御茶会のお誘いについて
「飛翔する美しい竜の姿を、昔の人々は当たり前に見られたらしいが、人の世界からドラゴンが距離をおいて久しい。いい夢を見たね、レティシア」
「はいっ」
やっぱり嬉しい。
フェリス様も、気味の悪い夢とか言わない。
幸せ……!
居心地よくて、ごはんも美味しい……!
レティシアは、このおうちに、お嫁に来てよかった……!
(めちゃくちゃ現金である)
「フェリス様。夢占い師を呼んで、占わせてはどうでしょう?」
「どうかな? ちゃんとした能力のある者が見つかるのかな?」
「占いの内容よりも、シュヴァリエ家の婚姻の吉兆の夢として、佳き宣伝となりましょう」
意外と現実的なことを言ってるサキ。
「竜の歓迎があると、レティシア様がディアナの民に受け入れられやすくなります」
「それはそうだね。みんなレーヴェの御心に弱いから」
「わ、わたしの他愛ない夢ですので、それは大袈裟です」
「そんなことないよ。竜王陛下がレティシアを気に入ってるのは本当のことだからね」
やけに確信を持って保障して下さるフェリス様。
何故ですか。
御顔が同じだと、心も通じるんでしょうか(いや、そんなはずは……)。
「……フェリス様。御歓談中のところ、申し訳ありません」
「何だい?」
あまり浮かない顔のレイが入ってきて、膝をついて、フェリス様に耳打ちする。
「………気軽においで頂きたいと……」
「今日のことを今日というのは、王族のやることではないと思うんだが……」
さっきまで明るかったフェリス様の表情が曇る。
「レティシア」
「はい」
「うちの義母上が、レティシアに、本日午後ごく私的な御茶会においでにならないか、
と言ってるそうなんだが……」
「御茶会ですか? 今日?」
それは、なかなか……。
王太后様の正式な御招きの御茶会とあれば、何日も前からの招待となるだろう。
今日の今日では、レティシアも、何の支度も……。
「断ってかまわないよ。いつもの義母の気紛れだ。
もう少し後に、ちゃんとした日程の食事会も予定されてるし…」
「王太后様は、国王陛下から、フェリス様がレティシア様を大変気に入られたと聞いて、
ぜひ会ってみたいと仰せとのこと……」
「もちろんお受けします。王太后様に、お誘い嬉しいです、とお返事してください」
微妙な顔のレイにお返事をしたら、安心した顔をしてた。
それは、行くでしょ。
初のお姑様のお呼び。
私どころか、フェリス様本人の時点で不仲のお姑様だけど。
それでもフェリス様のお義母様。ディアナの国母様。
日本みたいに、おうちが狭かったら、
ここへ来た日に、難しそうなお姑様にもご挨拶だと思うんだけど、
邸宅がわかれてらっしゃるので、お約束してないと、すれ違うこともないという……。
噂の王太后様、どんな方なのかなあ……?
「フェリス様」
「だいじょうぶ? レティシア」
「お義母様が何かお嫌いな仕草などあれば、教えて下さい」
真面目な顔で尋ねてみる。礼儀にうるさい方と聞いたはず。
「大丈夫だよ。レティシアは可愛く微笑ってたら、文句など言われない。
何といっても、レティシアとの婚姻を一番奨めたのは義母上なんだから」
奨めた理由が善意でないとしても、確かに、これは王太后様の肝入りの婚姻なのだ。
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