第26.5話 和井喜々学園の日常2 運命の出会い
☆
ところで、ランプを手にしたアキラくんが、街なかのコンビニ前で世界中の女性を巨乳にするなどという暴挙に及んだのには、理由があるのを、好史さんはご存知でしたか?
そうです。恋です。
もしも、恋に落ちていなかったら、もしかしたら世界中の人々が巨乳になってしまうという悲劇は回避できたかもしれません。
今思えば、転校初日にアキラくんにハッキリとクギを刺しておくべきでしたね。「世界の女性すべてを巨乳にしちゃダメですよ」ってね。
私自身、彼の願いによって巨乳になってしまった時、自分でも驚くくらい落ち込みました。
どうやら私は私なりに私の体を気に入っていたようで、いきなり巨乳になってしまった時には、とても寂しかったです。
しかも、それは同時に、作戦の失敗を意味します。私は上司からの指示を全うできなくなってしまいました。
全部アキラくんのせいですよね。最低です。
責任逃れの言い訳みたいですか?
ま、どうでもいいですね。私の話は置いておいて、今は女装男アキラくんのお話でした。
彼の恋とは何なのか、そして相手は誰なのかってところです。
もちろん、賢くて鋭い好史さんのことですから、もう想像ついていると思いますが……。
ええそうです。小川リオちゃんですね。
ナツキちゃんに男であることがバレて以降、アキラくんは完全に彼女の言いなりになってしまいました。「お前が男だってことバラしてもいいのかなー」などと、ことあるごとに耳打ちされ、アキラくんは「くっ……」と悔しそうな態度を返すことしかできませんでした。
これがサスペンスドラマ的な何かだったら、ナツキちゃんは我慢の限界を迎えたアキラくんの手にかかり命を落とし、そして名探偵の私がアキラくんが犯人であることを突き止め、追い詰め、海岸で彼のザンゲを聞いてあげた上で、「長くなるかもしれないけど、しっかりやるんですよ」とニコニコ笑顔で手錠をかけるような展開です。
しかし、残念ながら、このお話はサスペンスドラマではありません。そういう展開にはならないのです。
筆みたいな結びが二つくっついた二つ結びの髪型がチャーミングなナツキちゃんは、あまり素行のよい生徒ではありませんでした。
とはいっても、執事が高級車でお迎えに来るような子も居るくらいのお嬢様学校においての不良ぶりなんていうのは大したことはなく、他の学校の不良とは比べ物にならないくらい可愛いものだということです。
ナツキちゃんは、アキラくんに一緒に帰り道で買い食いすることを強要したり、部活をサボって一緒に洋服屋さんに行ったり、部活帰りに夕方のファミレスに呼び出したりしていました。それは単に仲の良い友達同士のように見えました。
それでも和井喜々学園としては、放課後に制服を着たまま街でショッピングをしたり、あまつさえ夜のファミレスに制服姿のまま出入りしているなどというのは言語道断でした。
要するに、アキラくんはナツキちゃんの一番のお気に入りになってしまったのです。
これに関して、私はショックを隠せませんでした。
それまでナツキちゃんの一番は私であり、いつもナツキちゃんのそばには私がいたからです。
この頃の私は、自分でもわかるくらいに元気がありませんでした。
ひとりごとで、
「何だか最近、散々です。仕事は上手くいかないし、水晶玉ちゃんは割れてしまうし、その上アキラくんに私のナツキちゃんをとられてしまいました。アキラくんと出会ってからというもの、ナツキちゃんは私のことなんか眼中になくなってしまって、口を開けば『アキラー、アキラー』って……。一番の友達だと思っていたのに超ショックです。ねたましいです」
とか陰気に呟いてしまうくらいには沈んでましたね。
おっと、話がものすごく逸れましたね私の話になっちゃってました。
