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この頃のゲーム業界はブルーオーシャン

 俺がなんで将来の職業としてゲーム開発を選んでるのかと言えば、この頃のゲーム業界は既得権益などがまだ少ないブルーオーシャンだからだ。


 例えば16連射で人気の高山名人で有名になったハデダゾンはもともとはパソコンで組んだソフトウェアの制作・販売を手掛けていて、1978年には日本で初めてパソコン用パッケージゲームソフトの開発・販売業務を行なった。1979年に扱っていたパソコンの販売元の鋭敏の勧めで、「月刊ぱそこん」にオリジナルソフトウェアのテープデータの通信販売の広告を掲載すると、それにより莫大な利益を得ることになって、1982年には年間売り上げは15億円ほどだったものが、1984年には50億円、1985年には150億円、1986年には250億円と売上は怒涛のように増えていったりする。


 それまでのゲームのプログラムは、雑誌に掲載されていたプログラムを自分で入力していくしかなく、何万文字にも及ぶプログラムを入力すれば普通は動かした時にエラーが出て当たり前だった。それをどこでミスったか確認して、文字の入力ミスを修正していくのだが、これはとてもとても時間のかかるもので、簡単にそのプログラムで遊んでみたいと思うユーザーのニーズに応えたものだった。


 そして1983年にホムコンが発売されたとき、陣天堂からシャープナー経由で、ホムコンゲームを開発販売しないか? という申し入れがあり、それに乗ってハデダゾンはホムコンへの参入を決め「ロードダッシャー」で、ホムコン初のサードパーティとしてヒット作を出し、シューティングゲームのスターファイターと連射を売りにする名人による宣伝もあって名前も知られていった。


 もっともその後は爆弾男や浦島太郎伝説&電鉄などのリメイクばかりに走ったり、ハード開発に手を出し陣天堂と決別してしまい、どんどん衰退していくのではあるがその他にも一発のヒット作でとてつもなく売上を伸ばしたゲームメーカーは少なくない。


 そして俺はどういうゲームの内容なら受けるかという未来を予め知ってるわけで、そのアイデアを先にパクることもできる。


 もっとも既に開発中だろうゲームだと問題もでてくるかもしれないけどな。


 そしてアドベンチャーゲームはノベルゲーム、サウンドノベルゲームとしてその後進化していくが、斉藤さんのシナリオライター的な能力があれば多分売れるんじゃないかと思うんだよな。


「さて、前に言われていたお話を書いてきましたわよ」


 と会長がシナリオを書いたノートを見せてくれた。


「なになに? 題名は桃の子太郎討鬼伝説っと」


 基本は童話の桃太郎だね。


 おじいさんが芝刈りに行ってる間に河で洗濯をしていたおばあさんが拾って、熟してから食べようとした桃が中から割れてそこから男児が誕生し、桃の子太郎と名付けられた彼は、老婆老爺に養われて大きな体を持ち真面目に働く青年に成長した。


 そしてある日に鬼ヶ島からやってきた鬼たちに村は襲われ、桃の子太郎は退治にでた。


 その道中で空腹で行き倒れていた剣士の犬丸、忍者の猿田、巫女の雉子を持っていたきび団子を与えて家来にして、桃太郎は彼らの力を借りて、鬼の親玉を撃ち倒して、さらわれていた姫様や彼らが集めていた財宝を村に持ち帰ってお姫様と末永く幸せに暮らしましたというもの。


「うん、たしかに誰でもわかるし無難だよね」


「あら、私も書いてきたわ」


 斉藤さんの方もシナリオを書いたノートを見せてくれた。


「こっちはエイサー伝説か」


 アーサー王伝説をちょっと変えたような感じかな。


 下級の騎士として育てられたエイサーは、王が亡くなると王の後継が決まらないまま混乱した国に住んでいた。


 その折に岩上に突き刺さった剣が現れ、剣を抜いた者が新たな王になるとのお告げがあり、エイサーは岩に刺さった剣を抜くことができた。


 しかし王として即位してもすぐに従うものばかりではなく、彼は小柄な盗賊アッシュや魔法使いのマリリンと共に光の竜の力の助力を得て暗黒竜の配下の邪悪な魔道士である敵王を倒すことに成功し、捕らえられていた姫の救出にも成功した。


 そして、その後は長い間一緒に旅をしたマリリンと共に幸せに暮らしたというもの。


「なるほど、これなら割と話の筋は知ってる人も多いかもね。

 とは言えやっぱり知名度では桃太郎のほうが上かな」


「そう……」


 俺がそう言うと斉藤さんがちょっと残念そうに言う。


 残念ながら1985年現在ではまだまだアーサー王伝説はマイナーなんだよな。


「でも、普通の刀じゃなくて鬼切りの刀をどこかで与えられたり、鬼ヶ島に渡るのに龍が力を貸してくれたりっていうのはいいかもね」


 俺がそう言うと会長もうなずく。


「それはたしかにそうですわね、ところで」


「ん、なにかな?」


 まず会長が言う。


「最後に結ばれるべきヒロインは囚われた姫であるべきですよね?」


 それに続けて斉藤さんが言う。


「旅をともにした仲間と結ばれるのが自然よね?」


 二人にそう言われて俺は少し考えたあと答える。


「個人的には仲間と結ばれる方が普通かな?」


 俺がそう言うと会長はクッと歯噛みして、斉藤さんはニコリと微笑んだ。


 そこへ最上さんがツッコミを入れる。


「いやいや、そういう時は故郷で帰りを待ちわびてる幼馴染とくっつくべきでしょ」


「ああ、そういうパターンもありかもね」


 朝倉さんも乗ってくる。


「女に現を抜かしてないで男同士で旅に出るっていうのもありじゃないですか」


「それも確かに。

 せっかくのアドベンチャーゲームだし、最後の選択でエンディングが変わるマルチエンディングにするのもいいかもな」


 俺がそう言うと会長と斉藤さんが微妙な顔で俺を見ていた。


 こういったゲームの利点は選択によって結果を変えられることだと俺は思うんだけどな。

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