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@ クソゲヱリミックス! @ [√6連載中]  作者: キラワケ
第九章 G.O.D.<出会い>
155/638

第294話 √2-99 G.O.D.(終)

√2「ホニ様編」終了です!


ちなみにこの部分は八カ月前に大まかには出来てはいましたー

 我は誰もいない何も聞こえない何もいない、真っ黒の世界に一人立っていた。

 ううん。立っているという確証もなく座っているのかもしれないし、寝ているのかもしれない――何もかもが分からかなかった。



 またね、ユウジさん。



 そうして我は地上から姿を消した。残された肉体は持ち主であるあの子の元へ戻った。

 きっと我の思い出も気持ちも彼女には筒抜けだと思うし……ユウジさんと仲良くやってくれるに違いない。

 だから私は建前上は未練なく旅立てたのだ。それでも今一人になってしまうと、やっぱり寂しい。


「少し、ううん。凄い寂しい……かな」


 仕方のないことだと分かっている。我自身のことは我が一番知っている、例えあの子でも知らないことだって我は知っている。

 我が世界に居れる限界が訪れてしまった――それでも我はあの世界に居過ぎた。


「でも……ユウジさんと共に居れた」


 我が抗ったのはあの子の為でもあるが、結局は自分があの場所に居たかったからだった。

 ユウジさんや桐はそんな我を守ってくれて、家族と言ってくれて。ユウジさんは我を好いているとも言ってくれた。

 だからもう後悔しない。ユウジさんのおかげで、今はこうして記憶を巡らせることも出来るのだから――


「後悔なんか……して──」


 後悔なんかしてない。そう言おうとしたのに涙が溢れた。

 思いだすのは楽しかった思い出の数々。ユウジさんとの出会いから、買い物に行った日に、体育祭で一緒に楽しんだこと、そして色々なことがあった夏休み。

 あの夏に我は自分の気持ちに気付けて、それで――


「我……まだ消えたくない」


 あまりにも我儘な願望。我に未練などないはずなのだ、そのはずなのに。


「まだ消えたくないよ」


 例えもう振り向いて貰えなくてもいい。ただ我はユウジさんの隣に居たい。とある休日のように、のんびりゆっくりと、ユウジさんとの時を過ごしたい。

 一緒に居れるだけで、我はとっても幸せなのだから――


「っ!」


 生まれ変われたらいいのに。

 思っていた直後に我は白い光に包まれ、そうして眼を瞑る。きっとこれで神様で幽霊でもあった我は成仏して――


「…………」


 我はそうして目を開ける。我は成仏したのだろう。それで我は何処に居るのだろう?



「――ここは、ええと……マナビヤ?」」


 