残念ながらアキラくんの恋に、私やナツキちゃんはあんまり関係ないのです。
アキラくんが気になっているのは、スポーティな雰囲気ながら人見知りの激しいポニーテール貧乳娘、小川リオちゃんなのですから。
しかしながら、何となくきっかけがない上に、アキラくんはいつもナツキちゃんと行動を共にしているものだから、小川ちゃんとの接点などというものは皆無に等しかったのです。
二人が初めてマトモに会話を交わすのは、自己紹介から一週間後を待たねばなりませんでした。
夕暮れの街道沿いファミレスにて、アキラくんとナツキちゃんの二人が座っていました。
制服のまま、四人掛けのボックス席に向かい合う形で座って話し込んでいました。
「アキラー、お前さぁ、何で男なのにウチの学校来たの?」
「いや、それは話せば長くなるんだけどな」
「何なんだよ、長くてもいいから聞いてやるぞ」
「じゃあ、まぁ……」
そして、アキラくんは秘密を打ち明けました。
父親にバクチの材料にされたこと。生徒にバレるならセーフ、教師にバレたらアウト、逮捕によって人生終了してしまうこと。母親はすでに亡くなってしまったこと。父に怒ろうとしても、「おまえ、最近母親に似てきたなぁ」と言われると同情してしまって逆らえないこと、などなどです。
「お母さん似なんだ」
というナツキちゃんの言葉に、アキラくんは頷きます。
「写真すら残ってなくて、顔さえ知らない想像の中の母ではあるけど、何となく鏡の中の自分と似ているんじゃないかって思ったことはあるかな。何せ親父が街を歩いているだけでケンカ売られるレベルの顔にキズとかあったりしちゃう強面だし。優しげな顔立ちは母譲りだってのは想像できるっていうか……。
和井喜々学園はさ、けっこうなお嬢様学校だろ? そんな場所でお嬢様とは何たるかをおれに叩き込み、ゆくゆくは玉の輿という狙いがあるって、親父は真剣な顔で言ってたよ」
「男なのに?」
「ああ、なんかもう、親父の中ではおれは娘になっちまったのかもな」
「えっと、それって、何て言ったらいいのかな。おめでとう、とか?」
「違うと思うぞ」
「てか、叩き込まれたの? お嬢様とは何かってのを」
「ああ、学園に入る前に厳しくな。身のこなし方とかメシの食い方とかな。でも元が女っぽいってよく言われてたから、そんなバレないかなと思ったんだけど、夏姫は、何でおれが男だってのすぐに見破ったんだ?」
「んー、女の勘ってやつ?」
ナツキちゃんの勘はそこそこ当たります。私の占いには圧倒的に劣りますけど。
「それは、男のおれにはよくわからんな」
転校から一週間ほどが経過し、アキラくんにとってナツキちゃんが一番の理解者になっていました。彼からすれば、唯一自分の性別を知っている女の子であり、何かと「あたしの言うことをきかないと、男だってバラすよ」と言われつつも、別段ヒドいことをされているわけでもなかったし、むしろ一緒に居るとストレスがない上に楽しくすらあると感じていました。
相性がいいんでしょうね、二人はとても仲良しでした。ねたましいです。
ただ、ナツキちゃんの方は友達というよりかは、なんかもう恋人にしたいと思っていました。
そんな時に、一人の女の子が店に入って来ました。
ポニーテール体操服で、静かに、控えめな足音で店内を歩きます。
アキラくんが気になっている女の子、小川リオちゃんでした。
気になっているというか、ひとめぼれだったのですよね。さっきも言いましたけども。
でも、それが恋であることにアキラくん自身が気付かないようにされていたんです。
巨乳派が、貧乳を好きにならないように何らかの細工していたためですね。
この時点で、心の奥底では惚れていたのです。私にはわかります、占い娘なので。
……え、水晶玉の力だろって?
だから何だっていうんですか?
