13 美弥子さんちに行ってみた(SIDE:雄樹)
美弥子さんの部屋に行けることになった。
初めてできたカノジョ。女の子の家に行くなんてのも初めてだ。
最初の時、起きたらいなくなってたもんだから、夢だったんじゃないかって思ったりもした。テーブルの上に箱入りのアレが残ってなかったら、夢だと信じたかもしんねえ。
情けない話だけど、美弥子さんと付き合うことになったのも、もしかしたら夢だったんじゃないかって不安になる。
パインに「みやこ」ってアドレスがあるし、美弥子さんとまた会えたのは間違いないのに、どうしても不安になる。
この天井の上に、美弥子さんが住んでる。まだ信じられない。
土曜、部活の最中はまだ集中してられるけど、終わった途端に落ち着かなくなった。
行ってみて、別の人が出てきたらどうしよう。
すっげえドキドキしながら、306号室のインターホンを押した。
「えっと、美弥子さん?」
「うん、今開けるね!」
よかった、美弥子さんの声だ。
すぐにドアが開いて美弥子さんが出てきてくれた。美弥子さんの部屋に入るのか。緊張するな。
「や、なんか、もしかしていないんじゃないかとか、不安だったから」
って素直に言ったら、美弥子さんは
「呼んどいていないとか、ないでしょ~」
とか笑った。そうだよな、付き合ってんだよな、俺達。
部屋に入ってみると、ホントに俺の部屋と同じレイアウトだった。これなら、寝ぼけて混乱してもしょうがないかな。
「ハンバーグ焼くから、ちょっと待っててね」
なんて言って、美弥子さんはキッチンに入った。
ハンバーグを焼きながらサラダや箸を並べたり、ご飯や味噌汁を運んだりと、手際がいい。
ご飯茶碗が小さくて、男物じゃないのにホッとした。聞いたら、余ったご飯とか入れるためのスペアだって。
ハンバーグは、さすがに鉄板には載ってないけど、熱々で、ニンジンとコーンが一緒に盛られてて、店のみたいだった。割ったら肉汁がダラーって出てきて、こんなん家で食えるんだって驚いた。
なんか、つなぎとか、肉じゃがの話とかしてて、気が付いたらもう11時で、そろそろ寝ないと明日の部活がヤバい感じだ。
自分ち帰って、ふと気が付いた。キスもしないで帰ってきちまった…。




