王弟殿下の守護の精霊について
「謝らないで、レティシア。迷惑をかけてるのは、僕の方だから。
ややこしい家に、お嫁に来させてごめんね」
「そんなことないです!
王家なんて、何処もみんな、ややこしいです!」
力いっぱい、レティシアが保証してくれて、フェリスはまた笑ってしまいそうになる。
うん。
この子、好きだ。
めげない、おもしろい、可愛い。
フェリスの人生で、義母上から頂いたギフトのなかで、唯一嬉しいギフトかも。
「……ディアナのよい精霊さんも祝福してくれてるって、マーロウ先生も言ってました」
「精霊?」
そんな可愛い、優しい響きのもの、我が家にいたか?
「マーロウ先生が、私に魔力があるって仰って」
「うん。それは僕もあると思うよ」
「……でも、私、ぜんぜん、何も魔力的なこと感じないんですけど、
フェリス様のところに来てから、ときどき、声が聞こえて」
「………、どんな声?」
それはあれだ。
ディアナのいい精霊なんて可愛いらしいものじゃなくて、
女たらしというか人たらし?
生きてるものも死んでる者も何でも隙あらば誑しこみそうな、
うちのたちの悪い竜王陛下だ。
「いい声です。優しい声。優しい気配。いつも、竜王陛下の絵のところとか……、
フェリス様のこと考えてるときに聞こえてくるから、
きっとフェリス様の守護霊様なのかなーて。……御心あたりあります? フェリス様?」
「………、いや……」
きらきら輝く瞳で聞かれてしまった。
「ないな。きっと、ディアナの花嫁のレティシアのことを歓迎してくれてる、
優しい先祖の御婦人の霊かもね」
優しい先祖までは、嘘ではない。
嘘では。
「男の人の声なんです。……あ、でも、低い声の御婦人かも知れませんね」
「そうなのか。魔力の低い僕にはわからないな」
「………、」
「………、」
レティシアのみならず、なんだか女官たちからも、やや疑わしい視線を頂いたが、
まさかそれはレティシアの好きなディアナの竜王陛下、レーヴェだよ、とも言えない。
レーヴェ的には喜んで、レティシアに自己紹介したがりそうだけど……。
「フェリス様が、御存じないうちに大切に見守って下さってるのかも知れませんね。
いつもフェリス様を案じるような声なんですよ」
子供だからなのか、元来、そういう性質なのか。
レティシアは、善意で出来ている。
ぜったいレーヴェ、何か余計なこと言ってるんだろうに、
聞き手の性質が優しいと、
優しい精霊さんに聞こえるんだな……、
それこそ魔法だな……。
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