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ないチチびいき  作者: クロード・フィン・乳スキー
巨乳篇
20/80

第20話 貧乳巨乳戦争2 飛んで火に入る夏の虫作戦

「占い娘も、本気で巨乳になりたいと思ったことがあるのか?」


 そうたずねた時、雨で濡れたもじゃもじゃ髪を指先で整えていた彼女は、まるで回答を用意していたかのように即答した。


「巨乳だったらいいなとか思うことはあります。巨乳じゃなかったせいで苦しい思いをしてきましたから。でも、それは自然な形でそうなることが当然望まれるわけで、不自然に巨乳化しても少しも嬉しくありません。さっき実際に巨乳になっても全然嬉しくなかったです」


「それを聞いて安心したぞ。他の人もきっとそうだ。治してやらないとな」


 俺、大平野好史には他に類を見ない特殊能力があるという。


 それは『貧乳スコープ』と呼ばれるもの。


 もともとの貧乳の形や大きさ、ハリやツヤ、存在感などがオーラとなって見えるものだ。


 黒ローブの占い娘の話では、この能力と光線銃を組み合わせることによって、世界中の貧乳たちを再び元の姿に戻すことができるのだという。


 しかも、貧乳絶滅の危機に直面して、俺の『貧乳スコープ』は、さらに研ぎ澄まされた。


 湧き上がるような視力の向上を感じる。以前よりも貧乳スコープの性能が格段にランクアップした。


 貧乳パラダイスでの経験値も影響したかもしれない。


 どのような形の、どのくらいの大きさだったのかということまで、ミリより細かい単位で細かく感じることができる。


 そして都合の良いことに、手渡された『撃った者を貧乳にする光線銃』は、引き金を引く時の所持者のイメージによって、自在に貧乳の形状や大きさを決定することができるのだった。


 心の中で思い浮かべた貧乳に変化させることができるということは、


「これを使えば、不運にも巨乳になってしまった貧乳たちを修正できるってことだな」


「そうです!」


「たとえば、さっきアキラに誘拐されたリオちゃんとかを元に戻していくと」


「その通りです」


「実にやりがいのある仕事だ!」


「好史さんならば、そう言ってくれると思っていました!」


「ただ、一つ心配なんだが、さっき氷雨を撃っても貧乳に戻らなかったよな。ちゃんと全員を戻せるんだろうか」


「あれは特別です。非常に高度な呪いなのです」


「呪い、か」


「肉体の一部の形状を記憶する技術は、未来で確立されました。豊胸手術によって胸にメスを入れることが禁止された未来で、無理矢理に胸部を成長させることがあります。そのとき、成長しすぎないようにするために途中で固定するわけです。


ただ、そうした施術が行われたのなら、水晶玉で解除することも容易(たやす)いですし、光線銃にだって、それを破る術式を組み入れてあります。でも今回のは、そういう使いまわし可能な技術とは全く別のものです。氷雨さんの巨乳には、最強クラスの強制力が掛けられています」


「戻るんだよな……氷雨の貧乳は」


「……簡単ではありません。私の水晶玉が万全ならば、あるいはそれすら解き外すこともできたかもしれませんが……ご覧の通り、猫の激突のせいで機能制限モードといった有様なので……」


 占い娘ちゃんは、ヒビの入った水晶玉を抱えて、しょんぼりした。けれど、すぐ気を取り直して話を続ける。


「早い話が、形状記憶装置というやつです」


「メガネのフレームとかに使われるやつみたいなもんか?」


「そうです。肉体の形状を変形しないように定着させるものですので、好史さんの不死身とは少し違いますがね」


「どういうことだ」


「好史さんの不死身ボディも効果は似ていますが、好史さんの場合は、比較的ゆるく、自己治癒力を極限まで高めているだけの不完全なものです。だから、好史さんは精神状態によって傷の治るスピードが乱高下します。


