ドラゴンといちごの話について
「レティシア様。おはようございます。お加減はいかがですか?
もし御気分が悪いようでしたら……」
「ううん。気分、すごく、いい……」
瞼を擦りながら、レティシアは半身を起こす。
金色のドラゴンの夢を見ていた。
魔法の授業受けたり、フェリス様に治療して貰ったりしたせい?
カラーでリアルな感覚の夢だった……。
「いちご、美味しかった……」
「いちご? 朝食に、いちごを御所望ですか?」
「あ。ううん。夢を見たの。金色のドラゴンの夢。ドラゴンにもらったいちごが美味しかったの」
「まあ…ドラゴンから果実を頂くとは…なんと良き夢でございましょう。きっと瑞祥ですわ。
占い師を呼んで、夢占いをして頂きたいくらいですね。フェリス様に御願いしてみましょうか」
さすが竜神の守護する国の人だけあって、サキは竜の夢の話に目を輝かす。
嬉しいなー。
竜は密かに前世から好きなんだけど、前世では竜の話とか語ったことなかったから。
「きっと、竜王陛下が、フェリス様に可愛い花嫁がいらしたのを喜んで、
レティシア様の夢に竜の使者を送って下さったんですわ」
リタもとても誇らしげだ。
「そうだったらいいな。あのね、すごく綺麗でね、可愛い竜だったんだよ」
ああ、レティシアに絵心があったらいいのに。
(全くない)
みんなにもあの竜の美しさと可愛さを伝えたい。
鏡台の前で、リタに髪を梳かしてもらいながら、レティシアは嬉しさを隠せない。
いちごをくれた金色の竜の背中に乗せてもらった夢も幸せだったし、
竜の夢の話をしても、やはり不気味な王女だ、気味が悪い、て言われなくて嬉しい。
ずーっと、だいじょうぶ、だいじょうぶ、と思ってたけど、
やっぱり、いろいろ大丈夫じゃなかった。
(あの姫は何かおかしい。大人が読むような本ばかり読んで)
(喋る内容も、とても子供とは思えない。頭がいいというより、気味が悪い)
生まれ変わりで挙動不審だったのはもとからだったんだけど、
叔父様はレティシアを完全に復帰できない様に廃嫡したかったから、
レティシアの悪い噂話にも気合が入ったのだ。
人は噂で、たぶん、人を殺せるのだ。
前世でも、ネットの非難に耐え切れず自殺した外国のアイドルのニュースなども聞いた。
もともとが日本の庶民の魂なので、サリアの王位に執着があった訳ではないんだけど、
お父様とお母様が大事にしてたレティシアの評判がボロボロになっていくのが辛かった。
思ったことをそのまま普通に話しても、
気味悪がられない、嫌われないって、幸せだなあ……。
「レティシア様、今朝は、レティシア様の肌や髪が輝くようですわ。
昨日のフェリス様の治療、きっと美容にもいいんですね」
「わかんないけど……髪も肌も、ついでに栄養貰ったのかな?」
最初、温泉入ってるみたいで気持ちいいなーと思ってたんだけど、
これもしや、レティシアにくれてる分、フェリス様の力が減ってるのでは?
と慌ててやめてもらおうとしたんだけど……。
おかげで、すっごく元気になりました! て御礼言いたい。
フェリス様と早く会って、昨夜の竜の夢のお話もしたいなー。
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