べつに。
怒ってませんけど。
さて、小川ちゃんの家は普通なのにお嬢様学校に通っていて、ポニテ娘なのに人見知りで、運動神経抜群の卓球部です。
道幅の広い街道を、自転車レースで使うような自転車で疾走していたところ、窓の外から二人を発見したのです。
ちょうどお腹も減っていたのでファミレスで一緒にゴハンでも食べようなどと考え、自転車を停めて体操服姿のまま店内に足を踏み入れたのです。
小川ちゃんは、空席に案内しようとした店員さんの横を早足で通り過ぎ、ナツキちゃんとアキラくんが座っている席に座りました。
「今山さん。と……天海さん。一緒に食べていい?」
ナツキちゃんは笑顔で軽く「いいよ」と返し、アキラくんはかなり緊張しつつ「ど、どうぞ」とか言ったので、小川ちゃんはナツキちゃんの隣、少しフカフカしたシートにトスンと座りました。
引っ込み思案で緊張しやすくて人見知りが激しくて試合になると弱いせいで、実力派なのにレギュラーに定着できないといった弱みがあります。
小川ちゃんは、アキラくんが男などとは夢にも思っていなかったので、この時は、恋の障害はとても大きなものに思えましたね。
アキラくんが、小川ちゃんの顔をじっと見つめました。
おそらく、「よし、小川さんの巨乳なところを想像してみよう」とか気持ち悪い思考をめぐらせていたのでしょう。
そんな視線に気付いた小川ちゃんは、
「あ、天海さん。わたしの顔に何かついてる?」
と言いながら、テーブルの端に置いてあったメニュー冊子を手に取り、主にお肉の写真がいっぱい載ってるページを開きました。
「い、いや、別に」
アキラくんは目を逸らして誤魔化しつつ、そこはかとなく女の子っぽい動きでストローでお茶を飲みました。カランと氷がグラスにぶつかる音がした時、体操服姿の小川ちゃんはメニューをパタンと閉じました。風圧が小川ちゃんの前髪が揺らしました。
小川リオちゃんは、兄弟が多く、家庭の財政状況が少々苦しい感じらしいです。
少しでも家計の足しにしようと、学園で禁止されているアルバイト――野球場でビールの売り子さん――をこっそりやってたりします。
教師とかにバレたらバイトはクビになりますし、学園からキツい処分が下る可能性もあります。それでも生きるためにバイトを続けざるをえません。
え、なんですか好史さん。
帰りにファミレスに寄り道するのも危険だ、ですか?
その通りですけどね、なぜかバレませんでしたね。学園からそう遠くなかったのに。
小川ちゃんは店員呼び出しボタンをポチっと押し、やって来た店員ちゃんにボソボソと小さな声でハンバーグセットを注文しました。メニュー冊子をテーブル端に立てて置き、家族には内緒のこっそり贅沢ディナーを堪能することにしたようです。
「ねえ天海さん、ずっと聞きたかったんだけど」
唐突に、小川ちゃんが話を切り出します。初対面の人と話すのに緊張してしまう小川ちゃんですが、転入して一週間くらいが経てば初めて会話する人と言えど、極度の緊張状態からは脱却できるようです。
知らない男の人を相手にするわけではなく、クラスメイトの貧乳女子なら何とかギリギリ大丈夫、という話ですけど。もしアキラくんを男だと知っていたら、まず店に入ろうともしなかったことでしょう。
「な、なにかしら」
女性口調で返すアキラくんを見て、ナツキちゃんは笑いをこらえるのに必死です。
小川ちゃんは、一つ深く息を吐いてから、質問を口にしました。
「海外に居たって話だけど、どこの国に住んでたの?」
疑っているわけではありません。小川ちゃんは海外に行ったことがなく、海外での暮らしに憧れていたため、この質問をしてみたようです。
アキラくんには海外生活をしていたという経験はありません。しかし、一週間ずっと何の手も打たなかったわけではありません。いつか誰かからこの質問が飛んでくると思って図書館で旅行本を漁り、綿密なようで穴だらけの海外在住記憶を創作していたのです。