それに対して、今回氷雨さんに掛けられた固定の方は完全に近く、どんな精神状態であっても左右されません。たとえば、氷雨さんの巨乳に傷をつけてみても、まるで傷なんかつかなかったみたいに一瞬のうちに修復されます。脂肪を吸い出そうとしても無駄です」


 すると、今まで黙っていた氷雨が、だいぶ久しぶりに声を出した。


「なぁ、説明されても、ごちゃごちゃ意味わかんないんだけど。結局さ、あたしの胸を元に戻す方法はあるのか?」


 俺は、氷雨の方を見て、すぐに目を逸らした。彼女の巨乳姿を見たくなかったのだ。


「それはですね」占い娘が答える。「固定化をした巨乳派を叩きのめして、言うことを聞かせれば良いんですよ」


「なんか、難しそうだな」と氷雨。


「ええ、私一人ではできません。だから、協力してくれる人が必要なのです」


 占い娘の今にも泣きそうな、しょぼんとした表情を見ていると、ヤキソバみたいな髪がのった頭を撫でて、「まかせろ」と言いたくなる。でも、そうしなかった。


 氷雨の前だからってわけじゃない。


 たぶん俺は、やっぱり心のどこかで、占い娘を責めたいと思っていたからだろう。


 氷雨が巨乳になってしまった。俺の愛する氷雨さんの貧乳が、オーラだけ残してどこかへ消えてしまった。その責任の一端が、占い娘にあるのだと知り、優しくしたくないと思ってしまったのだ。


 まったく俺ってやつは、ひどく子供っぽいな。


 雨の中、占い娘ちゃんはカバンの中から折りたたみ傘のようなものを取り出した。しかし、それは折りたたみ傘とは少し違うもののように見える。これも不思議未来道具だろうか。


 彼女がT字型の持ち手のような部分をキュッと回すと、周囲の様子が一変した。世界から音がなくなった。


 氷雨は、周囲を見回して、


「あれ? 何か変だぞ。街の様子、おかしくない? なんか止まって……」


 氷雨は言って、俺をじっと見た。目が合った。すぐに目を逸らし、俺も周囲を確認する。


 動きが止まった世界。


 雲も、風も、犬も、人の動きも一切無い世界。


 耳がキーンってするくらい、音の少ない不自然な世界。


 自分たちの鼓動の音さえも大きくきこえてくるような静寂だ。


 俺は、占い娘ちゃんに視線を送る。


「何をしたんだ?」


 占い娘は、雨に濡れたもじゃもじゃの前髪を整えながら言う。


「この止まった世界の中で動けるものがあるとするならば、それは時を止めた私と、この『傘型タイムストッパー』に触れた者です。この停止世界に干渉するには、いくつもの強固な防壁を突破しないと、停止時空間に介入することはできません。私は今、停止して(ろう)人形のようになってしまっていたお二人に『傘型タイムストッパー』を押し当てました。それでようやく、二人は動けるようになったのです」


「時間を止めた? 未来では、そんなことまでできるんだな」


 占い娘は誇らしげに頷いた。そして、一つ咳ばらいをしてから、


「では好史さん。この止まった世界のなかで、光線銃を撃ちまくってください」


 俺が勢いよく返事をしようとした時、横から氷雨が口を挟んできた。治らない巨乳を揺らしながら。


「それさ、あたしのこの胸が元に戻るってことと、どういう関係があるんだ?」


 氷雨の質問に、占い娘はしっかりとした口調で答える。


「光線銃で巨乳を治していけば、世界中を巨乳にした連中は気付くでしょう。巨乳にしたはずの者達が貧乳に戻っていくことに。やがて私たちを突き止め、止めに入るはずです」


 なるほど、それはあるかもしれない。


 せっかく自分の思い通りになったものを元に戻されたら、どうなるか。


 ゲームクリア直前のセーブデータが消されたと聞いたら、慌てて確認しに行くだろう。


 俺ならそうする。


「そしておびき出されて来たところ捕まえます。そうして雨さんの胸も元通りにさせるんです。名づけて、『飛んで火に入る夏の虫作戦』です!」


 氷雨は納得したようだった。


 俺と氷雨は、互いに見つめ合った後、互いに頷いた。


「さぁ今こそ世界を元の姿に!」占い娘の力強い声、止まった無音の世界全体に響くように、「世界中の不自然な巨乳を貧乳に戻すのです!」


「おう!」


 すべては俺の愛する氷雨の貧乳を取り戻すために!


