幼いあなたの面影は、異国の少女のなかにも見える
「ほお、何とも……、姫の幼さに似合わぬ、立派なお言葉よの」
どうしてだろう。
褒められたのに、貶されてるようなこの気配。
あ、こういうのを、日本語で「扇越しの嘲笑」というのかな。
なかなか庶民の生活では使わない言葉ではある。
不思議。
レティシアは、マグダレーナ王太后と初めてお逢いするんだけど、
なんだか好かれてないみたい。
なんでかな……?
マグダレーナ王太后は、すべてを見下ろすように、ゆったりと腰かけていらっしゃる。
この婚姻はフェリス様の力を弱める為では、ともこちらに来てからお聞きしたから、
……何だろう? 王太后にとって、レティシアがどんな娘だったら合格だったんだろう?
レティシアが、おかげで幸福です、と言った途端に、王太后から露骨に眉を顰められたので、
もしかして、もっと不幸そうな方がよかったんだろうか?
「幼いのにひどく賢い姫、昔の貴方と似てるかも知れぬの、フェリス」
王太后様、それは違います。
フェリス様は本物の早熟な天才で、レティシアはただのinやまとのむすめ雪です。
しかもそこまで賢くもありません。
賢かったら、前世も現世も、もう少しいろいろ仕事も人生もうまくやれてると思います。
「ええ。僕とレティシア姫は、何処か似ていると思います」
いえ。それは誤解です、フェリス様……。
でも、フェリス様が、僕達は似てる、とせっかく気に入って下さってるので、
そこはあえて突っ込みません。
……きっと、孤独だったんだろうなあ、かつての天才少年。
「それ故、レティシアといると、僕はとても……穏やかな気持ちでいられて、
……そう幸せです」
フェリス様が自分で言いながら、自分で驚いている。
フェリス様も驚いてるけど、周囲もざわめきまくりで、そうとう驚いている。
どういうことなの、ここの人達!
みんな、私たちが、とっても不幸です! とでも言ったら満足なのー!?
実際にフェリス様と私、日々ほのぼのと幸福なんだけど、
これでも私たち結婚式直前なんだから、きっと不幸でもそこは不幸だとは言えないでしょー!
「お互いの年齢が離れているので、この婚姻に、少々、不安を抱いておりましたが、
いまは義母上に感謝致しております」
キリリ、と、お義母上様の眉があがる。
あきらかに、御礼を言われたのが嬉しくはなく、美しい義理の息子が、
この奇妙な組み合わせの婚姻に不満ではなく、むしろ何処か幸福そうなのが、
ずいぶんと御不快の御様子……。
ううう?
もっとちゃんとフェリス様と打ち合わせしとくべきだった!?
私達、気があわなくて、とても不幸です!! のほうが、王太后様を喜ばせるんだったら、
それでいくべきだったのかも……。
でも「王太后様のおかげを持ちましてのこのたびの婚姻……、我ら二人、大変に感謝致しております」
はここでは外せないご挨拶よね!? どうしたらよかったの!?
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