今年のオリエンテーションは上野に行ったよ
さて、さて、健康診断の翌日はオリエンテーションだ。
去年はつくば万博だったが今年は上野に行くらしい。
そして上野のどこに行くかは班ごとに決める。
俺たちの班は俺、里見くん、斉藤さん、千葉さん、北条先輩、浅井さんというメンバー。
「上野と行ったらやっぱり動物園だよな」
俺がそう言うと斉藤さんがうなずいた。
「たしかに一般的にはそうね」
「でも、上野には上野東照宮や寛永寺なんかもあるぞ」
里見くんは寺社方面に関心が強いみたいだね。
「上野には博物館や美術館も豊富なようですわね」
北条先輩は文化的な方面か、まあなんとなくらしいと言えばらしい。
「ABEABEやアメ横に行ってみるのも面白そうだよねー」
そういうのは千葉さんだけど買い物スポットなのは彼女らしい。
「東照宮のぼたん苑の牡丹は今が見頃みたいですね」
そういうのは浅井さん。
彼女もだいぶおどおどした雰囲気はなくなってきたな。
「まあ、上野恩賜公園を中心にして見て回るのがいいんじゃないかな」
オリエンテーションは新しい環境や考え方への「適応」や「順応」という意味で、要は新しいクラスメイトとうまくやっていけるようにするのが目的だからな。
去年と違って今年は芸能科所属で現役アイドルや声優もいたりするからちと目立つかもしれないけど。
で、オリエンテーションは電車で移動してまずは上野駅で班ごとに移動開始。
「うーん、どこに行くか迷うな」
「そうね」
俺と斉藤さんがそういうと里見くんがいった。
「まずは、動物園へ行こう。
動物園なら興味ないってやつもいないだろう」
千葉さんもそれに賛成みたいだ。
「うん、たしかにそれがいいと思う」
「じゃ、まずは動物園に行くか」
俺がそう言うと斉藤さんもうなずく。
「それがいいと思うわ」
というわけで入園料を払って上野動物園へ入園しようとしたが、園の前で見たのは太平洋戦争で腕や脚を失った傷痍軍人がアコーディオンやハーモニカなどを奏でていたりしている光景で、俺は幾ばくかの金を彼らの足元の空き缶へいれた。
「あなたはどちらへ行かれたんですか?」
「ああ、ニューギニアへいってなぁ。
一緒に戦った多くのものは命を失ったから片手がなくなっただけならまだましとも言えるけど、腕がなければ働くことも出来ないし、海外での戦争なんて絶対やるもんじゃないよ」
「そうですね。
僕もそう思います」
ただ、こういった人たちの何割かは似非の場合などもあるが、実際に戦争で負傷し年金で何とか暮らしてはいるが働くことも出来ないのでこうやって街角で座ることで戦争の悲惨さをアピールする人もまだ結構いたりする。
実際に年金が出ると言っても下っ端兵士では大した金額ではないので実情は、かつかつな生活というのが多いらしい。
戦争当時に徴兵されている10代後半から20代前半だとまだ60歳から70歳ってところだしな。
”墓場の鬼太郎”の水木おいしげる先生も戦争で左腕を亡くしたりしたことで戦争の悲惨さを書いた漫画を書いているしな。
それはともかく上野動物園の名物と言えばなんと行ってもジャイアントパンダだ。
「お、パンダがタイヤにぶら下がって遊んでるな」
俺がそう言うと浅井さんが嬉しそうに言った。
「あ、本当ですね。
こうしてみるとパンダってすごく可愛いですね」
ちなみにパンダという竹や笹を主食にする動物の発生は700万年前ほどからで、約420万年ほど前の鮮新世のピアセンジアンの寒冷化いわゆる氷河期の時期に、アミノ酸の旨味を感じるUmami受容体を構成するタンパク質を作るTas1r1という遺伝子がその働きを失うような変異を起こしたことで主に竹や笹を食べるようになったらしい。
もともと冬季に食料が少ない地域の熊は秋期に木の実などの栄養を大量に摂って冬季に冬眠をするが、冬眠中のクマは餌や水を口にしなくなるだけでなく、排泄や排尿もしない。