  ★


 暗躍していた巨乳派がいて、それは占い娘の予想を超える力を持っていた。憎むべき巨乳至上主義を推進するそいつらは、天海アキラを使って世界中を巨乳化させることに成功した。


 占い娘ちゃんの話を短くまとめると、そういうことらしい。


「結局、天海アキラってのは、何者なんだ? 何か新しいことがわかったか?」


「いえ特に新しいことは……。といっても、好史さんにとっては知らないことばかりかもしれません。少しだけ説明してよろしいでしょうか」


「止まった世界の中なんだ。時間はいくらでもあるんだろ。


「天海アキラという女装男は未来の世界から目を付けられたか、もしくは巨乳英才教育によって育てられた、おっぱい星人だったと推測されます。彼の過激な巨乳好きは、今考えてみれば不自然です」


 天海アキラによって世界中を巨乳にされてしまった。許されないことだ。巨乳派は、何らかの方法で天海アキラを操って、それをさせたのだ。


「個人的な意見ではありますが、私は簡単に外から肉体をいじくることを認めたくありません。自分の身体を誇れないような未来の世界を知っているからそう思うのかもしれませんね……。私は、生まれ持った肉体が人生に影響してくるような世界を、苛酷な争いや差別がある世界を、もう二度と見たくはないのです」


 だから、巨乳派の連中を見つけたら、倒して改心させなくてはならないってことだ。


「私たちが諦めるという選択肢はありません。もし諦めたら、やはり未来が失われます。また貧乳の母から生まれたというだけで何の罪もない子供に石を投げなくてはいけない世界になってしまうのです。根本を正すのは当然のことだと思います」


 敵である巨乳派をおびき寄せるため、俺たちはいつかのように未来自転車『バイバイバイシクル』に三人乗りした。止まった世界の中を走り出した。


 前カゴの占い娘は、船頭よろしく前方に目を光らせている。そして、今回は速度と効率を重視するということで、漕ぎ手は氷雨だ。俺は荷台に座り、氷雨に後ろから抱きつく形をとったわけで。


 ということは、位置的には、氷雨さんの胸を触り放題なわけだ。


 だけど、巨乳になってしまった今、彼女の胸に触りたくはない。見たくもないし、背中に押し付けられても不快なだけだろう。そういう意味では、この位置が現状のベストということになる。


 占い娘は、すっかり指定席となった前カゴから言う。


「まず、好史さんの『貧乳スコープ』の能力を水晶玉と連携させることで拡張しました。『貧乳レーダー』の完成です」


「どういうことだ」と理解能力の足りない俺がきき返す。


「私の壊れかけの水晶玉で偽りの巨乳、これより実体のない巨乳という意味をこめて『虚乳』と呼称しますが、そういう存在が居る場所をサーチできるようになったということです。


手順としては、まずは氷雨さんの運転で、私が指示する方向へと向かいます。次に、見つけ出した『虚乳』を大平野好史さんの研ぎ澄まされた『貧乳スコープ』によってサイズと形状を見破ります。そして『撃った者を貧乳にする銃』によって、あっという間にしぼませ元のサイズに戻します。この三つのステップを連続して行います」


