄樹くんがそんなことを言う。おかしいな。泡は白いって聞いたんだけど。


 「ほんとだ、ピンクに見えるね」


 たしかに、薄いピンクって感じだ。まぁいいか。

 ちょっと掬ってみると、泡は白かった。


 「あれ? 白いよ?」


 「ホントだ。なんでだ?」


 とりあえず、掬った泡を雄樹くんの胸にくっつけてみる。せっかくだから、胸があるみたいに盛ってみようか。



 「ちょ、美弥子さん、何やってんだよ!?」


 「ん~、雄樹くんにも泡のビキニをやってみようかなぁ、なんて」


 「なんで俺がビキニなんだよ! おかしいだろ!」


 雄樹くんは文句言ってるけど、本当に怒ってるわけじゃない。恋人同士のじゃれ合いだね。なんか、こういうことやれるのって、いいよね。


 「せっかくだから、今日はあたしが雄樹くん洗ったげる」


 雄樹くんを椅子に座らせて、背中を洗う。そういえば、そんなことするの初めてだ。子供の頃に、お父さんの背中を洗ったことはあるけど。

 やっぱり雄樹くん、男の子だねぇ。バスケやって体鍛えてるから、背中は広いし、筋肉もすごいし。

 ああ、逞しい背中って、こういうのを言うんだね。


 「お…」


 雄樹くんが驚いたような声を上げた。

 あ、あたし! 思わず背中から抱きしめちゃってた!


 「あ、ごめんね」


 慌てて離れると、雄樹くんが残念そうな声を出す。やだ、抱きしめてほしくなってきちゃった。

 なんとか我慢して、体を洗って、2人してバスタブに浸かった。

 泡がピンクに見えたのは、お湯のピンクが透けてたからだって、浸かってから気付いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] やだもうピンク〜♡(*´艸`*)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