そんなウソを吐くのも、すべては借金のため。
「おれが居たのは、フランスってところよ」
アキラくんは目を泳がせつつ言いました。その様子を見て、また必死に笑いをこらえ続けるナツキちゃん。
「おフランス!」
小川ちゃんは爛々と瞳を輝かせました。彼女の中でフランスは言ってみたい国ランキングの上位に常に顔を出す憧れの地だったのです。
「そうそう、フランスのさぁ、パリに住んでて」
「おパリ!」
なんか小川ちゃんは、不断からは考えられないくらい興奮していました。
「パリは、いい所よ。芸術的だし、エッフェル塔は立派だし、かっこいい門とかあるし、美術館とかあるし」
アキラくんの中でのパリに関するイメージは、そんな感じでした。これでは短期間の観光旅行に行く前の日本人の知識と大差なく、住んでいたと言い張るには無理があります。
「じゃあベルサイユ宮殿とか行ったことある? ノートルダム大聖堂は? モンサンミッシェルは? やっぱフランスの人って英語で質問すると嫌な顔するの? ごはんとかやっぱ美味しかった? 物価は? ツールドフランスとか生で見たことある? 大道芸のレベル高い? 男の人にナンパとかされた? パリパリって感じしてた?」
「え、えっと……」
天海アキラは言葉に詰まりました。答えられない質問をマシンガンのように浴びせられてしまったからです。
――まずいぞ、助けてくれ夏姫!
とでも言いたげな視線を、今山夏姫に視線を送りました。大量の汗を流しながら。
しかしナツキちゃんは、アキラくんを助けるどころか必死にこらえていた笑いが限界に達したようで、いきなり立ち上がり、
「ちょっ、ちょ、トイレ。リオちん、ちょっとどいて」
小川理央ちゃんは「あ、うん」とか言って一度シートから立ち上がりました。
笑いをこらえつつも早足で化粧室に向かったナツキちゃんを見送った後、元の通りに座り直しました。
無情にも去っていくナツキちゃんの背中を、絶望的な表情で見送ったアキラくん。
偽乳が暴かれた転校初日から一週間で、またしてもウソを自白する時がきてしまったのか。
あきらめかけた、その時です。
「お待たせしましたー。ハンバーグセットになります。ごゆっくりどうぞー」
店員が笑顔でハンバーグセットを運んできて、小川ちゃんがハンバーグに気を取られました。
そこで、「あぁ、美味しそうだね、ハンバーグ」とハンバーグトークを展開して、無理矢理に話を逸らすことに成功しました。
小川ちゃんは、うきうきと食器入れからナイフとフォークを取り出し、ハンバーグを八等分にしました。そして、それが終わると、ナイフとフォークの動きを止めて口を開きました。
「そういえばさ、天海さんて、今山さんに何か弱味にぎられてるの?」
アキラくんは、やばい、という顔をしました。
「そそそそ、そんなことないわ!」
「何でそんなに慌ててるの?」
「い、いや、その……実はその、えっと……」
沈黙しかけた時、ナツキちゃんが戻ってきました。
ナツキちゃんはトイレ個室でヒィヒィ声を出して笑ってきたのですが、まだ笑い足りない様子でした。
ナツキちゃんは、少々困ったタイプの笑い上戸なのです。私が暗い女なので、私と抜群に相性が良いと思うのですが……いや、それは置いておきましょう。今は私の話じゃないんです。
さて、それまでナツキちゃんの話をしていた天海アキラと小川リオだったのですが、ナツキちゃんが戻ってきたことで会話を止めざるを得ず、何となく気まずい雰囲気になりました。
何もかもうやむやのうちに、不自然なくらいに会話が途切れることについて、大丈夫かな、と心配するアキラくんでしたが、小川ちゃんは細かいことは気にしないタイプなので、もうハンバーグとライスを交互に食べながら時折「おいし」と言うことに夢中でした。
さらに小川ちゃんは、アキラくんが食べているポテトフライが目に入って欲しくなっちゃったらしく、
