表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ないチチびいき  作者: クロード・フィン・乳スキー
新世代篇 前編
49/80

(貧)NEW GENERATION 第6話 今山ハルヒメの体当たり

 前玉うおるは、下駄箱とは反対方向に歩き出した。


 部室から家に帰る前に、寄らねばならない場所があったからだ。


「……やっぱり電池切れ」


 左耳につけていたイヤホンの信号をもう一度確認してみる。


 ウンともスンともいわない。


 指示が送られてくるはずのイヤホンからは、この数時間、何の音もしていない。


 このまま帰っていいものか、まだ出会うべき人がいるのか、やるべき任務が残っていないか。作戦に変更は無いのか。それを確かめるためにも、学園内の隠し拠点に寄る必要があったのだ。


 前玉うおるが向かったのは、保健室だった。


「……ここか」


 前玉うおるは、壁面に、胸を押し当てた。


 壁の一部分がゆっくりと、音もなく奥に跳ね上がり、隠し通路があらわれた。


 前玉うおるが、真っ暗な隠し通路の奥へと進んだとき、自動で仕掛け扉は閉じた。


 その道の先には、多くの画面や操作盤が並んだ隠し部屋があった。監視を行い、指示を送るための秘密基地。飾り気がまるで無く、まるで戦艦や潜水艦の中のような雰囲気だ。


 前玉うおるは、イヤホンを外し、専用の穴に差し込むことで、瞬時に充電を済ませた。


 通信が回復した。


『うおるちゃん。調子はどうですか。おかしなこと、やらかしてないですか? ちゃんと溶け込めてますか?』


「ハカセ。大平野カクシコと接触しました」


『えっ、もうですか? 問題なさそうでした?』


「まだわかりません。今後も監視を続けます」


『そうですね。今のところ監視計画に変更はありません。継続です。今日はもう、任務はありませんので、帰宅してください』


「ハカセ」


『なんですか?』


「楽しい一日でした」


『えっ……楽しい……ですか? それは……なによりです。詳しい話は、あとで聞きますね。いまはとにかく、ばれないように、くれぐれも気を付けて帰って来てください。くれぐれも、ですよ?』


「はい」


『何かあったら、声を掛けてください』


「はい」


 落ち着いた返事をして、前玉うおるは暗闇の中を歩き出した。


 そして、保健室と通路を繋ぐ扉まで来たときに、異変に気付いた。


 打撃音がする。


 ドンドンとノックの音。ドスンドスンと体当たりの音。


 前玉うおるは、すこし(あせ)りながらも、扉の手前の壁の一部に貧乳を押し当てた。


 ロックが解除され、扉が手前側に勢いよく跳ねあがった。


 その瞬間、少年のような声で「うわぁあ」と悲鳴をあげながら、背の高い人間が猛スピードで突進してくるのが見えた。


 前玉うおると似たような短めの髪型だったが、うおると違い、前髪で片目が隠れたりはしていなかった。


「アッ」


 声を出した時にはもう、接触した。立ったまま抱きつかれる形となった。


 うおるの顔に、何者かのやわらかい胸が触れている。


 前玉うおるは、至近距離で、普段隠れているほうの瞳で、彼女の胸を確認した。


 ――この胸の形状と感触データ。一致。


 ――貧乳オーラ確認。オーラなし。巨乳。


 抱き着いたほうの背の高い女は、自分の狼藉(ろうぜき)を自覚して、「ちがうんです!」と大声を出した。


 前玉うおるが無言で強く突き飛ばすと、背の高い女は、何度か小さくステップを踏んで、倒れることなく体勢を整えた。


 とても運動神経がよかった。


 保健室の机に腰をあずけて、続けて言う。


「ごめん。自分、ビックリして……。だって、壁がいきなり扉になって、君がその中に入っていったんすよ。どう見ても壁でしかなかったから、君がそうしたように、自分も胸を押し付けてみたんすけど、全然開かなかった」


「でしょうね。一定水準以上のレベルをもった貧乳にしか開けられない扉です」


「撫でてみても何も起きなくて。ノックしても返事がなくて。いっそ突き破ろうと思って、何度か体当たりしていたところで、君が突然、目の前にあらわれたんすよ」


 ハカセから、絶対にバレるなと言われたのに、もう雲行きが怪しい。


 うおるは、まずは脅しをかけることにした。


「好奇心は猫をも殺すって言葉、ご存知ですか?」


 女は心臓をつかまれたような気分になった。寒気を感じながら、言い訳を開始する。


「待って待って。大丈夫、自分は大丈夫っすから。君と同じ新入生で……あっ、自分、名前は――」


「今山ハルヒメ、ですね」


「えっ、自分のこと、知ってるんすか」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