第76話:誤射の行方は
翌日の暮れ。学校の中庭の隅っこで俺は地面に座り込んでいた。
ちょっと前まで、放課後だけあって生徒が自主練習をしていたが、その姿も無くなり、静かになり始めていた。
「クロウさん!」
俺に声をかけてきたのはリネアだった。ざっと見た感じ外傷など無い様子だったので取り合えず一安心かな?
「待ちましたか?」
「いえ、全然。それよりそちらは大丈夫でしたか? 何か悪戯されたりは……」
「はい、何もありませんでしたよ。ちょっと陰口を叩いてくる人はいましたが。」
「そうですか……」
予想はしていたけど、やっぱりそう言うことになったか。何かしてあげたいけど、俺が下手に介入すれば、状況を悪化させかねないからな……。
「……そんな顔をしないで下さい。もう済んだ話ですよ」
表情が雲っていたのだろう。リネアが心配そうな目で俺を見てきた。
「あっ、すいません」
「いえ、それよりも早く始めましょう。今日はこんなのを書いてきたのですが」
そういいながら彼女が、持っていた鞄の中から、大量の紙を取り出した。つーかどれくらいあるんだよ……。どう考えても50枚はあるぞ……。
この世界では紙は結構高価な分類に入る筈なんだが……。
一つの魔法式を書くのに紙は半分も使わない。だが、それはあくまで基本型の魔法の場合だ。
複雑な魔法式を書こうとするなら、最低でも1ページ丸々必要だ。
まぁ、何故そんなに必要かと言うと、魔方陣の形で書くからなんだが。
円形が基本で、それに沿って魔法式を書き込んでいき、さらにそれを繋いで行く。
口で言うのは簡単だが、少しでも書き間違えれば余分な魔力を使ってしまう魔法になったり、暴発、誤射を招いてしまう。
さらにそこにイメージが加わって来るので、この世界の魔法は面倒だなと思う。
さて、今回彼女が作ってきたのは、火を凝縮して小さな弾丸として撃ち出し、衝突と同時に大爆発を起こすと言う魔法だ。
俺の《炎銃撃》と同じ代物か。
「結構危ない魔法ですね……」
俺も使った時は、鉄並みの強度がある城壁をぶっ飛ばしてしまったもんな。(第7話参照)
「気をつけて下さいね。万が一の場合は何とかしますので」
「分かりました……ありがとうございます。いつも……」
「いえ、大した事ありませんよ。では試しに撃ってみましょう」
「はい」
リネアが中庭の中央に向けて手を出す。詠唱を開始すると、リネアの手のひらに赤色の魔方陣が現れた。
と、その時、中庭の奥の校舎付近で、誰かが歩いているのが見えた。少年かな?
と言ってもリネアが、放とうとしている方向とは、90度以上ずれているのだが。………あっ
「まtーーー」
だが、言うのは一歩遅かった。
「ーーーーーーーー《炎撃》」
ボッと言う音と共に、小さな火玉が魔方陣より生まれ、そして打ち出された。
だが、その火玉は真っ直ぐ飛んで行かず、あろうことか歩いていた通行人の方へと飛んでいってしまった。
完全な誤射である。失敗したのだ
「危ない!」
俺は叫びつつ、火玉に追い付く為に移動を開始した。
俺の声が聞こえたのか、少年がこっちを振り向き、飛んでくる魔法に気付いた。
リネアも少年に気付いて、避けてと叫んでいる。
少年は、えっと言う顔をしており、状況が飲み込めていないようだ。
そんな少年に火の玉は問答無用で、飛んでいく。
少年が状況を理解した時には既に目の前まで、飛んできていた。
「っと、運がないのを忘れていたよ」
俺はそう言いながら少年の前に立つ。本来なら、防壁を展開したいところなんだが、この距離では、展開するよりか先に俺に魔法が当たってしまう。いくら無詠唱でも、俺の脳が追い付かなかったら意味無いしな。
「あーあー……」
思わずため息が漏れる。あーあーこれなら魔力支配を使えばよかったな………。
あれを使わなかったのは、見たら絶対リネアが食い付くからだ。
俺は自分の左手を前方に突き出した。
「……なら、受けるか」
次の瞬間、ボンォンという爆音が辺りに響き渡り、俺は炎に包まれた。
やっぱりスマホは遅くなりますね。
と言うわけでちょっと中途半端ですが第76話投稿しました。
ちなみにPCは、昨日業者が引き取って行きました。新品になって帰ってこないかなと思っております。
……まあ戻って来るのは年明けなのですが(泣)
が、頑張って行きます。