「なんとも地味で地道な作業だな」


「そうですね。でも何よりも大事な仕事です」


 道ばたで、突然の巨乳化によってシャツのボタンが吹っ飛んでしまったためにオフィスで胸を押さえてうずくまるOL。


 ショッピングセンターの服屋、その試着室にてノリノリで巨乳用ブラを試着していた若い女性。


 さらには女子生徒全員が巨乳になってしまった学校でも一人一人を戻していく。そのなかには、俺と氷雨のクラスメイト女子たちも含まれる。


 風呂に入っていようが何だろうが、それがニセモノの乳であれば光線を撃ちこんだ。


 パワー型の氷雨と、そう簡単には死なない肉体の俺、そこに占い娘の情報分析力が加われば不可能は無いように思えた。


 陸上の移動は未来テクノロジーを利用した自転車および徒歩でこなし、海外にも自転車で行けた。


「海の上まで走れるなんて、さすが未来自転車だな」


「時間を止めたことによって海水も固まってますからね。水は案外重たい物質なのです。まぁ、氷雨さんの脚力なら、本気出せば動いている波の上だって普通の自転車で走れそうですけどね」


 そのとき氷雨が、


「そういえば、水の上を走るまでもなく、これ空飛べるんじゃなかったっけ?」


 と言ったのだが、占い娘は申し訳なさそうに、


「先日の逃亡劇があった後、師匠に機能制限かけられちゃったので、あんな長い時間は飛べなくなりました」


「え、それって、普通のママチャリになったってこと?」


「いえ、普通の自転車よりは圧倒的に速くて丈夫でパンク知らずですよ?」


 撃った女性の中には、固まった海の底に潜っている最中の貧乳も居たが、俺から逃れられると思ったら大間違いだ。そういった人のところにも近づいて撃ち込んでいく。


 何度も撃っていてわかったが、光線銃の射程はわずか二十メートルほどだ。水中だとさらに射程が短くなる。場合によっては固まった海水をシャベルで掘って近づき、撃ち込んだ。潜水艦の中に貧乳女性が居た場合にも未来テクノロジーを用いて潜水艦の隔壁をすり抜けるなどして内部に入り込み、修正した。


 飛行機に乗っている人もいたが、天へとのびる坂道をつくり、未来自転車を数分間全力漕ぎ。マッハで舞い上がるという力技で解決した。上空高くにいる機内の偽巨乳を元に戻した。


 平和の国も、紛争の国も、裕福な国も、貧困の国も、自然いっぱいの国も、コンクリートジャングルの国も。


 巨乳派からの妨害を待ち受けながら、貧乳を救っていった。


  ★


 ある時、休憩の合間に、動物園に行った。いろんな動物がいる。


 ペンギンを見てると、占い娘ちゃんの歩き方を思い出す。


 トラとかワニとか獰猛(どうもう)な生き物の瞳を見れば、怒った時の氷雨を思い出す。


 そんな時の止まった動物園で、占い娘ちゃんは俺に現状を説明してくれた。氷雨には聞かれたくない話も含まれるので、氷雨がいない時を見計らった。


「アキラくんと好史さんでは、やっぱり過激度が違いますね。好史さんは、かなり貧乳を愛していますが、それでも世界中の女性を貧乳にしようなどとは思わないですよね」


「そうだな。巨乳があるからこそ、貧乳が素晴らしいとわかる。比較対象があることで、貧乳は恥じらうだろう?」


「まぁその発言も、じゅうぶんすぎる超セクハラなんですけどね。でも、ちがいを認めることができるほうが、巨乳以外を認めないっていう偏り過ぎよりも、いくぶんマシですね」


 占い娘は、壊れかけの水晶玉を覗き込み、何やら難しそうな文字で書かれた文字列を黙って読み始めた。


「ん? どうしたんだ? 何かあったか?」


「かなり多くの貧乳を戻してきたので、未来が変わっていないか確認しています」


「どうなってるって?」


 すると、占い娘は深刻そうに俯いた。


「まだ暗黒です。どうしても、戦争が回避できません」


「最悪だな。どうすりゃいいんだろ」


「やっぱり、巨乳派を改心させるしかないようです」


「ああ……」


 俺が呟いた時、彼女は顔を上げて灰色の虚空を見つめていた。


「未来は、どんどん変わっていきます。一見、些細に思える出来事でも、未来に大きな影響を及ぼしているものです。発射角度が一ミリずれただけで、弾丸が当たったり当たらなかったりするようなものです。それでも、大きなターニングポイントや影響力のある重要人物さえ押さえておけば、大きくは変わらない結果を辿るものなのです」


