秋葉原の声優カフェはそこそこ盛況なようだ
さて、俺の持ってるレコード会社所属の声優・俳優・アイドルなどの働ける場所として買い取った雑居ビルの様子を見るために、俺は浅井さんと一緒に秋葉原へやってきた。
今回はあくまでもお客さんとしての目線で見たいこともあって、北条先輩や足利さんなどの店のオーナーとして面識があるかもしれない面々は来てない。
まあ俺自身もテレビ房総などのテレビに出たから知ってる人は知ってるかもしれないし、浅井さんももはや人気声優なので、伊達メガネをかけたり帽子を深くかぶったりして一応変装のようなものはしているけどな。
ちなみにこの頃の秋葉原はまだまだ家電販売がメインで、萌え文化のマニアックな街どころか、パソコンメインの電気街でもないが、パソコンショップは着実に増えているようではある。
秋葉原はこのころから電気工作のマニアの街だったのではないかと思うかもしれない。実際に真空管などのジャンク品やトランジスターやコンデンサーや新品のパーツを買い、ラジオやアマチュア無線機、マイコンなどを自作をするという目的に来る理系な奴もたくさんいて、専門のケーブルや工具なども確かに売られていたりする。
だが、この頃の秋葉原の電気街口方面における主な客層は若い夫婦とまだ幼い子供だったりして、街の小さな電気屋で買うより安上がりに済ませようとテレビやエアコンなどの家電を買いに来るような街なのだ。
大型家電ショップのたくさん並んだ新製品の大きなテレビ画面を見ながら、家族でどれがいいかみんなでワクワクしながら選んだりするわけだ。
とは言えこの頃のブラウン管テレビはめちゃくちゃ重いし25インチから27インチくらいの大きさでもまだまだ十分大きいと言われる時代だ。
逆に子供部屋に置くようなものは14インチくらいの小さい物のほうが便利だったりする。
このころはまだ郊外型の家電チェーン店やカメラ系の電気量販店も少ない時期だったし、この頃の秋葉原は全国の家電市場の約一割を担っているいう場所でもあったんだな。
まあだからこそ秋葉原の電気店は全国展開が遅れたりもしたわけだが。
とまあこれだけ聞くとメイド喫茶のような店が入りこめる場所がどこにあるのかと思われそうだが、それはあくまでも西側の電気街口方面の中央通り沿いの話だ。
西側の電気街口方面の中央通り以外の奥に入った場所や東側の秋葉原駅の昭和通り口方面は今はなくなったノーパン喫茶やブルセラショップと言ったアダルト的な店がかなり昔からあり、2000年代の将来的にはメイドリフレやJKリフレもできていく。
特に昭和通り口方面はヨドガワカメラの大型店が出来るまでは、一般的にはあまり注目されてはいないが知る人ぞ知る小さなカメラ専門店とか楽器専門店、ライブハウスやLPレコード専門店などマニア向けの店が結構ある場所なのだな。
「ええっと、ここかな」
「はい、そうです」
雑居ビルの一階の声優メイドカフェに入ってみたが、店の前でメイドさんがチラシを配っていたりするわけではない。
内装はシックかつシンプルな西洋喫茶店風の内装で、喫茶店としては特に変わっている所はないのだが、テレビがあってビデオでアニメが流れているな。
今流されているのはマックロデス2のようだ。
「いらっしゃいませ~って、ありゃ?
ひーちゃんてば、男連れはまずいんじゃないの?」
と声優仲間っぽい女の子に肘でツンツンされて浅井さんがからかわれてるっぽいね。
「そ、そうかなぁ? ちーちゃんはそう思う?」
「まあ、ひーちゃんはもう売れっ子だし一応はね?
とりあえず着替えてきなよ」
「あ、うん、そうするね」
と浅井さんは奥に行ってしまった。
「ではお席にご案内しますね。
ようこそいらっしゃいませお坊ちゃま」
「ははは、うん案内をお願いね」
「では、カウンター席かテーブル席が選べますがどちらになさいますか?」
「それはどう違うんだろう?」
「カウンター席ではご滞在60分ごとにドリンクかフードを1オーダーとお席のチャージ料金として1000円をいただいています。
テーブル席ではご滞在60分ごとにドリンクかフードを1オーダーとお席のチャージ料金として500円をいただいています。
カウンター席でしたらばマスターや私達といつでもお話ができますが、テーブル席の場合は基本は注文いただく際などしかお話できません。
どちらもお会計は最後にまとめて行っていただいています」
「なるほど」
「また店内の撮影や録音は一切ご遠慮頂いております」
「ふむふむ、じゃあ今回はテーブル席にしておこうかな」
「ではこちらへどうぞ」
メイド喫茶は風俗営業ではないので、法令上の「接待」行為は認められていない。
なのでメイドさんが席に座って接客をするという行為は原則的にはできない。
ただしカウンター越しに会話したり、注文を取るついでに会話をするのは当然可能だけどな。
「じゃあオーダーはクリームソーダとサンドイッチを適当に」
俺がそう言うとニコっと笑って彼女は言った。
「ありがとうございます」
そして彼女は声を潜めて言った
「っていうか前田さんですよね?
ゲーム制作で億万長者になって実質的なこの店のオーナーの」
「げ、なんでそれわかったの?」
「いや、私も同じ学校の一年芸能科所属ですし。
あ、ちなみに私は横山智左といいます」
「あ、ああ、なるほどね、あっさりバレるとは思わなかったけど同じ学校なら知っていて当然か」
「私なんか前にいた声優学校だと劣等生の烙印を押されていたのに、なぜかプロダクションのオーナーからの声がけで移籍・転校することになったんですけど、おかげで今年無事声優デビューできました。
まあ、ひーちゃんみたいな人気アニメの主役キャラじゃないですけどね」
「ああ、それなら良かったよね」
「あなたはひーちゃんにとって憧れの王子様ですしね。
私にも窓から忍び込んでプロポーズしてくれるルペン三世がいればなー」
「ルペンかぁ……そういう人が現れるといいよね」
「はい、じゃあ私は戻りますね」
ここはメイド喫茶というより純喫茶やガールズバー的なシステムでやっているみたいで、カウンター席でマスターやウエイトレスさんと楽しそうに喋っている客もいれば、テーブル席でメイドさんを眺めながら静かに飲み食いしている客もいる。
小さなステージでのマイクを使った朗読パフォーマンスもあったりして、店はそれなりに盛況なようで見に来て良かったとおもうぜ。




