私の共犯者と私の乳兄弟
「うん。私も幸運だ。
子供なのに、大人のような表情を持つ花嫁に逢えて」
「………」
う。
うう?
中身が老けてることがバレている?
いやいやそんなはずはない。
きっとこれはフェリス様流の、風変わりな誉め言葉?に違いない。
随身の人も言ってる。
フェリス様は、喜びの表現が独特だと。
「私たちはきっといい共犯者になれる」
「共犯者に?」
何か、二人で一緒に、罪を犯すのだろうか?
悪の手先?になるには、雪時代も現在も、
悪知恵とか、機敏さとか機転が利かないと思うが…。
「そう。いろいろ宮廷には居心地が悪い同盟」
「ああ、そういう意味でしたら、ぜひ」
思わず、頷いてしまった。
敵陣とまで言わないが、
これからディアナで人生やっていく為に、
まず婿君のフェリス殿下と仲良くなって、それから
何かとしきたりにうるさそうなディアナの女官たちとうまくやって、
さらに宮廷のディアナ貴族達とも上手に社交を…と考えただけで、
ああもう、
こんなチビいらないっ
て王弟殿下に叩き出されて、
山奥で尼にでもなったほうが快適なのでは…?
とだいぶ気が遠くなっていた。
平凡な庶民育ちの雪の社交のキャパシティを超えすぎている。
レティシアとしての潜在能力に期待するしかないところだった。
「フェリス様! レティシア様もフェリス様の戯言に頷かないで下さい。
男子たるもの、奥方を迎えて、人生に後ろ向きにならず、やる気を出してください」
め! と言わんばかりに怒られている。
か、可愛いな…。
うんと若い爺やと我儘王子というところだろうか…。
「ちなみにね、レティシア、レイは私の乳母の息子で、私とは乳兄弟なんだ。
こんなふうに私に小言を言うのが彼の仕事。いつも叱られてばかりの私は、
今日からレティシアというあらたな強い味方をえたよ」
「何が叱られてばかりですか。
いつも好き勝手してるじゃないですか、フェリス様。
我が主はこういう甘え上手の困った方ですからね、レティシア様。
これから何かお困りのことがあれば、私に言ってください」
「は、はい」
わあ。
婿殿のこと、この人に、相談していいんだ。
こちらに来てから、
それとなく、女官から、フェリス様の情報収集しようにも、
誰もあまり王弟殿下に詳しくないみたいで、途方にくれてたんだよね…。
「こら。私の花嫁に、私の悪い情報を吹き込むな」
「とんでもありません。我が君。私は誰よりも忠実なフェリス様のしもべ。
大切なレティシア様には、本当のことしかお伝えしませんよ」
「……あやしいものだよ。とはいえ、レティシア、私に直接言いにくいことは、
このレイに言ってくれたら、善処してくれると思うよ。こう見えてとても有能なんだ」
「こう見えて、は、余計です」
「とても有能そうです。率直に申し上げて」
そしてお二人の主従漫才は、ほのぼのして和みます、
とは、声には出さずに、心で思っていた。
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