「天海さん、お芋、ちょっとちょうだい」
「ええ、いいわよ」
微笑みを浮かべながら女口調で返す天海アキラくんでした。
小川ちゃんは、ポテトを口に入れ、すぐに飲み込みました。すると今度は、フォークでハンバーグを豪快にぶっ刺し、それを持ち上げて、アキラくんの目の前に持っていきます。そして言うのです。
「あーんってして、あーん」
まさかの「あーん」に驚愕したのは言うまでもありません。ましてそれが、気になる女の子の「あーん」だったものだから、もう興奮です。これにはさすがに貧乳娘になんてドキドキしませんなどと心の中で常に主張しているアキラくんといえども、顔を真っ赤にしていました。
顔を突き出し、小川ちゃんの差し出したハンバーグを食べた時、ナツキちゃんは腹を立て、フランスの話を蒸し返しました。
「それで、アキラはフランスに何年間居たんだっけ?」
アキラくんはハンバーグを喉に詰まらせそうになるほどに焦りました。
小川ちゃんはポニテを揺らしつつナツキちゃんの方を見た後、再びアキラくんを見て、
「あぁ、そうそう。その話だったね。おフランス」
と言って、食器入れからガチャガチャとスプーンを探り取り、テーブルに片手をついて身を乗り出しながらマイク代わりにしたスプーンをアキラくんの口元に持っていきました。
「どうだったんですか、天海さん。おフランスでの生活は」
インタビューのようにフランスについて語れというのです。そんなの無理です。
冷房でひんやり空間をキープしているファミレスの一角。がちゃがちゃと皿がぶつかる音だったり、色んな人の話し声が混ざり合ったり、緩やかなポップスが流れたりといった喧騒の中で沈黙が広がります。
アキラくんは言葉に詰まり、目を逸らしました。
もはや逃げられないでしょう。素直にフランスに居たなんてウソなんだごめんと認めれば、小川ちゃんも許してくれます。
実は男だったことを伝えても、小川ちゃんなら許してくれるどころか「わぁ、大変だねソレー」と言って突き放しつつも同情を見せてくれるに違いありません。
しかし、アキラくんが選択したのは中途半端にウソを突き通す道でした。
「ひ、ひきこもっていたんだ。だから、その、フランスのこと、あんま知らないまま帰国して……」
アキラくんがそう言って間髪を入れずにナツキちゃんが補足します。
「事情があったんだよな。ほら、アキラの家が借金膨らんでてさ、ジャパニーズ借金取りに追われてフランスに逃げてたんだけど、フランスまで追ってきてそうな気配がして、それでビクビクしてたんだよな」
誤解なきように言っておきますが、これもウソですからね。
しかし、小川ちゃんは、
「あぁ、そっか。それで繋がった。そのことで今山さんにゆすられてるんだね。ダメだよ今山さん、転校生イジメちゃ」
そんなことを言っておいて、初日の放課後にかなりノリノリでアキラくんを羽交い絞めにしていたのは小川ちゃんだったような気がするのですが、まぁ、あれはイジメじゃなくて貧乳学園の伝統儀式なので、話は別なのでしょう。
「へへっ、ごめんごめん」
ナツキちゃんは、全く反省していない様子でした。
それから、小川ちゃんが、ハンバーグを刺して自らの口に運ぼうとしたのですが、
「あぁっ、ソースがこぼれた!」
真っ白な体操服の胸のあたりにデミグラスソースをこぼしました。
「あーあー、何してんのリオちん」
面倒見のいいナツキちゃんが、テーブル端に置いてあったナプキンを咄嗟に水で濡らして、小川ちゃんの平たい胸の辺りをナデナデトントンして拭いてあげていました。それでもシミになっちゃってましたけど。
「ありがとう、今山さん」
アキラくんは、声にならないような小声で、「やっぱ、貧乳ポニーテール娘ってそそっかしいのかな」などと呟きました。
それは偏見かと思います。
そんな感じで、小川リオと天海アキラは出会い、恋がはじまったのです。




