好きか嫌いかで言うならば
ふわふわのオムレツと、ソーセージ。
卵料理にわくわくしつつ、レティシアは、フェリス様の手元もチェック。
基本、食事に熱心じゃない、て言ってたから、ちゃんと食べてるかなーと確認。
フェリス様はサラダをつついていてた。
うん。ちゃんと栄養を摂取してらっしゃる。大丈夫。
「あの。フェリス様」
「うん?」
「私はフェリス様と竜王陛下が似てらっしゃるので、竜王陛下もより慕わしく思うのですが、
もしかして、フェリス様、竜王陛下に似てらっしゃるの、お嫌なんでしょうか?」
神話で語られるようなご先祖にそっくりだったら、
私なら嬉しいと思うけど、それはただの想像の話で、
実際にそっくりなフェリス様はいろいろとご苦労があるのかも。
「………? 何故そう思うの?」
「あの、フェリス様が、竜王陛下に似てるせいで、祟りつきって怖がられたりするって…」
「ああ。それは、どっちかっていうと便利なくらいだけど……」
どうして怖がられて便利なんですか。
前世でドラマで見た、
戦場でお面被ってた中国の王様とかみたいに、
男の人でも、美貌すぎると舐められて困ることとかあるのかなあ……。
「うん…と、ね」
金髪を掻き上げながら、フェリス様は笑った。
えええええ、
フェリス様って、そんな顔もできるんですか!?
て言いたくなる、
とびきり可愛いらしい、はにかみ微笑。
「レーヴェに似てるのが、嫌か嬉しいかって言われたら、………嬉しいよ」
「何故、そんなに間が」
しかも、何故、そんなに小さい声で。
顔も、赤くなってらっしゃる。
か、可愛い。
めちゃくちゃ可愛いんですが……。
「何と言うか、……聞いてたら図に乗りそうで面倒……だから…、恥ずかしくて」
んんん?
恥ずかしくて、の前の部分が、小さい声過ぎて、聞こえない?
すーんごい照れ屋さんなのかな、フェリス様?
遠いご先祖に似てることを、こんなにまで恥ずかしがるなんて?
まあ、お父さんやおじーちゃんに似てるの照れる男の子みたいなもの?
「これでも僕も、ディアナの男だから、レーヴェに……、
神話の竜王陛下に似てるのは、嬉しいよ」
まるで、親しい友達に、内緒話をするような、密やかな声。
よかった。
実はフェリス様が竜王陛下に似てるの嫌とかなら、
それは、竜王陛下の絵、飾れないと思ったの。
これで、安心して、堂々と飾れるー!
「フェリス様も、竜王陛下が大好きなんですね」
「………」
無言で赤面するフェリス様が、永久保存したいくらい、可愛いー!
「レーヴェに似てることは、いろいろと面倒も引き起こすけど、
レーヴェの影が、僕を守ってもくれている。ただ……」
「ただ……?」
「義母上に嫌われるのは子供の頃から慣れてるからいいんだが、
皆がいろいろと勝手な噂をすることが、
兄上の心の余計な負担になってはいないかと、案じている。
だから、僕がレーヴェに似てて嬉しいなんて話は、レティシアにしかしないよ。……できないんだ」
そうだった。
うっかり、フェリス様が竜王陛下似の御姿を利用して、王位狙ってるとか、言われてもいけない。
ディアナでの竜王陛下の人気を考えると、それってかなり冗談にならない。
高位の王族って、何気に、いつでも足場の危ういとこにいる。
レティシアの歳でさえも、王女殿下を傀儡として立とうという勢力あり、て言われたもの。
「心得ました。殿下。大変立ち入ったことを伺いました。忘れて下さい。
いまのお話は、男同士の秘密です」
人差し指を、唇の前で立てる。
これがディアナでも通じるか謎だけど。
「…男なのか? 僕の花嫁は?」
フェリス様が、きょとんとしている。
「かたい秘密の心意気として!」
フェリス様が笑ってくれて、レティシアもえへへと笑った。
でも、そうかー。
なるほど、これって、意外と笑えない話になっちゃうんだと、
自分の頭で納得するとともに、
レーヴェに似てるのは嬉しいよ、と恥ずかしそうに笑った時の、
可愛いらしいフェリス様の顔を、ずっとこっそり覚えておこうと思った。
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