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@ クソゲヱリミックス! @ [√6連載中]  作者: キラワケ
第十九章 私の兄がこんなにかっこいいわけない。 ーわたあにー
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第649話 √d-28 わたあに。 『ユウジ視点』『五月二日』「ダイヤル12」



 俺がミユの散髪を待って眠りに就いた頃は深夜も二時半だった。


 まぁいつもの明晰夢だった。

 と言っても今回ばかりはあまり新鮮味のないもので――



『ダイヤル12』



 ミユとゲームをしている。

 テレビゲームで、当時は新発売だったパーティゲームのようだった。


「あああああああユウ兄手加減してよー!」

「そうはいくか!」


 俺たちは嬉々としてゲームを遊んでいる、ミユの部屋を訪れて俺も三日間引きこもり宣言をした時にミユとした兄妹のゲーム風景そのもの。

 特に意識してなかったが、姉貴以上・ユイ以上に何の遠慮なく言い合える妹との関係のアレが俺の”本来”なのかもしれない。

 思えば俺という人間はこうして記憶を欠落させてから、どうにも遠慮しがちではあったと思う。

 ユイやマサヒロだって関係を持ってからは腐れ縁みたいにはなっているが、やっぱりまだ浅いのだろう。

 お互いのことを知りえて、年も近い俺とミユがいい意味で兄妹らしく仲がいいのは客観的にも理解できる。


 そんな今までは忘れていたこの光景を見れるのは喜ばしいことだ。

 この夢という形でも少しずつでもいいから思い出せるといい。


 そして今はすっかり覚えていない初恋の相手のサクラとの記憶を以て関係も、俺とミユの関係に近しいものだったのだろうか。

 そんな疑問も沸きあがってくるのだ――



* *



五月二日



 日曜の朝十時ごろ、姉貴が家族全員にリビングへの招集をかけた。

 昼から出かける者、さっきまで寝ていた者もいるが、前日に姉貴が夕食の食卓で話していたこともあって全員揃っている。

 基本的に皆素直な上に、あの常日頃お世話になっている姉貴の頼みと言えばそうそう断れるものでもないのだろう。


 そうして俺・桐・ユイ・クランナ・アイシア・ホニさんが既にリビングで待っている。


「しかしてミナ姉上が全員を集めた訳とはいかに、ユウジ殿はご存じか?」

「さあな」


 二画面的な携帯ゲームでナントカプラス的なゲームをやりながら俺に聞くユイにすっとぼける。

 いやまあ今回のことは俺と姉貴が主犯格ですもの、知ってますとも。


「い、一体何かのう」

「な、なんだろうね」


 桐とホニさんも微妙にぎこちない。

 特別彼女たちに言ったわけではないものの、どうやらホニさん・桐はミユといくらか交流があるようで、おおよその事情は分かっているのだろう。

 ということで事実上何も知らないのはユイと留学生組となる。


「あ、待たせちゃってごめんねー」


 十時を少し回った頃に姉貴がリビングの扉を開けて顔を出す。


「ミナさん、全員を集めるなんて何かあるんですの?」

「んー、ちょっとね」


 クランナの問いに答える姉貴は扉から顔を出すがリビングには入ってこない、というのも――


「皆に紹介したい人がいるんだ」

「っ!? それはミナさんの彼氏さんですか!?」

「おいマジか姉貴、俺聞いてないぞ」

 

 アイシアの思わぬ言葉に俺も語気を荒げてしまう。

 おいおいミユはフェイクで実は姉貴に彼氏が出来てたのかよ。

 どこの馬の骨とも分からん奴にウチの大事な姉をやれるか、まずは年収千万以上で移り気がないのはもちろんのこと、可愛いミユに釣り合う程度の顔面偏差値やルックスなども求められる、下心だって俺にはお見通しだぞ――


