竜王陛下とディアナの人々
「国民にフェリス様が大人気なのも、
王太后様の気が晴れぬ理由なのだとは思うのですが」
「国民に?」
「ええ。何と言ってもフェリス様は、
創始の竜王レーヴェ様にそっくりなあの美貌でしょう?
何か式典があると、正式礼装でフェリス様がお出になるのですが、
それはもう王家の誰よりも声援が凄くて」
「まあ」
正式礼装。
それは見たい、レティシアも、ぜひ。
さぞや美しい御姿だろう。
「民は、いまの国王様の治世に不満があるわけではなくて、
ただ皆が大好きなレーヴェ様の再来のような
フェリス様のお姿が嬉しいだけなのだけれど……
まあ神君の再来とはやし立てられると、ねぇ……」
「誰かが、無邪気に、フェリス様を慕う声が、
逆にフェリス様を不自由にするなんて……」
それでは、フェリス様もやりようがない。
(これ以上嫌われないよう、できるだけ、目立たぬように生きているのだけどね)
そんな十七歳男子、どうなの。
普通ならクラスで何とか目立ちたいと、
スポーツや成績で他人の注目集めようと、
頑張る年代の男の子なのに。
(まあ、そもそも、あいつは処世術が下手なんだよ。
幾ら何でも、もうちょっとうまくやればいいのに。
性格は全然似てないのに、顔だけオレに似て派手だから、可哀想すぎるな)
「え?」
オレって誰?
レティシアは思わずきょろきょろしてしまう。
いま、ゲームのイケメンヴォイスみたいな凄くいい声が、何か言った?
「レティシア様?」
「姫様?」
「あ。あの、今朝見た…回廊のタペストリーの……
竜王陛下が……フェリス様に似て…素敵だったなって…」
あ、ティーカップ持ったまま、きょときょとしてしまった。
こ、この御茶席での不作法を、誤魔化さねば。
それにしても、いまの何?
幻聴?
「レティシア様、こちらにいらしたばかりで、
きっと、国内はまだそんなにご覧になってらっしゃらないわね?」
「はい」
「我が国は何処に行っても、竜王陛下の絵姿だらけですよ。
ディアナの国民は、生まれてから死ぬまで、レーヴェ様が大好き。
竜王陛下の威信によって、ディアナ王家の統治が保たれているのです。
現代も、レーヴェ様の絵姿だけ描いて、食べてる画家がたくさんいますよ」
そう語る伯爵夫人も、竜王陛下への信仰は熱いのか、創始の君を語る声が何だか愛しげだ。
「そんなに人気なのですか? フェリス様に、似てますね、て申し上げたら、
僕はこんなに我儘じゃないよ、て竜王陛下の絵姿を見上げて……」
「……そうですねぇ。
竜王陛下はやんちゃな武神でいらっしゃるので、
確かに、穏やかなフェリス様は、神話の君のように自由奔放ではいらっしゃいませんね」
竜王陛下。
いまでも大人気すぎて、似てるフェリス様が困ってるぐらいですよ。
どうか、神通力で、何とかしてあげてください。
うーん。
じゃあ、現在のディアナの国王陛下って、どんな方なんだろう?
レティシアには義兄になる方だけど…。
この感じだと、ちょっと存在感薄めの方(怒られる王太后様に)なのかなあ…。
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