お昼は、春野菜のパスタ
午前中、礼儀作法の授業を受けて、
先生が帰られてから、ランチ。
先生とお茶しながら、お菓子も摘まんだんだけど、
お昼の春野菜のパスタもとっても美味しかった。
菜の花とアスパラとお肉の入ったクリームパスタを
薔薇の咲くテラスで給仕してもらって、
一人で食べながら、レティシアは、
フェリス様は、何を食べてらっしゃるかな?
と考えていた。
「推し活っぽい…」
「レティシア様、何か仰いました?」
「ううん。何でもない」
レティシアは小さく上品に首を振った。
上品に心がけただけで、
出来ているかどうかだいぶ謎だけど。
昨日から接していると、
フェリス様の仕草があまりにも優雅なので、
少しは真似よう…と密かに思って、ちいさく真似してみる。
そもそも素材が違うから、
無理があるとは思うのだけど、
努力は大事。
「何をしてるときも、推しはどうしてるのかなあ、
推しならこんなときどうするかなあ、て思うの」
昔、推しの為にバイトしてる、と言ってた女の子がそう言っていた。
その子はとってもよく働く気の付く子で、
同じシフトにその子が入ってると、ほっとしたものだった。
「毎日、推しがこの世に生きてるってだけで、もう人生幸せ!」
なんだか凄いパワーだ、羨ましい、と思ったものだ。
まだまだ、推し活初心者のレティシアは、
その高みまでは至れてないが、
(フェリス様はランチ、何を食べてらっしゃるんだろう?)
と、不意にそんな思考がふんわり浮かんできて、驚いた。
これこそが、まさに、
推し活というものなのでは!!
ディアナに輿入れが決まって、
何か月も前から準備に入った。
でも、絵姿も送られてこなかったので、
「変わり者」「変人」「冷や飯食いの王弟」
「氷のように冷たい男らしい」
との悪い噂ばかり伝わってきて、
正直、まだ見ぬ婚約者に怯えこそすれ、何の期待もしていなかった。
「いくら噂にしても、もう少し、真実を伝えるべきでは」
レティシアは、だんだん腹が立ってきた。
勝手に怯えていた旅の前の自分はおいといて、
罪もないフェリス殿下の名誉が汚され過ぎてる。
美しくて優しい方なのに。
「何の噂ですか、レティシア様」
「王弟殿下の噂です。変わった方だとか、冷たい方だとか、
あまり真実を伝えてない気がします」
「変わった方なのと、そんなに誰にでも優しい方でもないのは、真実ですよ。
殿下は、レティシア様を気に入られたので、レティシア様には特別にお優しいですが」
フェリスの影のようなレイが、あっさり認めている。
そこは認めないで、
殿下の名誉の為に、一緒に怒って欲しい。
大事な、フェリス様の推し仲間として。
(勝手に心で、推し仲間として認定中)
「それは…、殿下はきっと、はるばる遠くから来た子供を気の毒に思って下さって……」
そういう殿下の自然な優しさを、世の人にもちゃんと伝えたい。
だって、悲惨ルートなら、
こんな子供、用はない、何処かに捨て置け、
て邪険にされるパターンもありだったと思うの。
「それも真実ですが、いつになく楽しそうですよ、レティシア様を気遣うフェリス様は」
そうなのかなあ。
でも、そうだったら嬉しいなあ。
レティシアも、フェリス様のこと考えてると、何だか、とても楽しいので。
「好き」「趣味似てるかも」「面白い」「続き読みたい」など思った方は、ぜひブックマーク、下の評価を5つ星よろしくお願いします。作者のモチベーションも上がりますので、ぜひよろしくお願いします。