普通ならばその状態では体内には毒素が溜まり危険な状態になるが、熊は木の実以外に強い抗菌作用があり血液浄化や腸内で発生する悪臭物質を除去する作用があるクマ笹を大量に食べ、体内での毒素発生を抑え、冬眠から覚めた直後にも大量のクマ笹も食べて体内を浄化させる。
すなわち冬眠をする熊というのはもともと笹や竹を大量に食べる習慣があったわけだ。
熊というと肉食というイメージが強いがホッキョクグマを除けば自然の熊は草食性のほうが強くそれはヒグマでも変わらないし、熊は能力的に草食動物を狩るにはあまり適していないのだ。
ちなみに生息域が結構かぶる絶滅してしまった大型類人猿であるギガントピテクスも竹をメインとする植物食動物であったと見られているがジャイアントパンダとの直接的競合にくわえて、ホモ・エレクトゥス類との生態的競合が、彼らが絶滅してしまった原因であるらしい。
ジャイアントパンダは見た目は可愛いが熊の一種だから力じゃあとてもかなわないしな。
ちなみに完全な肉食であるネコ科動物は甘味を感じることができないから甘いものが特にほしいとか思わないらしいが、パンダの場合は旨味まで感じることが出来ないらしいからパンダの食事というのはそれこそめちゃくちゃ味気ないものらしい。
ちなみにパンダはタケノコや野草や木の若芽も食べるし、昆虫やトカゲなどの小動物を捕まえて食べる場合もあるけどな。
「それにしても人が多いですわね」
北条先輩はパンダよりも来場者の多さが気になるらしい。
「まあ、上野動物園は動物園では日本で入場者数一位だしな。
年間入場者数は毎年600万人はいるらしいし、ジャイアントパンダが見られる数少ない場所っていうのはやっぱ大きいと思う」
まあ遊園地と動物園ではかかる金がぜんぜん違うので単純に入場者数が多いからと上野動物園がめちゃくちゃ儲かっているというわけでもないと思うけど。
「やはりパンダという動物の希少価値というのは大きいわけですわね」
「まあそうだよな」
ちなみに谷津遊園のウォンバットも日本ではまだ珍しいし、ずんぐりむっくりで割とのたのたしたかわいい動きをするので結構人気だ。
上野動物園の敷地は西園と東園に分かれており、東にはジャイアントパンダや象、ライオンや虎といった大きめの動物が多くいて、西へ移動するには相互を結ぶ都営モノレール上野懸垂線に乗る必要があるがこれは日本初のモノレールでもある。
「こっちはペンギンやペリカン、フラミンゴなんかがメインみたいですね」
浅井さんが嬉しそうにあちこちを見て回ってる。
「なんだかんだでペンギンも人気なんだよな。
昔はここに南極のペンギンもいたらしいし」
弁天池のボートには俺と里見くんで乗ることになった。
「ここのボートに男女カップルで乗ると別れることになるらしいけどさぁ。
何も男同士女同士で乗ること無いんじゃないかな」
なんか納得いっていないらしい里見くんが不満げに言う。
「まあ、しょうがないんじゃないかな、女の子ってそういう所、結構気にするみたいだし」
ここや井の頭公園ではボートに乗るカップルを祀られている弁財天が嫉妬して別れさせているという噂がまことしやかに流れているわけだが実際のところは男にとっては想像以上にボートを漕ぐのが大変だった、女にとってはいざボートに乗ってみたもの話が続かなくて退屈なんていうことが別れることになる原因だと思うけど。
それから上野東照宮を参拝した後で、ぼたん苑へ移動。
「牡丹や石楠花がきれいに咲いているわね」
斉藤さんがそう言うと千葉さんもうなずいた。
「本当、きれいだねー」
「バラ園もそうだけどぼたん苑とかは花の見頃が決まっているからね。
ちょうど春牡丹の見頃の季節で良かったとおもうよ」
その後は上野ABEABEで服を見たり、アメ横を見て回ったりして一日は終了。
もともと殆どは見知ってる人たちと一緒だったとはいえ、里見くんとも仲良くなれたのは収穫だったんじゃないかな。