 見覚えのある景色。ユウジさんと一緒に学んだマナビヤの教室だった。

 でも違うところは、我以外誰もいないこと。


「ど、どうして──」


 辺りをぐるぐる見渡しても我一人しかいない……はずだった。



「これは珍客ですね」



「!」


 聞こえるのは女性の声。声を追うと、先程までには姿形も無かった深緑色の長い前髪で表情の隠れた女性が机に腰をかけていた。


 その女性は何もかもを知り得たような笑顔を我に向けながらそう言うのだ。


「ここは……?」


 我は独り言のように呟くも、すぐに答えが返ってきた。



「窓から飛び出ればそこには現実が有り、教室の扉を引けば架空の世界が広がっています。ここは二次元と三次元の境界です――ようこそ、ホニさん」



「境界……? それになんで我のことを?」

境目さかいめですね。そしてあなたのことを知っているのは当たり前です――なにせ私は”その物語”を知っているのですから」

「物語……? それはお話のこと?」

「そうです。それはこの世界の物語、そして今まで物語」

「……?」


 彼女が言っていることが良く分からなかった。



「分かりやすく言えば、そうですね――下之ユウジが主人公の物語と言ったところでしょうか」



 我は何かとんでもないことを聞いてしまった気がする。


「……今なんて、ユウジさん!?」

「はい、それであなたがヒロインです」

「ひ、ひろいん? それは女優みたいなものだよ……ね?」

「そうですね。それに作品の華と言えるような女性をも指しますね。そしてホニさんがヒロインの物語だったわけです――そう今までが」


 この人はつまり。ユウジさんが主人公で、我がそのお話の華……あれ、なんか普通に恥ずかしいことのような。


「それで……あの、あなたはユウジさんとどんな関係で?」


 下之ユウジを知っている女性に我は心当たりがなく、そこに少しの疑問と興味が沸いた。


「近くて遠い関係ですね。そしてきっと下之ユウジは私と数回会った程度の人にしか思ってないでしょうね」

「近くて……遠い?」


 何か詩的なように聞こえる。近いのに遠いって……なんだろう。


「そしてこの境界には下之ユウジが何度も訪れて――また戦いに行ったのです」

「戦い……まさかそれって、我を守る為の――?」


 体を傷つけて、それでも空で我を守ってくれるが為に戦ってくれたユウジさん。


「そうです。戦いの為に記憶を失くして何度も何度も」


 記憶を失くす……?


「え、記憶を失くすって……でもユウジさんは何も忘れているように見えなかったような」



「それはそうですよ。あなたの物語は何度も繰り返されてきたのですから」



 我は聞かされた事実に驚くよりも先に、体も心も固まった。そして聞きたいことを少し声を大きくして言った。


「繰り返し、って、じゃあ、我が過ごしてたの日々は一度、じゃない……ってことなの?」

「ええ。主人公が死んでしまう世界、ヒロインが死んでしまう世界、ヒロインが主人公を結ばれずに消えてしまう世界――同じ物語は繰り返されてきたんです」

「ユウジさんが死んでしまう……!?」


 そんな世界が繰り返されてきた。それを聞いても自覚など全く無かった。


「でも、下之ユウジはたった一度。記憶を失うことなく世界に舞い戻ったことがあるんです」


 失うことなく。忘れることなく世界を繰り返した世界。

 我はそうして思いだす。あの戦いの二週間前からユウジさんが何か変わったことを――突然に練習を増やし、桐が力を使わなかったこと。


「その世界は、もしかして今の……我?」

「はい。今回の場合はヒロインの死んだ世界からのやり直し、それも死ぬ二週間前からの。と付け加えておきましょう」


 ということはユウジさんは我が死んでしまう世界を経験して、戦ったということになるんじゃ……?


「でもユウジさんはそんなこと一度も――」

「言ってないでしょう。下之ユウジは優しいのですから」


 そう、ユウジさんは優しい。そしてその優しさに我は甘えて守られて来ていた。

 我と普通に話して遊んでくれている間に、ユウジさんはそんな記憶を何度も巡らせて、それなのに表情には一切出すことなく……ああ。

 我はなぜ気付けなかったのだろうか。でも気づけたとしても我は聞けたのだろうか、臆病な我に。ユウジさんが嫌がるようなことが苦手で、出来なくて。


「…………」

「そして物語を終えた世界は元へと戻るのです。記憶も力も全て元に戻って。もちろんあなたも戻るのですよ?」

「我は戻れる……の?」

「はい――ただしそのままならば、記憶は残りません。ここでの会話も今までの思い出も」


 今までのことを覚えていない我。思い出を知らない我ならばあの世界に戻れる。

 それはとてつもなく嬉しいことなのに、それでも寂しいとも感じていた。


 我の宝物のような思い出を失くしてしまう。それが心の奥底から嫌だった。でも抗う術がないなら――


「それでホニさんはどうするのですか?」

「え」

「この境界に来れた人への特典です――記憶を失くさないまま世界を元へ戻すことができます」

「で、出来るの!?」


 一つの希望を見つけたように我は立ちあがってもう一度聞き直した。


「私は下之ユウジにはそうしてきましたよ? 自動的に消される記憶を維持できるように、今回の世界の下之ユウジにはそうしました」

「じゃあっ」

 

