レティシアと金色のドラゴン
夢の中で何か悲しいことがあって、ちいさいなレティシアが一人で泣いてたら、
緑の森の中から、金色の子供の竜が現れて、レティシアの涙を舐めてくれた。
ほんもののドラゴンだー!!
とびっくりして、レティシアの涙もとまった。
「ちっちゃいりゅう。かわいい。ありがとう」
お礼を言ったら、
ぶんぶん尻尾を振って(しっぽもかわいい)、
向こうに行ってしまった。
ドラゴン可愛い……、もうちょっとお話したかった……としょんぼりしてたら、
また戻ってきてくれた。
摘みたてのいちごを、両手いっぱいに抱えて。
「いちご? くれるの? ありがとう」
どうやら、いちごをとってきてくれたらしい。
「……フェリスさま?」
そんな筈ないのにそう尋ねたら、
ちっちゃなドラゴンがいちごを喉に詰まらせかけて、盛大に咳き込んだ。
「だいじょうぶ? だいじょうぶ?」
そうだよね。違うよね。何でそんなこと思ったんだろう。
でも、ドラゴンだけど、竜王陛下っぽくはない気がして…。
「だいじょうぶ」
金色のドラゴンの咳が収まったので、レティシアもドラゴンもほっとした。
「どうして泣いてたの?」
「ここから帰れないの」
「お城に帰りたいの? お城、大変じゃない?」
「うん。でも、心配かけるから」
「じゃあ、僕に乗って。運んだげるよ」
「え。え。だいじょうぶ?」
レティシアも子供だけど、金色のドラゴンも子供だから、
レティシアが重たいんじゃないかと……。
「うん。平気。ぼく、歩くより、飛んでる方が楽」
促されて、どきどきしながら、ドラゴンの背中に乗った。
初体験!! 初騎乗!! ファーストドラゴン!!
いくらファンタジー世界に生まれ変わったって言っても、
ドラゴンなんて生で初めて見たし、乗ったことない!!
「……ぢめん、とおい!!」
ドラゴンの背中に乗せて貰ったら、どんどん上空へと上昇した。
あぶない! とか、
初めて逢った知らないドラゴンに、食べ物貰わない! 乗らない!とか、
おかたい常識派の日本人ОLの意識がうるさいけど、
ちびレティシアは金色のドラゴンの背中から見下ろす景色にご機嫌だ。
「こわくない?」
「うん。たのしい。きもちいい」
森を抜けて、王宮へ。
上空から見下ろす、ディアナの街並みや王宮の見事なこと。
「とうちゃく!!」
レティシアの部屋のヴェランダに下ろしてくれた。
到着して安心したのに、ドラゴンの背中から離れるのが寂しい。
「泣かないで。泣いてたら、すぐ来てあげるよ」
「ホント?」
「うん。約束」
「きゃ……」
金色のドラゴンにおでこにキスされた。
別れ際に、いちごをレティシアの口に放り込んで、金色のドラゴンは飛び去っていってしまった。
フェリス様ならいっしょにかえらなきゃダメだから、
フェリス様じゃないのかな……、でも何だか気配が似てるよ…と思いながら、
ちいさなレティシアは眠りの国から、現実世界へと引き戻された。
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