私たちは気が合う
「殿下、本日はお二人のお顔合わせまで、とのお話で…」
レティシアについてくれていたディアナの女官が、
戸惑いがちに言葉をはさむ。
「ああ、理解してる。レティシアと気が合ったから、私は彼女を引き止めたいんだ」
フェリス殿下と私、気が合ってたのか!
それは嬉しい!
言われたレティシアも驚く。
麗しの王弟殿下と春の庭園でお茶、魅力的だけど、
急な予定変更って、ダメなんだろうか…としょんぼりしかけてたので。
「何か、姫には、この後の予定が入っているのか? であれば、また改めて誘うが」
「い、いえ。ただ、姫がお疲れではないかと」
「お気遣いありがとう。私は元気なので、殿下とお茶がしたいです」
今日はフェリス殿下との顔合わせ以外の予定は聞いていない。
許されるなら、婿殿ともう少し一緒にいて、話してみたい。
おお、そういえば、この場合、相手は正式な婿君だが、
この後、お茶でも。は、
魂の故郷の日本では、古式ゆかしいナンパの手法だ。
ドラマで見たお見合いのシーンなら、
後は若いお二人で(両方とも若すぎるが)御歓談を、となるところかも知れない。
「ほら、私たちは気が合う」
悪戯の成功を喜ぶ少年のような青い瞳で、フェリスは微笑んだ。
「フェリス様、いつもの気まぐれで、初日から姫様を困らせてはいけませんよ。
急がなくても、これからずっと一緒に過ごす御方なのですから」
フェリス殿下の随身が、主人を諫めるように、小さく言葉を挟む。
これはたぶん、主人のフェリスにというよりは、
イレギュラーに困惑顔のレティシア側の女官に気を使ったかんじだ。
「…困らせてるか、レティシア?」
「いえ」
どちらかというと、喜んでます。
気が合ってる。
初対面でそんなこと言われたの、
人生二回目だけど、男女問わず、初めてだ。
嬉しい。
本当なら嬉しいし、お世辞でもじゅうぶん嬉しい。
「フェリス様のお言葉、嬉しいです」
フェリス様みたいに絵のようには微笑めないけど…、と思いつつ、
小さなレティシアは、せいいっぱいの笑顔で、背の高い婿殿を見上げた。
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