表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
94/340

第94話 リズ様潜入作戦【後】

前回のあらすじ)行き倒れを装って支配者ゼノスの館に潜入したリズに、リリの魔の手(?)がせまる……!

 ――えっと……これ、どうなるわけ……?


 微妙な不安を抱えつつ、リズは薄目を開ける。

 行き倒れを装って支配者の館に運ばれたまではいいが、いまだ入り口そばのベッドに寝かされたままだ。


 護衛も現れず、支配者も留守のようで、顔を出したのはエルフの少女一人きり。


 審査官と思われるその少女にじっくり観察されていたが、彼女は合格とも不合格とも告げず、どこかへ行った。


 そして、ちっちゃな黒い外套を羽織って再び現れた。


「さあ、お姉さん、どうしたんだい? 見習い闇ヒーラーのリリに言ってみなさい」

 

 そして、得意げによくわからないことを口にしている。


 質問されているようだが、答えたほうがいいのだろうか。

 いや、しかし、急に目覚めるのもおかしい気がする。 

 誘導尋問かもしれないし、もう少し目を閉じたまま様子を見ることに決めた。

 

 すぐそばでエルフの少女の落胆した声がする。


「うーん、駄目だ。さすがに声かけたくらいじゃ意識が戻らないか。お姉さん、お姉さーん」


 今度はぺしぺしと肩を叩かれる。

 リズはもうしばし閉眼を維持することにした。 


「駄目か……よーし、こういう時は……【診察スキャン】!」


 次は魔法の詠唱が響いた。 

 聞きなれない魔法だが、何かが発動した気配はない。 


「って、そんな簡単にはいかないよね……透視魔法ってすごく難しいのに、やっぱりゼノスはすごいなぁ……」


 ふぅ、と感嘆を含んだ溜め息のようなものが漏れる。


「うむぅ……やっぱり見習いらしく、ゼノスに教えてもらったことをちゃんとやろう」


 エルフの少女はぶつぶつと呟いた後、リズにぐっと身を寄せてきた。

  

 ――支配者に教えてもらったこと……? 


 それは一体何だろう。

 薄目で見ると、可憐な顔がどんどん近づいてくる。

 

 ――いや、あの、ちょっと……。


 唇はもう触れそうな距離にある。


 ――ちょ、待ちなさい、小娘。私、そっち側じゃ……ちょ、ちょ……! 一体何を教わってるのよ、この娘―― 


 リズが身を引きつつぐっと目を閉じると、


「うん、まず呼吸は大丈夫」


 エルフの少女はそう言って、次は急に額にひんやりとした手が乗せられた。

   

 ――おあっ……!


 またも声が出そうになる。


「うん、熱もなさそう」


 今度は急に手首が握られた。


 ――ちょ……!


「脈も大丈夫。よかった。呼吸と循環が保たれてたらすぐには死なないってゼノス言ってたもんね」 


 なんだ、さっきからよくわからないことを言われながら、身体をまさぐられている。


 ――なるほど、そ、そういう審査って訳ね。上等じゃない……!


 外見の審査の次は、身体の反応を見られているという訳か。

 ここまで徹底するとは、支配者は相当な好きものらしい。

 変態といってもいいだろう。

 まあ、そっちのほうが操りやすいとも言えるが。


 ――ただ、困ったわね……。


 男が相手ならすぐさま篭絡できるが、女相手だとサキュバスの力は使えない。

 さっさと護衛の男の一人や二人現れてくれれば、手駒に加えるものを。 


 ――ったく。何やってるのよ。さっさと男、現れなさいよ。


 気をもんでいると、リリは腕を組んでぶつぶつと呟いた。


「うーん、でも、これでも目が覚めないってことは頭に問題があるのかも……こういう時は」


 閉じたリズのまぶたに、小さな手が添えられ――   


「【発光ライト】」

「ぎゃあっ」

「え?」


 いきなりまぶたをこじ開けられて、目に光を注がれたので思わず大声が出た。

 

「あれ、起きた?」

「すぴー……」

「え、寝てる? リリの勘違い? 瞳孔を見ようとしたんだけど……」 


 じぃと、エルフの少女に顔を覗き込まれている。

 意識がない振りをしていたほうが相手が油断すると想定していたが、なんだかそろそろ身の危険を感じてきた。

 必死に寝たふりをしながら、リズは心の声で叫ぶ。

  

 ――な、なんなのよ、この審査。男、男はどこよぉぉぉ……!


 +++


「……ん?」


 往診先で、ゼノスはふと顔を上げた。

 

「どうしました、先生?」


 ベッドに寝た老齢の患者に声をかけられる。  


「ああ、いや、なんか誰かの叫び声が聞こえたような……」

「え、そうですか? 先生、疲れてるんじゃないですか? すいませんねぇ、こんな遠くまで来て頂いて」

「気にするな、じいさん体力も落ちてるからな。さすがに治療院まで歩いてこいとは言えない」


 治療院で何かが起こってるのだろうか。 

 窓から傾きつつある太陽を眺め、ゼノスは帰宅準備を始めるのだった。

男、早く……!


闇ヒーラー2巻は2月にGAノベル様より発売予定です。

本日からキャラデザをちょろちょろ紹介します。


今回は王立治療院特級治癒師のベッカーです。安定の糸目。かっこいいですね。


挿絵(By みてみん)


見つけてくれてありがとうございます。

気が向いたらブックマーク、評価★★★★★などお願い致します……!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
コメント失礼 前回は不在時のマニュアルくらい作っとけよと思いましたが、意外にしっかり教育されてるんですね
[一言] 止まらないアンジャッシュww
[一言] いいぞもっとやれ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