27 報告(SIDE:雄樹)
日曜の部活は、少し気が重い。
巽先輩にあれこれ聞かれるから。正直やめてほしいけど、春先、まだ美弥子さんに再会できてなかった時に相談に乗ってくれた人だから、強いことが言えないんだよなあ。
美弥子さんの気持ちの問題もあるから、ヤれないのはしょうがないと思ってっけど、先輩にはそれ言えねえし。
仕方ないんで、いつも同じようにやってるって説明してるけど、先輩は、それじゃマンネリになるからどーのこーのっつって色々言ってくる。少なくとも半分は俺のこと思って言ってるみたいだしなあ。あと半分は、からかわれてんだろうけど。
でも、今日は違う。
キョーセンセーにもらったアドバイスで、昨日は美弥子さんと風呂場で遊んだからな!
キョーセンセー、お堅い割に、こういうのに理解あんだな。
プロポーションも美弥子さんよりいいみたいだし、経験も豊富なんかな。アラサーだし。
それにしても、昨日の美弥子さん、ちょー可愛かったなあ…。
「ようトミー、今日はまたえらくご機嫌じゃねえか。やっと舐めてもらえたんか?」
休憩時間に、巽先輩がニヤニヤしながら寄ってきた。
「そうじゃないんすけど、昨日は風呂でちょっと遊んだんで」
「風呂? あれは膝が痛えだろう」
ん? ああ、風呂場でヤるってことか?
「バスバブルってのを使って泡でちょっと」
こういうとこで「知ってます?」とか聞くと、怒らせることもあるからって先生が言ってたんだよな。知ってる前提で話して、聞かれたら教えればいいって。
「バスバブル? なんだ、それ?」
こんな風に。
これもモノは知ってて名前だけ知らないパターンと、まるっきり知らないパターンがあるんだそうだ。
「なんか、風呂溜める時に入れとくと、すっげえ泡が出てくんすよ。
で、その泡ってめっちゃ強くて、手ですくっても崩れなくて。あれですよ、風呂のCMとかで両手で泡すくってふ~ってやるやつ。
その泡を、カノジョの体にくっつけてですね、泡の水着~とかやるんですよ」
「泡で水着って、どうやるんだよ?」
「風呂から手ですくって、胸とかにくっつけんです。泡を厚くしとくと、下が見えなくなって、フワフワの水着とかドレスとかになんです。
泡盛ってくのも楽しいし、泡だけのカノジョが、こう、くるっと回ったり、泡ん中手ぇ突っ込んで触ったりしてですね、すっげえ楽しかったです」
「泡か…。どんな風になるんだ? 写真とかないのか?」
「勘弁してくださいよ。カノジョの裸の写真なんて見せられるわけないじゃないすか。だいいち風呂ん中ですよ?」
「それ、どこで売ってんだ?」
「俺はデパートで買いました。化粧品とか入浴剤のとこで売ってます。
1個持って来ましたけど、いります?」
「お、気が利くな。
でも、そんなんどこで使ったんだ?」
「カノジョん家です」
「そうか…。カノジョが一人暮らしだと、そういうこともできんのか。
俺んとこ、親いっからなあ」
思いがけず先輩が食いついてきたんで、今日はうまいこと乗り切れた。
「センセー、さんきゅ。カノジョも楽しそうだったし、先輩にもうまいことやれたわ」
いつもの相談室で、キョー先生にお礼を言う。先輩にバスバブル見せられるようにしとけってのも先生の入れ知恵だ。なんなら、くれって言われるかもとか言われてた。
「うまくいったなら、よかった。
キミも楽しめたのか?」
「すっげえ楽しかったよ。
何より、美…カノジョが可愛くてさ。
や、元々可愛いんだけどさ、明るいところで裸見んの初めてだったし、恥ずかしがる姿も、もう…」
「んん! あ〜、そういう細かい情報はいらないから。
まぁ、恋人の可愛い姿が見られたのなら、よかったじゃないか」
センセーが咳払いして遮ってきた。少し顔が赤い。照れてんのかな? 先生も可愛いとこあるじゃん。
「今週も風呂で遊ぶことにしてるんだ。この前はハイレグだったから、今度は普通のビキニにしようかな」
「まぁ好きなようにしてくれ。それにしても、どうしていきなりハイレグなんだ?」
「や、カノジョの裸、ちゃんと見たことなかったし、なるべく肌が出るようにしようかと」
先生は目を丸くした。さっきよりも顔が赤い。
「思わぬところで、キミの性癖を知ってしまったな。
あ~…触るのはともかく、絶対に舐めないように。アレは石鹸だからな」
「ああ…そうだね」
そりゃそうだ、泡だもんな。
「舐めるなら、ちゃんと泡を落としてから。シャワーで落としてもいいし、体を洗ってあげてからというのでもいいし」
あっ! そういえば…
「背中流しっこしようって一緒に風呂入ったのに、背中流してもらわなかった…」
いや、半分は口実だったけどよ。せっかくチャンスだったのに今頃思い出して落ち込む俺に、先生は優しく笑って言った。
「明日洗ってもらえばいいじゃないか。
先は長いんだ、焦ることはないよ」
授業の時とは違う先生の笑顔にドキッとしたのは、内緒だ。