 そうして欲しい、そう言おうとしたところを女性に制された。


「――言っておきましょう、でも同じ物語は繰り返されることはないのです。あなたがヒロインになれることはもうないのです。それでもこの思い出を持ったままでいいのですか?」

「っ!?」


 それはもう我に振り返ることはない、ということ。好意をくれることはないということ。

 その事実も我にとっては衝撃だった。ドラマでみたことのある、一度告白に失敗してもう振り向いてもらえない女性のいる展開を思い出す。


 我は告白に失敗する以前に、告白さえ出来ないことになる。

 ユウジさんが振り向いてくれないのが決定事項なのだから。 


 それでも我は、この思い出を残せるのなら――この宝物を手放さずにすむのなら。


 ユウジさんとの日々をこの胸に秘めて、これからも過ごせるのなら。

 振り向くことはなくても、一緒にいることは出来る……かもしれないということ。

 それなら、我は。



「我は記憶を失くしたくない。だからお願い、我の思い出を残してほしい――」



 願うようにその女性に言った。なぜこの女性がそんなことを出来るのか、疑問に思いもせずにそう訴えた。


「……分かりました。あなたの記憶を残しましょう――それでは、またお眠りください。すると目覚める頃には世界は戻っています。あなたならば下之ユウジに出会う少し前の神石と言ったところでしょうか」

「うん、分かった。じゃあお願いします」

「お願いされました――それではおやすみなさい、ホニさん」


 我は自分の座っていた椅子に座り眼を瞑って眠りについた。

 次目覚める頃には誰もいないあの場所で、それでもユウジさんと出会えるあの場所で。



「ユウジさん――我はまた会いにいくよ」



 そうして世界は止まった。

 その物語が終わった。



* *


 

 その部屋は暗く、時計は夜の零時零分を指していた。 

 そこで待っていたかのようにその時計をその部屋の持ち主である桐は持ち上げた。


「それじゃあ……の」


 桐は自分の部屋で目覚まし時計を弄って、後ろにある電池ケースの蓋を開けて乾電池を取り出した。すると時間は止まった。

 その調節ねじを動かして、巻き戻す。一周逆に戻してまた電池を挿入する。


「分かってくれ、ユウジよ――」


 こうするしか術がないのじゃ。

 これからも世界を続けていくには、今までのの記憶が大きい壁になる。

 だからわしは、残酷な手段を取る――


 

 そうして世界は戻った。

 二人の少女は記憶を残したままに。

 新しい物語が始まった。 



 √2 END



「もしもユウジが”可愛い神様”と結ばれたら」

 これはそんな二つ目のユウジの”イフ”の話。

「もしも”可愛い神様”がこれから繰り返される”復元し創造し複合する世界”を見ることが出来たとしたら」

 これはそしてホニさんの”イフ”の話。



なんとかホニ様√が完結致しました。


最初から異能力バトルモノとして構想して、本来はホニさんも常時戦うようなシナリオでしたが都合上変更しました。

それを止めたことでホニさんとユウジの絡みが大きく減り、途中はユウジの(悪い意味での)独壇場になってしまいました。

構成の仕方やペース配分に課題が大きく残ってしまったと実感しています。


序盤には僅かに中盤から少しずつ入れた「マイ√を思い出すんじゃないか」というようなものはミスリードで繰り返された世界の伏線(お粗末なものでしたが)でも有りました。

伏線張りとしてはホニさんの中の人ことヨーコのことは√2-70を最初に出てきていて、もっと早くに出せなかったものかと悔んでいたりします。


長くなりましたが、次からも普通に物語は始まって行きます。

√1と2はある種このクソゲヱのプロローグ的立ち位置も含むのでこれからが本番です!


√2までお読み頂きありがとうございました。これからも話は続いて行くのでどうかよろしくお願いします。

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