「ち、違うよ! 私、将来はユウくんと結婚するんだから」

「お、おう?」

「ジャパニーズブラコン!」


 いや、それは俺としても無いと思うんだが……実の姉弟だし。

 クランナはジャパニーズブラコンとか言ってるけどジャパニーズまるで関係ないよなそれ。


「じゃなくって! そう、皆に紹介したいのは――ほーら大丈夫だから、皆の前に行ってみて」


 そうして姉貴よりも先にリビングに入って来たのは美少女だった。

 ……いや、まぁ美人の姉貴の遺伝子が入っているからであって美少女と呼ぶに差し支えないと言うか。

 決して俺の兄贔屓が入っているとかではなく、まぁ割と学校でも人気があったぐらいには可愛い女子というか。



「え……えと、下之ミユです。ミナ姉やユウ兄の妹、です……よろしくです」



 長く癖っ毛なところどころが痛み気味だった髪を切り、セミロングまで短くした藍浜中学の制服を着たミユがぺこりとお辞儀をしていた。

 体格はそれほど変わってないようで中学二年生を最後に着た女子制服もそれほど窮屈そうには見えない。


「……なぁユウジよ。これはギャルゲーの隠しキャラクターってやつですかい」

「まぁ隠し妹だな」


 クラスメイトにして義妹・ユイ、妹っぽい何か・桐、妹風神様・ホニさんに続いて訪れた妹四天王最後の刺客!

 原初にして真なる実の妹、一年以上のの引きこもり生活を経て家族の前に顕現した我が家の自宅警備員こと下之ミユその人である。



「Oh! これが巷の噂で聞いたジャパニーズザシキワラシですわね!」


 

 クランナが興奮していた。

 というか一応留学生ではあるけども、そんな露骨に分かりやすい外人的なセリフでのキャラ付けはどうかと思う。


「ははぁ、この時代の妹ちゃんはなかなかだね」


 とかさりげなくしたり顔で言ってるアイシアはなんなんだ、何視点なんだ。


「どうしようユウジ!? 可愛い妹来ちゃったんですけど!?」

「いや妹言うが俺らと同い年だぞ」


 ちなみにミユはユイよりも生まれが遅いので、ユイも一応姉である。


「合法ロリ妹!」

「ロリ言うな!」


 割かし堪えていたミユが微妙にユイ相手にキレた、幼児体型気味なの気にしてたのね。


「ふむ、なかなか仕上げてきておるな」

「ミユってやっぱりミナさんに面影あるんですねー」


 桐とホニさんはそれぞれ感心している様子だった、たしかに俺の妹は母親的姉的な遺伝子が強く思える。

 姉妹揃えば、本当にに髪の長さやスタイル以外は似通っていた。


「ええと、来年藍浜を受験するのでよろしく……です」


 ああ、ミユ本格的に引きこもり卒業するんだな。

 兄としてはなかなか喜ばしいぞ。


 来年と、いうのも今は五月、俺ら一年生の入学から一か月しか経っていなくてもミユの浪人は決まってしまう。

 中学の三年生をすべて欠席しつつ一応の中学卒業資格は得られたものの、ほぼエスカレーター式で行けた高校に途中から入ることは出来なかった。

 来年の春、この高校を藍浜中学以外から受験する生徒と同じ立場になるのだという。

 

 だから産まれが数か月違いの同い年の妹であるが、もしミユが藍浜高校に入れても先輩後輩の関係になるのだ。


「ミユに先輩って言われるの楽しみしとくか」


 脳内妄想で、学校で「兄とは呼びたくないなら、自然な先輩呼びな」とからかって。

 微妙に納得のいかない表情で「ゆ、ユウジセンパイ」とか言われるんだろうか、あーいいな。 


「……なんかそれはやだな、ユウでいいじゃん」

「なんだと、そもそも引きこもったお前が悪いんだ諦めろ」

「あー! そういうこと言う! 頑張って勇気出してみんなの前に出てきた私にそういう事言っちゃうんだ!?」

「その勇気は認めるけど、ほかは知らん」

「豆腐メンタルの私にそういうこと言っていいんだー、引きこもっていいんだー」

「今度引きこもるようなら引きずりだすから」

「ハラスメントだから! シスターハラスメントだよ!」

「なんでもかんでもハラスメント付けてんじゃねえ! 甘えんな!」


 という兄妹喧嘩を繰り広げていると、微妙に冷ややかな視線を浴びせられていることに気付いてしまう。


「むー、やっぱりユウくんとミユちゃんは仲良いなあ」

「……ユウジってアタシとかとは違って妹とはそういう風に話すんだ、へー」

「シスコンってやつですわね」

「シスコンとブラコンのコンボは凶悪かな」

「ちょっと妬けちゃいますね」

「ブラコン爆ぜるがよい」


 姉貴は微妙に頬を膨らませて、ユイは何故か拗ねたように。

 クランナは割と冷たく、アイシアは少し呆れ気味。

 ホニさんは苦笑して、桐は微妙にキレていた。


「ブラコンじゃないし!」

「シスコンじゃねーし!」


 ハモってしまうと余計視線が冷ややかに。

 そうは言っても誰も彼もミユを拒絶するようなこともなく、一応の家族への紹介が出来たのだった。 

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