谷津遊園は人でいっぱいだったな、そして時代劇の内容は宮本武蔵か
さて、俺は里見君の撮影している、自主製作の時代劇映画の撮影のスポンサーになり、その結果谷津遊園のオープンセットを使って撮影をしてもらうことになったので、その様子を見るために、谷津遊園に行くことにした。
一年前のオープン前には、ゲーム制作部の初期メンバーのみんなと一緒に、アトラクションを見て回ったけど、今は結構変わった気もするし改めて見て回るとしよう。
ただ一人で行くのもなんだけど、時代劇に興味を持ってくれそうなゲーム制作部メンバーというと本を読むのが好きな、斎藤さんくらいかな?
というわけで斎藤さんを谷津遊園へ誘ってみることにした。
「斎藤さん。
谷津遊園で行われている時代劇の撮影の様子を、見に行こうと思うんだけど一緒に行かない?」
俺がそういうと斎藤さんは少し考えた後、うなずいてくれた。
「時代劇の撮影?
……ええ、いいわよ。
でも題材は何にしているのかしらね」
「確かにそれをちゃんと聞いておけばよかったな」
「自主製作とはいえ、あまり独創的な題材ではないとは思うけれどね」
俺たちは電車で移動して、京成線の谷津遊園駅を降り、南口から延びる商店街に向かうと、そこは活気があり、谷津遊園へ来たお客さん向けの土産物や飲食を供する店も多い。
「暑いしかき氷でも食べる?」
俺がそう聞くと斎藤さんはうなずいた。
「ええ、暑いしそれはいいわね。
シロップはいちごで」
「おじちゃん。
いちごとブルーハワイ一つずつ」
「あいよ」
がりがりと大きな氷が削られて、カップにかき氷が山になっていき、シロップがかけられて手渡される。
「こういうところで食うかき氷はうまいよな」
「そうね。
商店街も潤っているようだし、何よりだと思うわ」
そして谷津遊園に入ると、入り口のプラムナードで「似顔絵師」が、親子づれの子供に似顔絵を書いている光景が見えたが子供は結構嬉しそうだ。
「似顔絵って写真とはまた別の味があるよな」
「そうね。
写真にはない、温かみみたいなものはあるわね」
野外ステージでは、二人はプリティファイターショーをやっていて、悪役を倒した後、エンディング曲とともに、ステージの上と下でみんな歌を歌って踊ってしているがすごい楽しそう。
ステージで踊っている人たちはたぶん違うんだろうけど、ちゃんとプリティブラックとプリティホワイトの声優が、裏で声を当てているあたり芸が細かいというかなんというか。
「若い女性は舞浜のあれに行っちゃうかもしれないけど、小さい女の子ならたぶんこっちのほうが楽しめるよな」
「あまり小さいとさすがに意味が分からないでしょうからね」
スターライナーが展示されていた場所には、銀河の始末屋ブレイダーの実物大の車形態メカのほかに、いつの間にやら実物大ズボンズのATが有志によって製作展示されていて、ズボンズファンがその前で撮影をしたりしているみたいだ。
世界のギネス記録級の超大型ジェットコースターや、超怖いということで評判の新しいお化け屋敷には、長蛇の列ができる人気なようだし、プールの新しいループ型ウォータースライダーも人気みたいだ。
今回は並んでる時間の余裕はないからスルーするけど。
そして実際に時代劇で使用するために、屋外につくられた江戸の町の撮影用オープンロケセットの場所にたどり着く。
江戸時代の江戸の町通りが再現され、時代劇でよく出てくるアーチ型の木橋は、わたるのがちょっと大変な感じがする。
そして時代劇のほうの撮影だが、さすがに70年代に時代劇映画やドラマなどで活躍されていた役者さんたちによる殺陣は非常に美しい。
「かなり本格的だな」
「そうね。
でも今はあまり仕事がないのでしょう」
題材は宮本武蔵が将軍家の兵法指南役を務めた吉岡道場の一門百人との闘いだ。
「題材は宮本武蔵と吉岡道場の闘いか」」
「派手な活劇もあるし知名度もある、宮本武蔵という選択は妥当なところだと思うわ」
宮本武蔵といえば、佐々木小次郎との巌流島の決闘のほうが有名だが“佐々木小次郎”という人物は、その後の講談などの中で創作され、美剣士化された架空の人物で本当は実在せず、吉岡道場の一門百人との闘いも事実ではないらしい。
宮本武蔵という人物の行動などは、小説における創作によるものが多くて、史実ではないことがかなり広まっていたりするのだが、まあそのあたりは細かく考えたら負けだろうし、実際に映画として撮影して殺陣が映えるのはこちらだろうしな。
宮本武蔵役をやっているのは、新鮮組の小説をもとにした時代劇”燃えあがれ剣!”で原田左之助役をやっていた役者さんだけあって鬼気迫るものがある。
そして里見君も、切られ役のどこかにいるんだろうけど、実際どこにいるのかよくわからない。
「エキストラの切られ役が多すぎて里見君がどこにいるかわからないな」
「服装とかの見た目も同じような感じだから余計にわかりづらいわね」
宮本武蔵が吉岡家門弟をばっさばっさとなぎ倒していく様は爽快で、やっぱ時代劇はこうじゃなくちゃなという感じだ。
もっとも吉岡道場の一門は暴れすぎる将軍様によく出てくる”悪”というわけではないのだけど。
でも、有名な人物が題材だしテレビ房総で放映すれば結構見てもらえるんじゃないかな。
「これならテレビ放送でも行けそうだな」
「ええ、私もそう思うわ」
こういう話をできるという点でやっぱり斎藤さんはありがたいな。