 かつて、俺が氷雨の貧乳以外の部分を認めたことで、未来は良い方向に変化した。


 貧乳と巨乳は、互いの違いすら意識せずに仲良くできる普通の未来が訪れた。


 俺が自己洗脳から抜け出し、貧乳を愛しすぎないように心変わりするってことが、そのターニングポイントってやつだった。


 しかし、今、また、天海アキラの盲目的で欲張りな願いのせいで、よくないターニングポイントが発生し、目も当てられない未来になった。


「争いや迫害のある世界を何とか元に戻し、平和な世界に戻さねばなりません。争いとか、迫害とか、そういう言葉が忘れ去られるくらいの世の中にしていかなければなりません。巨乳が悪いものだと言っているわけでは全くないのです。


そりゃ巨乳を自慢してマウントとってくるような人は好きじゃないですけど、根本的な問題は貧乳であるとか巨乳であるとか、そういったことの外にあると考えねばならないのです」


 占い娘ちゃんは大きなゾウを見つめながら力強く語る。


「あれほど貧乳貧乳と騒いでいた好史さんですら、変わりつつあります。貧乳だけが素晴らしいものではないことを自覚し始めています」


 ああ、そう思って()()さ。


 氷雨の貧乳があんな姿になるまでは、そう思っていた。


 氷雨は氷雨なのだから、貧乳じゃなくても構わないって自分に言い聞かせていた。


 だけど俺は、やっぱり弱いみたいだ。


 また自信がなくなってしまった。


 だって、巨乳の氷雨を好きになれるのか?


 俺は貧乳が好きだ。氷雨には貧乳であって欲しい。そう思う。


 乗り越えたと思っていた。でも、自分でもびっくりするくらいに、俺は貧乳への執着が強いみたいだ。


 占い娘はこんな俺なんかを信じてくれているけれど、もし氷雨の貧乳が元に戻らなくなったら……。


 状況によっては、我を忘れてしまうかもしれない。


 占い娘は俺を安心させようとするかのように、優しく微笑んで言う。


「この先、氷雨さんが殺される結末を迎えたとしても、きっと好史さんは大丈夫です」


「こらこら、巨乳派との戦いが不安だからって、縁起でもないことを言うな」


「すみません」


 占い娘ちゃんは、軽い調子で、てへへと笑った。かと思えば、また真面目になり、続ける。


「人は、変われるのです。貧乳だろうが巨乳だろうがそれぞれの良さがあることを認めることのできる優しい世界こそ、世界中の人々が心の中で求めている『あるべき姿』なのではないかと私は思うのです。そう思ったからこそ、私は過去に降り立ったのですから」


 占い娘はしっかりと俺の顔を見て、力強く続ける。


「問題は、争うか、手を取り合うか、なのです。もう好史さんとは長い付き合いなので、わかってるとは思いますが、私は争いが嫌いなのです」


「そうか? 氷雨と俺を別れさせるために、わりと争いの火種をまいて歩いてたような気もするが」


「あ、それは……。と、とにかく、今回ばかりは平和のために戦わねばならないでしょう。誰かが悪い方向に変えてしまった世界を、何とかするんですよ」


 ――争いを無くすために、根本を突き止めて改心させる。


 それが、貧乳派平和系活動家連合〈HHKR〉が誇る正義の占い娘の目的だ。


 一刻も早く、多くの人々を偽りの巨乳から本来の貧乳に戻し、しっかりと未来を修正するために、彼女と俺たちは、止まった世界のなかで光線銃を撃って回っている。


 もう、かなり長い時間を、止まった時の中で過ごしている。


 巨乳派からの反応はまだ無い。


「チャンスは必ずやって来ます。諦めるわけにはいかないのです」


 強い決意を込めた輝く瞳を見せ付けてきた。


「そうだな……」


 俺は弱々しく呟き、サル山を見下ろしていた偽の巨乳女性に光線を撃ち込んだ。



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